「100年に1度の変革期」が訪れているといわれる自動車業界。技術革新を後押しするためのDXの在り方を事例から探ってみよう。
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自動運転やコネクテッドカー、シェアリングなど、近年、自動車を巡る技術革新がめざましい。こうした技術革新に取り組むためにDXを推進する例もみられる。
ここ2〜3年で大きく業績を伸ばした企業の例から、技術革新を後押しするためのDXの在り方を探ってみよう。
今回からは、各産業分野の民営企業と外資系企業におけるDX実装の取り組み事例を、時には中国政府の政策動向を補足しながら紹介する。本稿では、中国の自動車メーカー吉利汽車集団(Geely Automobile)での取り組みを取り上げたい。
2021年以降、中国の自動車輸出台数は急増している。2023年1月〜10月の10カ月累計では424万台の実績となった。2023年(通年)では日本の約400万台(見込み)を抜いて、台数ベースで世界第1位になる見通しだ。
この輸出台数急増をけん引するのがBEV(純粋な電気自動車《EV》とプラグインハイブリッドカー《PHEV》の2種類を合わせた市場)だ。2023年における中国の輸出台数の3台に1台がBEVだった。BEVが中国車の海外輸出を力強く後押ししている。
中国車が世界1位になるのは輸出台数だけでない。BEVの輸出単価は、2018年の1台当たり2.6万元から、2023年は1台当たり17.5万元に約7倍上がっている。この背景には、欧州市場に向けた輸出が2018年の5000台(輸出台数全体に占める割合は約3.5%)から2022年の約55万台(同49%)に110倍拡大していることが一つある。もう一つは中国のローカルメーカーの躍進だ。テスラのように中国に生産工場を置いている世界大手メーカーの存在感は依然大きく、テスラ上海工場の輸出台数は全体の約4分の1を占めるが、中国発の自動車メーカーの輸出台数の伸びは目覚ましい。
では、中国車の競争力が上がったのはなぜだろうか。筆者は中国の自動車メーカーが「新四化」(CASE化)を率先して実施していることが主な原因だと考えている。
CASEは以下の4つの要素から構成されている
こうしたCASEの取り組みは各社がさまざまに実施している。ファーウェイは2023年12月から、自社開発したAVP(Automated Valet Parking)技術の量産車種への搭載を開始した。
AVPとは、地下駐車場において、運転手が降りた状態で利用できる「完全自動駐車技術」だ。パーキングスポットを自動探知し、経路を自動的に決定する。走行時は歩行者を優先し、対向車と譲り合う。運転手が指定した場所に自動召喚することもできる。ファーウェイはこれらの技術をAI(人工知能)を利用して実現した。
2023年12月時点で、中国では約160のBEVブランドが確認できる(グループ会社のサブブランドも含む)。ただし、中国では過去10年間で50以上のブランドが整理・淘汰された。今後さらに増加する可能性もあるので、数字は流動的であることに留意いただきたい。
なぜこの4〜5年の間に中国自動車メーカーは「強く」なったのか。何が変わったのか。この答えを目覚ましい躍進を続けている吉利汽車集団の事例から探ってみよう。
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