AWSが説く「生成AIをビジネスに生かすための“3つの勘所”」Weekly Memo(1/2 ページ)

企業が生成AIを生かすための勘所とは何か。生成AIは企業にとって一体何者なのか。AWSで生成AI事業を担当するバイスプレジデントの発言から解き明かす。

» 2023年10月10日 15時00分 公開
[松岡功ITmedia]

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 企業が生成AI(人工知能)をビジネスに生かすための勘所とは何か。アマゾンウェブサービスジャパン(以下、AWSジャパン)が2023年10月3日に都内ホテルで開いた生成AIに関する記者説明会で、米Amazon Web Services(以下、AWS)で生成AI事業を担当するバイスプレジデントのヴァシ・フィロミン(Vasi Philomin)氏が興味深い話をしていたので、今回はその内容を取り上げる。

生成AI活用に向けた「AWSの3つの提言」

 「2023年は、世界中が生成AIに席巻された。この新たなテクノロジーは、本格的なデジタル社会の到来に向けてこれまでにない顧客体験をもたらす可能性を十分に秘めている。Amazonグループはこれまで25年以上にわたってAIの研究開発に多大な投資を行い、お客さま向けのサービスと社内業務の双方において変革を続けてきた。そのノウハウを基にした生成AIサービスを多くのお客さまに使っていただきたい」

 AWSジャパン代表執行役員社長の長崎忠雄氏は、会見冒頭の挨拶でこう切り出した。生成AIが「これまでにない顧客体験をもたらす」との認識を示したものだ。これまでEコマース事業にAIを使い込んできたAmazonグループならではの明快な見解だといえる。

左からAWSジャパン代表執行役員社長の長崎忠雄氏、AWSで生成AI事業を担当するバイスプレジデントのヴァシ・フィロミン氏 左からAWSジャパン代表執行役員社長の長崎忠雄氏、AWSで生成AI事業を担当するバイスプレジデントのヴァシ・フィロミン氏

 そのAmazonグループの変革のノウハウを基にした生成AIサービスとして、AWSが今回、提供を開始したのが「Amazon Bedrock」だ。Amazon Bedrockは、生成AIのLLM(大規模言語モデル)などの基盤モデルをAPI経由で使えるようにすることで、アプリケーションを容易に開発して展開できるサービスだ。この会見ではAmazon Bedrockが同社の日本のデータセンター拠点である東京リージョンから利用可能になったことを発表した(図1)。

図1 Amazon Bedrockの概要(出典:AWSジャパンの会見資料) 図1 Amazon Bedrockの概要(出典:AWSジャパンの会見資料)

 この会見で、フィロミン氏が披露した興味深い話とは、企業が生成AIの活用を推進するための次の3つの提言だ(図2)(以下の会話文はフィロミン氏によるもの)。

図2  企業が生成AIの活用を推進するためのAWSの3つの提言(出典:AWSジャパンの会見資料) 図2  企業が生成AIの活用を推進するためのAWSの3つの提言(出典:AWSジャパンの会見資料)

1、データ基盤を整備する

 「生成AIを有効活用するために、まず自社のデータ基盤をきちんと整備していただきたい。これまでデータを整備してこなかった企業によくあるのは、事業や業務ごとにデータがサイロ化しているケースだ。これを全て連携させてデータをさまざまな切り口から見ることによって、自社ならではの差別化戦略が描けるようになる」。ちなみに図2では「1、正しいユースケースを選択」と記されているが、この表現に関して同氏は特に説明しなかった。そこで、筆者は「データ基盤を整備することが正しいユースケースの選択」につながると解釈した。

2、人材育成に注力する

 「生成AIを使いこなすスキルが従業員全員に求められるようになる。企業はそのスキルアップにしっかりと投資していただきたい。そうした形で生成AIを皆でうまく使う企業文化を醸成してもらいたい。そうしたスキルアップのためのトレーニングについては、AWSでもプログラムとして用意しているのでご相談いただきたい」

3、さまざまなユースケースを想定して、生成AIを試す形でいいのでどんどん使う

 「そうすれば、ユースケースごとに生成AIをどのように使えば効果的かが身をもって分かるようになる」

 これら3つの流れは結局、図2で分かるようにAmazon BedrockのPRのようになっている。しかし、筆者が改めて強調したいのが1つ目の「データ基盤の整備」だ。データ基盤を整備するという“出だし”に、生成AIをうまく活用できるかどうかのカギがあるのではないか。これはさらに、生成AIにとどまらず、企業全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)のカギにもなるといえよう。

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