「IT人材不足」などを解決するとして注目を集めるノーコードツール。その中でも特に有名なのがBubbleだ。本稿では同社のユーザーカンファレンスで語られた「ノーコードの未来」を紹介する。
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ノーコード開発ツール「bubble」で注目を集めるBubbleは2023年10月24〜25日(現地時間)の2日間、同社初のユーザーカンファレンス「BubbleCon 2023」を米国ニューヨークで開催した。
bubbleは「ビジュアルプログラミング」としても知られ、コードを書かずにドラッグ&ドロップ操作でWebアプリを開発でき、高度なWebアプリ開発からリリースまで、Webブラウザで完結できる。bubbleで開発されたアプリケーションはグローバルで330万に上り、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが進む日本でも活躍が期待される。
そんなBubbleは世界的にノーコードの重要性が増していることを受け、今後の計画や複数の新機能を発表した。
BubbleCon 2023の基調講演には、Bubbleの共同創業者であるエマニュエル・ストラシュノフ氏とジョシュア・ハーズ氏が登壇し、それぞれノーコードのトレンドについて語った。両氏が講演で強調したのは「スケーラビリティ」「AI(人工知能)」「民主化」「データ」「ロジック」「デザイン」だ。
「Bubbleは単なる“試作品作成ツール”ではありません。ユーザーと共にスケーリングするプラットフォームです」
ストラシュノフ氏はこのように話し、講演を始めた。
Bubbleを利用して成長を続けるスタートアップ企業の一つにの中に、コーディングなしでAIエージェントを構築できるサービスを提供するSynthflowがある。同社は約1憶8000万円の資金調達を実現しており、サービスはわずか6カ月で7000人以上のユーザーを獲得した。
「Bubbleは成長する企業の要望に応えるため、より強化されたセキュリティコンプライアンスやコントロール、スケーラビリティを実現しています。Bubbleで構築された全てのアプリで、セキュリティと信頼性を確保します」(ストラシュノフ氏)
AIについてストラシュノフ氏は「最近、AIがBubbleのようなプラットフォームにどのような影響を与えるかについて多くの議論があります。『AIがノーコードを無価値にする』という意見もありますが、私たちの考えは逆です。AIとノーコードの組み合わせが新たな機会を提供するでしょう」と語った。
AIは「アプリケーション開発の民主化」に大きな変化を与える可能性があり、ストラシュノフ氏は「AIとBubbleは同じビジョンとゴールを共有している」と強調する。同社のAIチームは現在、AIとbubbleのコラボレーションを研究しており、それぞれのビジョンをより速く実現しようと取り組んでいる。
「ソフトウェア開発は話すことと同じくらい簡単であるべきです。その実現にBubbleは取り組んでいるのです」(ストラシュノフ氏)
民主化に関して同氏は「Bubbleは誰もがテクノロジーを利用し、『“創造”に参加する』というアイデアに基づいて設立されました。しかし、今日のソフトウェア開発やその維持コストは高額です。また、通常は組織内で技術チームを持つ必要があり、これは決して簡単ではありません」と解説した。
Bubbleの目標は、アプリケーションをはじめとするシステムの開発コストを下げ、「誰もが開発に取り組める環境を作る」ことだ。これがBubbleが目指すテクノロジーの民主化だ。
「Bubbleのビジョンが達成されれば、スタートアップから大手企業まで専門知識の有無に関係なく時間とコストを節約できるようになります。これは結果的に、組織の課題解決につながります。“テクノロジーを消費”するだけでなく、開発に取り組める人々を増やします」(ストラシュノフ氏)
基調講演の後半ではハーズ氏が登壇し、「データ」「ロジック」「デザイン」について解説を行った。
ハーズ氏は「ノーコードがソースコードよりも遅い、または劣るということはありえません」と話し、Bubbleが今後、データの可視化や編集といった業務を「Google検索」のように高速化・簡素化すると話した。
「私たちはユーザーは、多額のエンジニアリング費用をかけずにスケーリングを実現したいと考えています。そしてこれは実際に実現します」(ハーズ氏)
Bubbleは自然言語によってロジックを記述できる新たな「The Expression Composer」のβ版をリリースしている。The Expression Composerは「Bubble Application Editor」の重要な要素で、何も入力せずに幾つかのドロップダウンメニューからオプションを選ぶことでロジックを構築できるシステムだ。
ハーズ氏は「今後のロジック編集はドキュメント内の単語を編集するのと同じくらい簡単になる」としており、2024年第1四半期には全てのユーザーが使えるようになる予定だ。
「ソースコードの方がノーコードよりも強力だという認識が広まっていますが、ソースコードが強力なのは小さなロジックの断片(関数)を構築し、それらを大きなアセンブリに組み合わせられるからです。Bubbleはカスタムイベントの機能をさらに改善し、ソースコードができることは何でもbubbleでできるようにします」(ハーズ氏)
デザインに関してハーズ氏は「手間のかかるデザイン作業を自動化し、ユーザーが思い描いたものを容易かつ迅速に作れるようにする『Bubble AI』を2024年の前半までにリリースする」と発表した。これは「ChatGPT」のようにプロンプトを入力することで、デザイン済みのページをアウトプットするというものだ。
「ユーザーはデザインに時間を取られることなく、ビジネスロジックの構築そのものに集中できる。今後はデザインだけでなく、AIだけでアプリを完全に構築できるようにする計画もある」(ハーズ氏)
ハーズ氏は続けてモバイルアプリの導入も発表した。同氏によるとこれはユーザーからの一番のリクエストだったようで、実際に会場は大きな盛り上がりを見せた。
「BubbleのWebアプリを『Android』や『iPhone』でモバイルアプリとして使える方法はこれまでもありましたが、私たちはユーザーがスマートフォン向けのネイティブなアプリ機能を求めていると知っていました。Bubbleはノーコードの初のモバイルアプリビルダーではないかもしれませんが、現在のノーコード市場にBubbleのパワーに匹敵するものはありません」(ハーズ氏)
同氏によれば、Bubbleの目標はモバイルアプリのデフォルトビルダーになることだ。モバイルアプリに関しては、2024年中旬にβ版をリリース予定だ。
ノーコードの最先端を行くBubble。初のユーザーカンファレンスではさまざまな発表があったが、その中でも生成AIとノーコードを掛け合わせが生み出す可能性は計り知れない。誰もがコマンドプロンプトでWebやモバイルアプリ開発が可能になる、そんな“アプリ開発民主化時代”がもうそこまで来ているかもしれない。
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