「SaaS×生成AI」の差別化ポイントとは? 日本オラクルの会見からユーザー視点で探るWeekly Memo(1/2 ページ)

「SaaS×生成AI」によるサービスが注目されているが、ユーザー視点で選ぶ際の重要なポイントはどこにあるのか。日本オラクルの会見から探りたい。

» 2023年10月30日 17時20分 公開
[松岡 功ITmedia]

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 業務アプリケーションに生成AI(人工知能)を組み込んで生産性向上を図る動きが活発になっている。特にクラウドアプリケーションであるSaaS(Software as a Service)と生成AIを掛け合わせた「SaaS×生成AI」は、クラウドでデータを迅速かつ柔軟に活用できることから、今後大きな需要が見込まれる。

 では、SaaSベンダーからの発表が相次いでいる生成AI搭載サービスを、ユーザー視点で選ぶ際のポイントはどこにあるのか。そんな問題意識を持って、SaaSベンダーの会見に臨んだ。

Oracleの取り組みに見る「SaaS×生成AI」とは

 米Oracleの日本法人である日本オラクルは2023年10月26日、SaaS事業の最新動向について記者説明会を開催した。エンタープライズIT大手のOracleはSaaS事業でも大手だ。この説明会が興味深い内容だったので、今回はそのエッセンスを紹介した上で考察したい。

 会見に登壇したのは、日本オラクルのSaaS事業を担うバイスプレジデントの武藤和博氏、常務執行役員の善浪広行氏、執行役員の塚越秀吉氏だ。この3人が今回新たに同社のSaaS事業をけん引する形となった。武藤氏は日本IBMで要職を歴任し、「IT業界に38年、身を置いてきた」(武藤氏)という大ベテランである。

日本オラクルのSaaS事業の会見。左から執行役員の塚越秀吉氏、常務執行役員の善浪広行氏、バイスプレジデントの武藤和博氏。武藤氏と善浪氏の関係は「会社に例えれば会長と社長」(善浪氏)とのこと。

 会見では、まず武藤氏がSaaSとAIの市場動向について「SaaSとAIの進展によって、DX(デジタルトランスフォーメーション)がさらに進展している」との認識を示した(図1)。図1は調査会社が公表しているSaaS型ERP(経営資源計画)およびAIの市場規模の推移予測だ。いずれも高い伸びが見込まれている。同氏は「SaaSとAIの掛け合わせによって、新たな社会価値を創出できるとわれわれは考えている」と力を込めた。

図1 SaaSとAIの市場動向(出典:日本オラクルの会見資料)

 こうした市場の動きに対し、日本オラクルはSaaS事業の重点施策として、「事業環境の変化に向けたモダナイゼーションのためのSaaSを推進する」「AIで業界全体のDXを推進し、日本社会の生産性向上を図る」といった点を掲げている。

 以下、OracleのSaaSとAIの取り組みの状況を紹介し、上記の問題意識について考察したい。

 同社のAIソリューションは、「さまざまなお客さまの要件に対応するエンタープライズAIを、高性能なインフラ上でセキュアに提供している」(武藤氏)。具体的には図2に示すように、「AIインフラストラクチャ」「開発者、データサイエンティストのためのAI」「アプリケーションのためのAI」といった3層構造から構成される。すなわち、IaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)、SaaSのそれぞれの層で必要となるAIを提供しているわけだ。

図2 OracleのAIソリューション(出典:日本オラクルの会見資料)

 その中で、SaaSに組み込まれたAI機能は「既に30以上を提供済み」(武藤氏)とのことで、今後は生成AIの実装を拡大する構えだ(図3)。

図3 SaaSに組み込まれたAI機能(出典:日本オラクルの会見資料)
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