シリコンバレー発のベンチャーが手掛ける“ラーメン”を正直にレビューしてみた編集部コラム

日本の国民食であるラーメン。これを自動販売機で提供するフードテックベンチャーがあるのを知っているだろうか。ラーメン好きの筆者が実食して正直にレビューした。

» 2023年12月13日 07時00分 公開
[田渕聖人ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 寒い季節には熱々のラーメンが食べたくなる。いや、夏の暑い季節にはつけ麺が食べたくなるので、どちらにせよ筆者は年中ラーメン屋にいる。体調に気を遣い始めたため食べる機会は減ったが、それでも3日に1回はラーメンを食べている気がする。

 筆者は自身を“それなりの”ラーメン好きだと自負しているのだが、最近、同じくラーメン好きの友人から「ラーメン自販機」というものがあると聞いた。「ラーメン」と「自販機」という言葉を聞くと、ホテルやスキー場などにあった(今もあるのか)日清食品の「カップヌードル」を売る自動販売機を思い浮かべるが、調べてみるとどうやらそれとはだいぶ趣が異なるようで、ITを駆使した「調理ロボット」らしい。

 なるほど、ITが絡んでいるのなら当メディア「ITmedia エンタープライズ」で取り上げても構わないはずだ。というわけで本稿は、記者が現地に行ってサービスについて調査した“食レポ”をお届けする。

シリコンバレー発のベンチャーが手掛ける“ラーメン”をいざ実食

 今回の調査対象となる「ラーメン自販機」なるものを展開しているのは、2016年に創業した米国シリコンバレー発のフードテックベンチャーYo-Kai Express(ヨーカイエクスプレス)だ。ちなみにラーメン自販機の名称も同様に「Yo-Kai Express」である。

 Yo-Kai Expressは、国内では北は北海道から南は熊本まで合わせて15台設置されている(関東では9台)。主な設置場所としては空港やパーキングエリア、駅構内などで、約90秒で温かい食事を24時間コンタクトレスで提供することが大きな強みだ。

 自販機によって異なるが、「一風堂」を運営している力の源ホールディングスと共同開発した「一風堂 博多豚骨ラーメン」や「IPPUDO プラントベース(豚骨風)」などに加え、「旭川 Miso Butter」や「函館 Shio」「信州 Kamo Soba」といった豊富なメニューを提供する。自販機によってはラーメン以外にもそばやうどんも食べられる他、場所限定のメニューもあり、例えば渋谷にある「Henn na Cafe 変なカフェ」では「Vietnam チキンフォー」を取り扱う。

 記者はJR東日本の「上野駅」の新幹線コンコース内にあるYo-Kai Expressを利用した。新幹線の改札内に入る必要があるので、これを食べるのだけが目的の場合は入場券を購入する必要がある。

上野駅に設置されたYo-Kai Express。コンコース内の一角にフードコートのようなスペースが設けられている(出典:記者撮影)

 ちなみにこの立食スペースには水やおしぼり、ティッシュ、調味料といったものは備えられていないため、飲食店的なホスピタリティを期待していると若干がっかりしてしまうだろう(恐らくこれもなるべく人件費を抑えるためだと思われる)。

 ラーメン自販機は近くで見るとこんな感じだ。下部のタッチパネルからメニューを選び電子マネー(交通系ICカード)で決済する。現金は一切使えないので注意してほしい。

タッチパネルでメニューを選んで電子マネー(交通系ICカード)で決済。約90秒で熱々のラーメンが提供される(出典:記者撮影)

 どのメニューにするか迷ったが、力の源ホールディングスとの共同開発商品である「燕三条 Se-Abura」を選んでみた。ジャンルとしては燕三条背脂ラーメン、いわゆる“背脂チャッチャ系”である。価格は980円。上野駅の外に出れば同じ値段で店のラーメンを食べられるためなかなか強気の価格設定だ。

(左)決済完了後、調理が開始されて約90秒で自販機の右の木枠の部分から商品が出てくる。一緒に箸も出てくる(右)出てきた燕三条 Se-Aburaは非常に熱いので注意。蓋をはがすとほくほくと湯気が立った(出典:記者撮影)

 さて実食してみよう。麺はもちもちの太麺ですすると心地いい食感。かなり生麺に近い。スープはにんにくの風味が強く香るが、飲んでみると意外にあっさりとしている。燕三条背脂ラーメンというわりには背脂の量もあまり多くないので飽きずに食べられる。何よりスープがやけどするくらい熱い。スキー場とか冬のパーキングエリアなんかで食べたらかなりおいしいのではなかろうか。

燕三条 Se-Abura。具はたまねぎとメンマ、豚バラのチャーシューで小さいものの結構本格的だ。量もそこまで多くないので小食の人でも安心(出典:記者撮影)

 ただ、個人的には高級なカップ麺やコンビニで売られているラーメンと同程度の満足感だった。最近のカップ麺やコンビニのラーメンは非常にクオリティーが高く、ヘタなラーメン屋で食べるよりよっぽどおいしい。Yo-Kai Expressは値段が980円とそこそこするので、単純なコスパでいえばコンビニのラーメンに軍配が上がる。だが、コンビニが閉まってしまう深夜のパーキングエリアなどであれば、温かい食べ物を提供できるYo-Kai Expressには大きな価値があるのだろう。次はぜひ他のメニューにも挑戦してみたい。

 ここまでのレポートでどの辺が調理ロボットなのか疑問に感じる方もいるかもしれない。調べたところでは、電子レンジと異なり、メニューごとに最適なパラメーターを用いつつ独自の調理技術であたためるため、本格的なラーメン屋のクオリティーに近づけられるようだ。この他、自販機内の在庫管理や価格設定などをクラウドでデータ管理できるという。

 ちなみに、JR東日本の「上野駅」の常磐線ホーム(11番・12番線)にはYo-Kai Expressの「セルフ駅そば」の無人店舗もあり、ここではラーメンではなくそばを提供している。せっかくなので筆者はこちらでも食べてみたのだが、正直、そばの方がおいしかった。近くに寄った際にはぜひ食べてみてはいかがだろうか。

(左)JR東日本の「上野駅」の常磐線ホーム(11番・12番線)にあるYo-Kai Expressの「セルフ駅そば」の無人店舗(右)「たぬきつねそば」(600円)を注文。おいしかったが600円は少し割高な気がする(出典:記者撮影)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ