ERPにAIチャットbotを統合する意味ってある? そのメリットを解説(1/2 ページ)

ERPにAIチャットbotを統合する企業が増えている。本稿ではERPをチャットbot経由で活用するメリットと効果的なチャットbot選定のコツについて解説する。

» 2024年02月28日 08時00分 公開
[George LawtonTechTarget]

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 ERPとのやりとりを自動化するためにAI(人工知能)チャットbotを活用する企業が増えている。理由は簡単だ。チャットbotは顧客や従業員の体験を大幅に向上させ、複雑なERPとそこに統合されたさまざまなアプリケーションとのやりとりを簡略化してくれるからだ。

 コンサルティング企業PwCで米国法人のSAPプラクティスリーダーを務めるリッチ・セルニャク氏は「全てのエンタープライズ向けアプリケーションはいずれ、チャットbotのインタフェースに対応するだろう」と予測している。これは既存のアプリケーションやワークフローに生成AIを導入する第一歩だ。チャットbotがあれば、アプリケーションのデータとのやりとりがはるかに簡単になる。

 セルニャク氏によれば、ベンダーニュートラルなチャットbotを検討することも重要だという。特定のベンダーに依存しないツールは、扱うデータやワークフローがアプリケーションの枠を超えるとき、さらなる価値をもたらしてくれるからだ。

 大規模言語モデル(LLM)をはじめとする機械学習を含めた生成AI技術のイノベーションによって、ERPチャットbotの開発も驚くほど容易になっている。自社のワークフローやユースケースに合わせて生成AIやチャットbotをカスタマイズする企業もあるだろう。ERPに実装されているチャットbot機能に注目する企業もあるかもしれない。

 また、以前からある対話型チャットbotから、既存のアプリケーションUIに適合するよう設計された新しいデジタルアシスタントまで、これらのツールにはさまざまな支援機能が搭載されていることも特筆に値する。顧客や従業員に最大の価値と使いやすさを提供するため、企業はどのような体験を優先するかを決めなければならない。

 重要なのは、これらのツールはどれも人間のエージェントや専門家の完全な代替にはならない点だ。現状特に高性能なLLMでもハルシネーションを起こす傾向がある。最悪の場合にはチャットbotが自信と権威をもって危険な提案をする可能性もある。デジタルアシスタントを導入する企業は、こうしたAIのハルシネーションの影響を突き止めて軽減するため、さらなる品質保証テストと安全対策を検討すべきだ。

ERPチャットbotでできること

 ERPチャットbotは、ERPに会話型インタフェースを追加するアプリケーションだ。これを活用すれば、従業員はスケジュールの確認やサポート文書の検索、データのサマリー生成などが可能だ。顧客は調達情報の調査や出荷スケジュールの見積もり、返品状況の確認などを会話型インタフェースから実行できる。

 OpenAIの「ChatGPT」サービスが大人気を博していることも、ERPベンダーが自社のERPに同様の機能を追加するきっかけとなっている。Microsoftの「Azure OpenAI Service」を使って実装することもある。また、ベンダーが自社のプラットフォームで動作するようにLLMをカスタマイズするケースもある。

 コンサルティング事業者AAreteのプリヤ・イラガバラプ氏(データサイエンスおよびアナリティクスデリバリー担当バイスプレジデント)は「ERPチャットbotは会話型AIの中でも最も急成長している分野の一つだ」と述べている。同氏によれば、現在ほとんどのERPが独自のチャットbotを提供したりサードパーティーの会話型AIツールと統合したりしており、その機能はベンダーによって異なるという。

チャットbotとERPの統合方法

 チャットbotの限界は、その学習ややりとりに使う基礎データにある。質の悪いデータやデータの欠落、クレンジングされていないデータは結果の正確性に悪影響を及ぼし、ハルシネーションのリスクを増大させる。

 モバイルデバイス向けソフトウェアベンダーEasologyのジョン・コリンズ氏(チェンジリーダーシップおよびトランスフォーメーション責任者)は「チャットbotや生成AIは正確なデータに大きく依存している」と話す。同氏によれば、多くの企業がこの課題に長年取り組んでいるという。データのクリーンアップには時間がかかり、データの作成や修正、検証の方法にしばしば問題が生じる。

 データのクリーンアップに加えて、異なるソースからのデータを調整したり整合性をとったりすることも重要だ。従来のERPシステムでは、企業全体で共通のデータ枠組みを作成し、データや開発、ビジネスチームがその枠組みに沿ってデータを整えることが求められた。チャットbotとLLMは、調達文書やメンテナンスマニュアル、材料の安全な取り扱いに関するデータシートなどの「非構造化データ」を照会する能力を拡張する。そのため、これらの機能をERPに保存されている大量の構造化データと調和させる方法を調べる価値はある。

 満足のいく精度を得られたら、チャットbot機能とERPの統合ははるかにスムーズになる。この段階までくれば、事前に構築されたコネクターやニッチなツール、ERPに特化したチャットbotテンプレート、会話アプリ、パートナーマーケットプレースなどを使用し、チャットbot機能をERPに統合できる。

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