いったい何が中小企業のRPA活用を阻んでいるのか? ノークリサーチが調査

RPAは業務の自動化に取り組む企業が多く導入しているツールだが、「ブームは去った」ともいわれている。中堅・中小企業におけるRPA導入後の課題をノークリサーチが調査した。

» 2023年12月28日 07時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 ノークリサーチは2023年12月18日、中堅・中小市場におけるRPAの活用実態を分析した調査レポートを発表した。

中小企業はRPAを"拡大解釈"している

 同調査は、国内全業種にわたる年商500億円未満の中堅・中小企業を対象に実施して1300社から有効回答を得た。回答対象者は、情報システムの導入や運用・管理、製品・サービスの選定・決済の権限のある職責者だ。

 調査結果は「2023年版 中堅・中小企業におけるRPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの活用実態レポート」としてまとめられている。RPAが注目を集めるようになって数年が経過した今、大企業に比べて導入率が低い中堅・中小市場における活用の課題とは何だろうか。

 中小企業におけるRPAツールの理解度を把握する目的で「RPAツールの活用に該当するのはどのようなケースか」と尋ねたところ、「PCの操作内容を記録して、それを再現する形で自動化する」「PCの操作手順を定義して、それに沿って自動的に実行する」という回答が3割超に達した。

 RPAツールの活用と混同されがちな「『Microsoft Excel』のマクロ記録機能を用いて処理を自動化する」を選んだ回答者は1割に満たなかった(グラフ1)。

 これを受けて、ノークリサーチは「中堅・中小企業はRPAツールと単なるマクロ利用を概ね区別できている」と分析する。

グラフ1 RPA/NLDツールの活用に該当するケース(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 一方、「既存の業務システムをカスタマイズして処理を自動化する」「ヒトによる手作業を代替するシステムを新規に開発する」など、システム自体を改変して自動化を実現するケースを「RPAツール活用」として捉える割合も15〜20%程度存在する点に注意する必要があるとノークリサーチは指摘する。RPAを"拡大解釈"することによって、レイトマジョリティのユーザ企業が過剰なシステム開発費用を投じる可能性に懸念を示した。

RPA導入後に顕在化しやすい課題は?

 レイトマジョリティのユーザ企業が新しいIT活用に踏み出す場合は、「導入したが、期待した効果が得られずに廃止してしまう」という状況が発生しやすくなる。

 RPAツールに固有の課題項目を「導入済み」「導入予定」「導入あり&廃止」の導入状況別に集計したグラフ2を見ると、「自動化できる業務内容がどれか判断できない」の回答割合は、「RPA導入あり&廃止」で4割超に達した。自動化の対象業務が明確でない状態を放置すると、RPAツールが使われないままになり、廃止される恐れがあることが分かった。

グラフ2 RPA/NLDツール活用における課題(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 一方、「自動化できる業務内容がごく一部に限られる」と「ヒトによる手作業が残るため、導入効果が低い」を比較すると、前者は「RPA導入予定」の方が「RPA導入済み」より値が高く、後者は逆の状況となった。これは「導入前は『自動化できる業務が限定されるのでは』という懸念が多いが、実際に導入するとヒトによる手作業が残ることの方が課題として顕在化しやすい」という状況が多いことを示唆しているとノークリサーチは分析する。

RPAとノーコード/ローコードを併用する企業の割合

 上記の「ヒトによる手作業が残るため、導入効果が低い」という課題はRPAツールの導入提案を工夫するだけでは対処が難しい。残存する手作業を自動化するためには業務フロー自体の改善が必要となるケースが多いためだ。

 業務フロー自体が変更されれば、業務システムを改変・刷新する必要があり、既存の業務システムの補完・連携によって自動化を実現するRPAツールでは対処しづらくなる。

 こうしたケースに備えて、IT企業側が持つべき対処方法の一つが、RPAツールとノーコード/ローコード開発ツールの併用だ。今回の調査レポートでは、RPAツールとノーコード/ローコード開発ツールの双方の導入状況を集計・分析した(グラフ3)。

グラフ3 「F2-2.NLDツールの活用状況」別に見た場合の「F2-1.RPAツールの活用状況」(出典:ノークリサーチのプレスリリース)

 「NLD導入済み&拡大」と回答したユーザ企業では「RPA導入済み&拡大」が、「ノーコード/ローコード開発ツール(グラフ内ではNLDツールと略記)導入済み&維持」の場合は「RPA導入済み&維持」の割合が高い。つまり、ノーコード/ローコード開発ツールを活用しているユーザ企業は、RPAツールの活用にも前向きであることが確認できる。

 「自動化=RPA」と考えがちだが、RPAツールはあくまで自動化を実現する手段の一つにすぎない。前述したように、ユーザ企業には「既存の業務システムをカスタマイズして処理を自動化する」「ヒトによる手作業を代替するシステムを新規に開発する」といった手段をRPAの一環と捉えるケースが存在する。ノークリサーチは、IT企業に向けて「レイトマジョリティに向けて着実に自動化の提案を進めるためには、特定のツールに固執しないことが重要なポイントになる」と解説する。

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