重要システムのデータをソブリンクラウドで運用可能に 富士通とオラクル日本企業の生成AI活用本格化の起爆剤になるか

富士通がOracle Alloyを使って企業のクラウドリフトと生成AI活用を推進する協業を発表した。

» 2024年04月23日 08時00分 公開
[原田美穂ITmedia]

 富士通とOracleは2024年4月18日、日本の企業・団体のデータ主権要件に対応するソブリンクラウドの提供に向け、戦略的な協業を発表した。この協業により、富士通はOracleが提供するパブリッククラウド「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)のサービスを利用できる「Oracle Alloy」を独自に提供可能になる。協業は「ソブリンAI」の提供も視野に入れたものだ。

「ソブリンクラウド」とは? AI時代に重視される理由

 Oracle AlloyはOracleのパートナー企業が顧客に対してOCIを使って独自のサービスを提供できるようにしたもの。OCIの提供基盤も独自に運営できる。

 今回の協業により、富士通は地政学リスクや経済安全保障リスクに対応したクラウド環境(=ソブリンクラウド)でOCIを、「Fujitsu Uvance」の「Hybrid IT」サービスのメニューとして提供できるようになる。IT基盤ソフトウェアのアップデートやパッチコントロールなどの運用も富士通が担う。運用コンサルティングサービスおよび「Fujitsu Cloud Managed Service」も併せて提供することで、オンプレミスからクラウドまでのIT基盤全体を一貫したポリシーで運用可能だとしている。富士通は今回の協業をきっかけに、国内で蓄積したノウハウや知見を基に、海外市場への展開も検討する計画だ。

 ソブリンクラウドは「データ主権クラウド」などとも呼ばれる。明確な定義はないが、他国の法令などの影響を排除してデータの主権を維持できるクラウドサービスの総称だ。サービスを提供するデータセンターや通信経路が他国の法規制の影響下にある場合、国家間の利害が衝突するなどの事業活動とは別の問題によりデータの主権を維持できなくなる可能性があり、近年は米国を中心にこの問題を経済安全保障リスクととらえる傾向が強まっている。

 企業が独自のリソースを組み込んだAI活用を視野に入れる場合、いかに安全に活用しやすい形でデータを保有できるかが重要だが、機密情報は保管要件によっては既存のクラウドに格納しにくい。ソブリンクラウドにおいてオンプレミスと同様の環境を維持できれば、データの安全性を守ったままAIサービスで利用しやすくなることが期待される。

 Oracleは2023年に生成AI開発企業Cohereへの出資を発表しており、既に同社のSaaS型ビジネスアプリケーション群への生成AIの適用を発表している。今後、富士通とOracleはAIを活用してデータ主権要件への対応を高度化する「ソブリンAI」をはじめとする最先端クラウドテクノロジーの活用も推進するとしている。

 富士通によるサービスの提供開始は2025年度を予定する。

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