ERPチャットbotを使う最大の理由は、ユーザー体験を向上させ、生産性を高めることだ。会話体験があれば、ERPがどれほど複雑でも適切な情報を見つけやすくなる。また、開発者にとっては意味のある複雑なメニューやボタンをユーザーが操作することなく、リアルタイムの情報を素早く表示できるようになる。
従来のERPのUI開発モデルでは、ユーザーを支援するためのテンプレートを作成していた。
イラガバラプ氏は「ユーザーは探している情報を得るために何度もボタンをクリックしたり、いくつもの手順を踏んだりするより、ツールと会話することを望んでいる」としている。AIチャットbotはユーザーのニーズに応じて、より正確かつ簡潔に情報を提示することでそれを実現してくれる。さらに、プロンプトエンジニアリングやプロンプト管理によってユーザーはよくある質問を保存できる。これらのツールは、従業員名や顧客名、時間間隔といったパラメータの修正を自動化し、反復作業をスピードアップするのにも役立つ。
チャットbotに組み込まれた生成AIモデルは、複雑なERPへのアクセスを民主化してくれる。
PwCのパートナーとして生成AI担当のリーダーを務めるブレット・グリーンスタイン氏は、「生成AIは自然言語の解釈を得意としているため、ユーザーや管理者が自分の望みを伝えるだけで、データの操作やERPの設定などができる」という。この機能によって、データ照会やソフトウェア開発のハードルが低くなる。
イラガバラプ氏は、企業が希望する統合アプローチに基づいてチャットbotを分類することが有益だと考えている。
ERPベンダーはさまざまなチャットbotツールを開発しているが、開発チームが利用できる機能はそれぞれ異なる。例えば「SAP Joule」や「Oracle Digital Assistant for ERP and SCM」は、ERPプラットフォームに直接組み込まれている。また、「Microsoft Azure Bot Service」のように、ERPに特化したチャットbotがマーケットプレースで提供されており、多様なパートナーの専門知識を利用できるものもある。
イラガバラプ氏によれば、ERPチャットbotの導入にはトレードオフが必要な場面もあるという。ERPベンダーのチャットbotはベンダーのシステムと強固に統合されているが、同時にベンダーのテクノロジースタックに縛られることになる。一方、ベンダーニュートラルなチャットbotはシステムを柔軟に組み合わせることが可能だが、その分カスタム統合作業が増えることもある。
また、自然言語処理やダイアログ管理、開発者体験、スケーラビリティ、コストなどはツールによって異なる。ノーコードのチャットbotビルダーを使用すればより短期間の導入が可能になり、カスタム開発ツールを使えば柔軟性が高まる。構築済みのコンテンツやセキュリティ機能、サポートしているチャネル、ERP用語への対応を評価することも重要だ。
イラガバラプ氏は「ERPベンダーのチャットbotをデフォルトにするのではなく、企業ごとのユースケースや統合に関するニーズ、自社の要件に基づいてプラットフォームを評価すべきだ」と助言する。ベンダーのプラットフォームによって導入が促進されるなら、価値を実感するまでにかかる時間を考慮に入れることも重要だ。最適なプラットフォームは、自社が属する業種や規模、ビジネスニーズによって異なる。
以下は、イラガバラプ氏によるERPチャットbotルツールの分類だ。
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