さまざまなベンダーのあらゆるリスクを明確に理解した上で調達プロセスに入るためにCIOができることは、徹底的な市場分析だ(注4)。
Wilson Sonsini Goodrich & Rosatiのマニーシャ・ミタル氏(プライバシーおよびサイバーセキュリティ担当パートナー)は『CIO Dive』の取材に対し、「現在は人気のあるソリューションでも、市場での競争が続けば順位が変動するだろう」と話す。プロダクト管理ツールを提供するProductboardが300人以上のCEOを対象に実施した調査によると、2023年はベンチャーキャピタルの支援を受けているほぼ全ての企業が自社製品に生成AIを導入する計画を打ち出したという(注5)。ひしめく製品がより混乱を生んでいる。
PricewaterhouseCoopers(PwC)のブレット・グリーンスタイン氏(データアナリティクスパートナーの生成AIリーダー)は「バイヤーはそのソリューションが、安全かつ認証され、差別化されていることを確認するために必要な時間とリソースに見合う価値があるか検討する必要がある。しかしこの作業は技術者とクライアントの双方にとって大きな負担だ」と語る。
「拡大し続ける生成AI市場に対応することの利点は、比較することでチームがリスクの影響と深刻さについてより理解を深められることだ」とミタル氏は言う。
同氏は「企業にはそれぞれの“リスク許容度”があるはずだ。ある分野では許容できなくても、特定の目的でのみ活用するといった緩和策を講じることができる分野もあるだろう」と話す。
全てのリスクの比重が同じとは限らないが、CIOはベンダーとの商談を止めるタイミングを見極める必要があるだろう。
ソフトウェアの開発等を行うJuniper Networksでシニアバイスプレジデント兼CIOを務めるシャロン・マンデル氏は「企業がAIソリューションや機能を構築する際、全てが思い通り行くわけではないことを想定しておかなければならない」とで述べている。
2023年、企業は生成AIの領域に深く入り込んだが、大半の企業は結果に満足していない。Boston Consulting Group(BCG)が1400人以上の経営幹部に行った世論調査(2024年1月発表)によると、2023年の生成AIに関する組織の進捗状況について、進捗なしまたは不満があるという回答が3分の2を占めた(注6)。
それでも企業は2024年中に生成AIを活用する動きを止めようとしない(注7)。BCGのデータによると5人中4人以上の経営幹部が、2024年にAIと生成AIへの予算を拡大する予定だという(注8)。
「だからこそどの企業もAIベンダーを精査するための信頼できるプロセスを必要としている」とマンデル氏は言う。
同氏によるとソリューションが期待に応えていないと判断したCIOは、問題を文書化し、ベンダーに懸念を伝え、契約書を見直し、カスタマイズの選択肢について話し合うなど、体系的かつ建設的なアプローチを取るべきだという。
「ソリューションのパフォーマンスに関する特別条項を契約に盛り込んだり、初年度は更新を前提とした契約構成にするなど、契約に法的保護を組み込むことを勧める。そうすることで、ソリューションから期待した結果が得られなかった場合に選択肢が広がるだろう」と同氏は述べている。
(注1)How CIOs can overcome ‘AI-washing’ while vetting vendors(CIO Dive)
(注2)Generative AI a ‘game-changer’ but businesses are worried about the ethics(CIO Dive)
(注3)AI implementation reshapes roles, sought-after skills(CIO Dive)
(注4)The ABCs of AI tools(CIO Dive)
(注5)The deluge of new generative AI products is just getting started(CIO Dive)
(注6)From Potential to Profit with GenAI(Boston Consulting Group)
(注7)Businesses work to deliver on generative AI aspirations in 2024(CIO Dive)
(注8)C-suite leaders expect AI to deliver cost savings in 2024(CIO Dive)
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