問われる“マルチベンダーの重要性” アルトマン氏の退任騒動で揺れ動くOpenAIから考えるCFO Dive

ZoomはAIの未来に期待を寄せている企業の1社だ。ZoomはOpenAIで起こった社内の混乱などを起こさないように、複数のベンダーと取引を進めている。

» 2023年12月21日 08時00分 公開
[Alexei AlexisCFO Dive]

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CFO Dive

 OpenAIは2023年11月22日(現地時間、以下同)、サム・アルトマン氏をCEOに復帰させることで合意に至ったと発表した。これは、アルトマン氏が突然CEOの地位を追われ、会社としての将来が危ぶまれる事態になってから1週間も経過せずに起こった。

 Zoomのケリー・ステッケルバーグ氏(CFO《最高財務責任者》)は「OpenAIにおける最近の経営陣の混乱は、ビジネス上の重要な機能を特定のベンダーに依存するリスクを浮き彫りにしている」と指摘する(注1)。

 「重要な機能に関して、マルチベンダーを採用する戦略の重要性が明らかになった。これが今Zoomが取り組んでいるアプローチでもある」(ステッケルバーグ氏)

高まるAI活用の重要性 特定ベンダーに依存しないZoomの取り組み

 OpenAIはアルトマン氏のCEO復職に加え、クリントン政権時代に財務省のトップを務めたラリー・サマーズ氏(エコノミスト)などの新役員の就任についても「X」(旧Twitter)で発表した(注2)。

 OpenAIは2023年11月17日、アルトマン氏が取締役会とのコミュニケーションに不誠実な態度を取っていたとして解任を発表した(注3)。当初はOpenAIでCTO(最高技術責任者)を務めていたミラ・ムラーティ氏がCEOに選ばれたが、数日のうちに取締役会は方針を転換し、Twitch Interactiveの元CEOであるエメット・シアー氏を暫定CEOに起用した。

 別の展開として、Microsoftは2023年11月20日に、同社の新しいAI(人工知能)研究チームを率いるためにアルトマン氏の採用決定を発表した。一方、OpenAIではアルトマン氏の解任決定を受け、従業員の間で大きな反発が起こった。従業員はアルトマン氏を支持し、取締役会の辞任を求めたのだ。CNBCの報道によれば、こうしたOpenAIの不安定な動きが同社の顧客を動揺させ、この影響は他のAIベンダーにも広がっているという(注4)。

 ZoomもAIに大きな期待を寄せる企業の1社だ。

 Gartnerが2023年5月に発表した調査では、「企業幹部の70%が生成AIを調査、または導入の検討している」と回答した(注5)。

 また、回答者の20%近くが、自社のAIプロジェクトが「試験段階または実践段階」にあると答えた。さらに45%の回答者は、OpenAIが2022年11月に発表した「ChatGPT」により、AIへの投資が増えているとした。

 Zoomの幹部は2023年11月、2024年度第3四半期の総収益を前年同期比約3%増の11億ドルと報告した。通期の収益見通しを45億600万〜45億1100万ドルの範囲に引き上げており、AI投資のメリットを強調した(注6)。

 ステッケルバーグ氏は「AIは、Zoomのプラットフォームのあらゆる側面に重要であり、従業員や顧客のエンゲージメントだけでなく、組織への帰属意識の強化や人材定着の促進にも大いに役立っている」と、「Fox Business News」に語った(注7)。

 Zoomは2023年9月、「Zoom AI Companion」を発表した。このツールで有料ユーザーになれば、自動生成された会議の要約を確認することはもちろん、チャットの応答をAIが支援する。ステッケルバーグ氏によれば、既に22万以上のアカウントが同サービスを使っている。

 CNBCのインタビューで、ステッケルバーグ氏はZoomはAI導入について「連携アプローチを採用している」と述べた。連携アプローチとは、同社が複数のモデルと連携し、顧客に対する最高のパフォーマンスを提供することを意味する。

 ZoomはOpenAIに頼るだけでなく、自社モデルも活用している。さらにはMeta PlatformsとAnthropicとも連携している。

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