“EDR運用失敗”にどう対処する? ウィズセキュアが2024年事業戦略を発表(1/2 ページ)

ウィズセキュアは2024年の事業説明会を開催した。EDRを導入してもうまく運用できない企業がいる中、同社はこれをどう解消するのか。

» 2024年03月07日 07時00分 公開
[宮田健ITmedia]

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 ウィズセキュアは2024年2月28日、2024年の事業説明会を開催した。日本法人のカントリーマネージャーである藤岡 健氏が、グローバルにおけるビジネス概況と戦略、日本におけるEDR(Endpoint Detection and Response)の課題、そして同社による“共闘”を紹介した。

攻撃者の間で大流行している“メガトレンド”とは何か?

 事業説明会では、本社のあるフィンランドのヘルシンキから、アリ・ヴァンティネン氏(チーフ・マーケティング・オフィサー)が来日し、グローバルでの事業戦略に関するアップデートを発表した。

WithSecureのアリ・ヴァンティネン氏(チーフ・マーケティング・オフィサー)

 ヴァンティネン氏によると、WithSecureは、F-Secureから2022年に分社したB2B部門によって業績は伸び続け、1年半かけて黒字化できたという。地域別売上ではほぼ半数が欧州で、日本はフォーカスマーケットの一つとして挙げられている。

WithSecureの業績(出典:ウィズセキュア発表資料)

 ヴァンティネン氏はサイバー脅威という“嵐”に立ち向かうため、まずは現況を整理した。同氏はセキュリティのメガトレンドについて「サイバー攻撃者はテクノロジーを駆使し、成功の利益を最大化するために先進化や効率化、自動化を図る『サイバー犯罪の産業化』を進めている」と語った。

 これらの取り組みによって、サイバー攻撃にコストがかかったとしても、「攻撃対象の急速な拡大」が可能なため、デジタル化が進む企業がよりターゲットになっている。また、関連会社や子会社をはじめとするサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性が狙われ「相互接続されたビジネス世界での攻撃の影響」が無視できなくなってきた。

 この“波”に対し、ウィズセキュアは「必要最小限のセキュリティへのシフト」「ヨーロピアン・ウェイがもたらす成功」そして「パートナーと中堅・中小企業の信頼関係」という3つの対応策を提案した。

 「多くのプロダクトや技術、ポリシーを持つことは、必ずしもセキュリティを強化するとはいえない。つまり必要最小限の、効果的なセキュリティへとシフトする必要がある」(ヴァンティネン氏)

“波”に乗るための3つのポイント(出典:ウィズセキュア発表資料)

 ここで気になるのは「ヨーロピアン・ウェイ」という言葉だが、ヴァンティネン氏は「セキュリティには、テクノリベラルで規制が少なく、市場がしたいことを実施する“米国的アプローチ”と、それと対極に位置する、最大限のコントロールを利かせる“中国的アプローチ”、そしてそのどちらでもない、より民主的で人間を中心とし、消費者、特に個人データをケアするような規制を基にした“ヨーロッパ的アプローチ”がある」と述べた。

 ウィズセキュアはこのアプローチを基に「3x3」のマトリクスで戦略を組み立てている。同社のソリューション「Elements Cloud」は、複数のセキュリティ機能が統合されたものであり、企業ごとのニーズに合わせてコンポーネントを組み合わせられる。

 また、同社はこれに加えて“コ・セキュリティ”(ウィズセキュアが提唱する顧客やパートナーと協力してセキュリティのエコシステムを構築するというアプローチ)を差別化要因とし、企業が必要としている機能を提供する。

「3x3」のセキュリティ戦略(出典:ウィズセキュア発表資料)

 ヴァンティネン氏は今後の展望として、ポートフォリオを刷新し、Elementsソリューションの領域として「Exposure Management」を強化すると話した。これは「自社のシステムにおける脆弱性を攻撃者よりも先に発見するため、常にチェックを実施し、フィックスする」ものだという。これは2024年5月末にヘルシンキで開催予定の同社カンファレンス「SPHERE24」で正式発表される予定だ。

 「よく記者から『攻撃者と戦うには何があればいいか』と聞かれるが、私は次に来るべきものとしてこのExposure Managementを推す。間もなく発表できることに非常にワクワクしている」(ヴァンティネン氏)

Elementsソリューションポートフォリオ(出典:ウィズセキュア発表資料)
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