オラクルが掲げる「エンタープライズAI」とは? 生成AI活用の勘所を考察Weekly Memo(1/2 ページ)

オラクルが掲げる「エンタープライズAI」とは何か。その内容に企業における生成AI活用の勘所を感じたので、今回はこの話題を取り上げたい。

» 2024年02月19日 15時20分 公開
[松岡 功ITmedia]

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 「オラクルはこれからお客さまに『エンタープライズAI(人工知能)』をお届けしていく」

 日本オラクルの三澤智光氏(取締役 執行役 社長)は、同社が2024年2月14日に都内ホテルで開いた自社イベント「Data & AI Forum」のオープニングでこう宣言した。

日本オラクルの三澤智光氏(取締役 執行役 社長)

 「エンタープライズAI」とは何か。オラクルのAI戦略ではあるが、その内容に企業における生成AI活用の勘所を感じたので、今回はこの話題を取り上げたい。

エンタープライズAIとは何か? リプレースや新規顧客の開拓につながるか?

日本オラクルの竹爪慎治氏(専務執行役員 クラウド事業統括)

 「当社は、インフラストラクチャやデータ、AIサービス、SaaS(Software as a Service)アプリケーションの4層全てにわたって、エンタープライズAIをお届けしていく。これにより、お客さまが業務やサービスにAIを安全かつ効率的に利用し、生産性向上やイノベーションにつなげられるように支援したい」

図1 4層からなるエンタープライズAI(出典:日本オラクルの講演資料)

 三澤氏に続いて説明役を務めた日本オラクルの竹爪慎治氏(専務執行役員 クラウド事業統括)はそれぞれの層について次のように説明した(図1)。

  • 最下層のインフラストラクチャ: すなわち「AIを動かす」ところ。AIのハードウェア基盤としてケイパビリティを最大限に発揮でき、コストパフォーマンスに優れたインフラを提供する
  • 最上層のSaaSアプリケーション: すなわち「使うAI」。多くの企業が求めるAI活用のユースケースやベストプラクティスを組み込んだ形でスピーディーに提供する
  • 中間に位置するデータとAIサービス: すなわち「つくるAI」。データベースを長年にわたって手掛けてきたオラクルとして、それぞれの企業の資産であるデータをAIに解放し、生産性向上やイノベーションにつながるような仕組みやサービスを提供する

 このように説明した上で、竹爪氏は次のように強調した。

 「当社としては今後、新たな技術が次々と出てくるAIやクラウドの領域は外部の先進技術も積極的に取り入れる一方、パートナー企業と共に長年にわたって培ってきたエンタープライズ(大企業)向けの技術をそれらと融合させていく。それこそが、エンタープライズAIを切り口とした当社の戦略だ」

 つまりは、これまでオラクルのクラウド戦略として展開してきたIaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaSの全ての層にエンタープライズグレードのAIを組み入れる形だ。その中で新たな取り組みとして目を引くのがAIサービスだ。これについて、竹爪氏は次のように説明した(図2)。

図2 エンタープライズAIの勘所1(出典:日本オラクルの講演資料)

 「ここでいう『AIサービス』とは、生成AIによって企業データを活用するサービスのことだ。企業の資産であるデータをAIに安全かつ効率的に解放して生産性の向上やイノベーションにつなげられるサービス、あるいは新たな業務アプリケーションを作成するのが図の左にある『高性能でカスタマイズが容易なAI』、それと図の右にある『生成AIから活用しやすいデータベース』をリアルタイムに連携させることが、これから非常に重要になる」

 オラクルはこの仕組みにおいて、高性能でカスタマイズが容易なAIとして「オラクル Cloud Infrastructure(OCI)Generative AI Service」、生成AIから活用しやすいデータベースとして「Oracle Database 23c AI Vector Search」を用意している。

 企業における生成AIの使い勝手でこれから求められるのは、生成AIの大規模言語モデル(LLM)と社内データの両方からスピーディーかつ安全に高いコストパフォーマンスで最適な回答を得られるようにすることだ。図2はその要望に対するオラクルの提案だといえるだろう。

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