5つのSaaS企業から学ぶ、生成AI導入のヒントと注意点CIO Dive

ServiceNow、Unisys、Insight Enterprises、Coveo、Unit4の経営幹部がAIを効率的に導入する方法を語った。

» 2023年10月02日 07時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

CIO Dive

 企業は多くの場合、ベンダーが提供する生成AI(人工知能)ツールやシステムにアクセスする。しかしAIツールでできることとできないこと、そして技術リーダーがどのようにツールを導入すればよいのかについて、さまざまな誤解がある。

 企業は進化する規制環境やセキュリティ上の懸念、高いコスト、そして新興技術からROI(投資利益率)を見いださなければならないというプレッシャーに直面している。さらにAIをパンデミックや核戦争、その他の破滅的なシナリオと同一視する懸念が加われば、生成AIの導入は予想以上に困難だろう(注1)。

 こうした誤解を解くために、われわれはすでに生成AIを提供している、もしくはこれから提供しようとしているテック企業の5人の経営幹部に話を聞いた。彼らには、社内でこの技術を導入しているところ、成功を収めているところ、今後期待されること、避けるべき落とし穴について共有してもらった。

1.ServiceNow

 ServiceNowのCDIO(最高デジタル情報責任者)であるクリス・ベディ氏は、データの品質や偏り、ユーザーへの透明性を監視するために人間中心のAIガイドラインを社内で使用し、人が介在する評価システムを採用していると述べた。

 ベディ氏は、AIを搭載したツールやシステムが一貫して正確な結論を導き出し、健全な意思決定を実施し、適切なソリューションを効果的に実装しているかどうかを検証する上で、ITチームが厳しい監視を実行することを推奨している。

 「私たちのアプローチは、常にやるべきか、できるかのどちらかだ」とベディ氏は言う。同氏はサービスデスクの対応の少なくとも70%は完全に自動化できると考えている。

 「人間はAIを監視し、多くの仕事をこなすプラットフォームを設計することに注力するだろう。AIが機械の仕事をすればするほど、人間が機械のように働く必要はなくなる」と同氏はサービスデスクの将来について語った。

 サービスデスクでは(注2)、生成AIが有用な回答をより早く見つけ、長期にわたって起こるケースを要約し、セルフサービスチャネル(自身で情報を検索して問題を解決する形式のサポート)を可能にする記事を生成することで最も大きな効果を発揮するだろう、と同氏は電子メールで話している。

 「多くのサービスデスクはセルフサービスを促進するためにナレッジベース(業務に関する情報・知識をまとめたデータベース)を備えているが、生成AIはエージェントや従業員が迅速に情報の本質にたどり着き問題を解決できるよう支援する」とベディ氏は述べた。

2.Insight Enterprises

 グローバルテクノロジー企業のInsight Enterprisesでチーフ・エンタープライズ・アーキテクト兼CTO(最高技術責任者)を務めるデイヴィッド・マッカーディ氏によると、同社が生成AIを採用するまでの道のりは、従業員の草の根運動から始まったという。

 同社は、ITサポートチケット(チケット制のサポート)を通じて、一般に公開されているモデルを業務に使用できるのか知りたいという従業員の声が増加していることを把握していたが、同社の経営陣はセキュリティリスクがあるため慎重だった。

 「企業は情報を保護し、チームメイトや従業員、顧客を守るべきだ。これは電子メールでも、他の主要なシステムでもわれわれが実施していることだ。AIでも同じことが言える。ただし異なるのはAIは新興技術であり、どう扱えばいいのか、何の役に立つのか、最初の手掛かりを誰も持っていないということだ」とマッカーディ氏は言う。

 同社はMicrosoftとの提携から生まれた「Insight GPT」と呼ばれる従業員向け社内モデルを展開している。従業員はこのツールを使ってレポートを要約してコンテンツを作成し、最初のフィードバックに基づいて生産性を向上させた。

 「あなたが読んだ本や多くの不安をあおる記事には、AIが普及することで誰も働けなくなると書かれている。しかし私はそうは考えない。AIは生産性を高め、個人を向上させるものであり、だからこそ素晴らしい」とマッカーディ氏は語っている。

3.Unisys

 ITサービスを提供するUnisysで新興技術のグローバル戦略を指揮するウェストン・モリス氏によると、組織変革管理は単なるバズワードではなく、生成AIを含めたあらゆる導入戦略において鍵になるという。

 ITチームとそのリーダーは、従業員が監視を警戒することが多いため、ツールの使用方法だけでなく、それ以上のことを伝えるべきだ(注3)。

 「懸念事項の1つに、この生成AIが従業員である私さえも監視し、悪い評価を与えるために使用されるのではないか、という点が挙げられる。もしそのようなことがあるなら、私はそれについて知りたい」と同氏は言う。

4.Unit4

 ソフトウェア会社のUnit4のCTOであるクラウス・ジェプセン氏は、生成AIはユーザーエクスペリエンスとタスクの自動化に最も影響を与えると見ているが、企業は慎重に採用すべきだと話す。

 「AIに熱中している人が忘れがちなたった1つのことは、何を尋ねるかを非常に具体的にする必要があるということだ。そうでなければ、『Microsoft Excel』のような入力と出力をするだけの集計用紙のようなものになりかねない」と同氏は指摘する。

 企業はまた、生成AIが示す回答の情報の出どころが不明な可能性があるため、無意識に著作権法に違反してしまうことにも注意しなければならない。同氏は、コンテンツ生成に生成AIツールを使用している企業に対し、生成されたテキストが全て同じにならないように見直すことを推奨している。

 「他のツールと同じように、AIに対しても頭を使う必要がある」と同氏は語った。

5.Coveo

 検索エンジンを提供するCoveoのCEO(最高経営責任者)であるルイ・テトゥ氏は、生成AIの実装について、コンテンツ生成と人間による拡張という2つの要素に分けて考えている。同氏にとって初期の影響を与えるユースケースには電子メールやプレゼンテーションテンプレートの作成、長文の要約などがある。

 しかし、優位に立つのはモデルの限界を理解している企業だと同氏は言う。

 「セキュリティ、特権、アクセス、プライバシーの観点から、どのコンテンツを使用できるかを把握する必要がある」とテトゥ氏は述べている。

 業界によっては規制が厳しいところもあるため、例えば銀行や金融機関ではコンプライアンスやセキュリティガイドラインに対応するための道筋がより複雑になるかもしれない。またモデルが不正確な情報や古い情報を提供する可能性もある。

 事実に忠実であることは、企業にとって重要なことだと同氏は話す。

 「セキュリティとコンプライアンスを尊重し、正確な情報源に接続できる環境がない限り、この技術を顧客に提供することはできない。虚偽を作り上げることはできないのだ」(テトゥ氏)

© Industry Dive. All rights reserved.

注目のテーマ