AI活用で“電話予約対応”をどう変革した? ある和食チェーンの挑戦

和食・しゃぶしゃぶチェーン店「かごの屋」を運営するKRフードサービスが、ボトルネックになっていた電話予約対応業務の改善により、売上向上とコスト削減、業務負担減を成功させた。

» 2024年02月01日 08時00分 公開
[谷井将人ITmedia]

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 和食・しゃぶしゃぶチェーン店「かごの屋」を運営するKRフードサービス(大阪市)が、ボトルネックになっていた電話予約対応をネット予約への誘導と電話対応AI(人工知能)の導入で減らし、売上向上とコスト削減、業務負担減を成功させた。

 かごの屋は慶事や弔事などの際の集団予約にも対応した和食チェーン店。リピーターの割合が高い他、50〜70代の顧客が多いといった特性がある。その性質上、ネット予約に慣れない人も多く、電話予約が全体の約3分の2を占めていた。

 しかし、店舗では電話が鳴るたびに接客など他の業務を中断する必要があり、サービスの提供効率や品質に影響が出ることが悩みだったという。

 そこで同社はクラウド型予約管理システム「ebica」とAI電話予約応対サービス「AIレセプション」を導入し、ネット予約への誘導と電話予約を自動化した。チェーン全体で月間の約3000万円の予約売上と200万円のコスト削減を達成し、電話対応時間も1店舗当たり8時間削減できたという。

予約全数は増え、負担だった電話予約は半数を切る

 KRフードサービスは2022年9月にebicaとAIレセプションを導入した。ebicaでは予約管理とネット予約システムへの顧客誘導、AIレセプションでは音声合成AIがebicaのデータを参照しながら顧客からの予約電話に自動対応する仕組みを作った。

 2023年10月の実績では、AIが2900件(売上約3000万円分)の予約を受け付けた。導入店舗と運営方針が似ている未導入店舗を比較したところ、売り上げは10%高くなっていたという。これまで通話中などの理由で受け付けられていなかった電話にも対応できたことで全体の予約数も増えたとしている。

 3分の2を占めていた電話予約の割合は2023年11月には47%に減少。過半数をネット予約とAI受付に移行できたことで、店舗での顧客とのコミュニケーション時間が増えたという。

 また、顧客をグルメサイトではなく独自の予約システムに誘導する仕組みを作ったことで、掲載料や送客手数料の最適化によりチェーン全体で月間200万円近いコストを削減できた。

データ活用の基盤にも

 KRフードサービスはこれまで予約売上の状況などのデータを正確に把握できていない段階だった。今後は自社アプリからの予約数を増やすことに注力する。アプリで取得したデータを活用して会員限定コースの提案などをすることで、必要な食材やスタッフの予測もできるのではないかと考えているという。

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