イーロン・マスク氏の「最新のチャレンジ」は成功するか? Xの次なる不安要素

X(旧Twitter)が年内にP2P決済機能の提供を始める予定だと発表した。イーロン・マスク氏は障壁はないとしているが、送金に関連するライセンスの取得には不安が残る。

» 2024年02月19日 08時00分 公開
[James PothenPayments Dive]

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 米X(旧Twitter)は2024年1月9日、年内にP2P決済機能の提供を始める予定だと発表した(注1)。P2P決済機能の導入で、ユーザーの利便性が向上する他、Xという一つの場所が新たな商取引の場となり、より充実した体験を提供できるとしている。

 この発表はイーロン・マスク氏とArk InvestのCEOであるキャシー・ウッド氏との対談の数週間後に行われた(注2)。Ark Investは、TeslaやXといったマスク氏の会社に投資している投資管理会社である。Xは決済機能を立ち上げるために必要なライセンスを州当局が承認するのを待っている状況にある。

ライセンス取得が遅れれば計画遅延の可能性も?

 対談の中でマスク氏は「決済機能の提供開始時期が2024年中旬以降になるのは考えにくい」と述べた。Xは米国の大半の州でライセンスを取得済みだという。これは、ウッド氏が2023年12月28日の「Bloomberg」のインタビューで述べている(注3)。

 しかし、Xの公式Webサイトには15州のライセンスしか掲載されていない。そのうち14州は金融関連の業務におけるライセンスを管理する「全国複数州ライセンスシステム(NMLS)」にも掲載されている(注4)(注5)。15番目のライセンスはフロリダ州のもので、NMLSのデータベースには資金の受け取り・送金を行うために必要なライセンスが掲載されていないが、フロリダ州金融規制局のWebサイトにはそのライセンスが掲載されている(注6)。

 マスク氏によれば、支払い計画にとって最も重要な州のライセンスはまだ取得できていないという。「カリフォルニアとニューヨークからの認可がなければ意味がない」と同氏はインタビューの中で述べた。これらの州が特に重要である理由については詳しく語らなかった。Xは一般報道関係者のメールアドレスに送られたコメントの要請にも応じていない。

 マスク氏はまた、Xが決済機能を開始する上で障壁があるとは考えていないとウッド氏に語った。しかし、ニューヨーク市の法律事務所Walden Macht & Haranが50州全ての当局に「Xはマネー・トランスミッター・ライセンスを取得する資格がない」と主張する書簡を送付したため、州の承認作業は約90日間停止した(注7)。Xは同件についてもコメントしなかった。

 この遅れはマスク氏にとってXスタート時の「混乱」に続いて起こったものだったという。Xは2023年半ばまでさまざまな必要書類を提出していなかったとウッド氏に語った。

 「特に最初の数カ月は明らかに混沌(こんとん)としていた。完了したと思っていたマネー・トランスミッター・ライセンスの提出ができていなかったので業務が少し遅れた」とマスク氏は話す。

 世界で最も裕福な億万長者の1人である同氏は、オンライン銀行「X.com」の共同設立者だ(注8)。X.comはカリフォルニア州サンノゼを拠点とする決済大手PayPalの一部になった。

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