2023会計年度は好調のOracleが今期の事業戦略の概要を発表 注力分野はクラウドとAI(1/2 ページ)

日本オラクルが新たな事業戦略を説明した。今期の注力はクラウドとAIだというが、具体的な取り組みとは。

» 2023年07月11日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 日本オラクルは2023年7月6日、2024会計年度の事業戦略説明会を実施した。同説明会には同社の三澤智光氏(取締役 執行役社長)が登壇した。

2023年度はまさに“絶好調”で終えたOracle その要因は

日本オラクルの三澤智光氏

 2023会計年度におけるグローバルの通期売上高は前期比22%増の約500億ドル(約7兆1906億円)、第4四半期の売上高は18%増の138億ドルとなった。好調な業績の裏にはクラウド事業の伸びが大きく関係している。実際に三澤氏は説明会の冒頭で「クラウド事業と共に業績が大幅に伸びている」と喜びを見せた。クラウドの内訳ではIaaS/PaaSで77%増、SaaSで47%増という結果になった。

 三澤氏は説明会の中で2023年6月19日時点の米ニューヨーク証券取引市場「NASDAQ」の株価に基づく企業時価総額上位100社を引用し、上位のOracleを示しながら「元気なOracleが戻ってきている」と話した。まさに2023会計年度は“絶好調”だったようだ。

 2023会計年度、日本オラクルは重点施策とした図1の5つを挙げていた。

図1 2023年度における重点施策(出典:日本オラクル提供資料)

 さまざまな業界で「Oracle Cloud Infrastructure」(以下、OCI)の採用が進み、それが業績にも表れている。日本オラクルは地方公共団体のガバメントクラウド移行やサステナビリティに関する事例も多数発表しており、また、パートナー企業による「Oracle Cloud」の資格保有者の継続伸長などを見ると、2023年度の重点施策はおおむね達成したといえるだろう。

2024会計年度に取り組むのはクラウドとAI

 三澤氏は2024会計年度の重点施策に「日本のためのクラウドを提供」「顧客のためのAI(人工知能)を推進」を挙げた。この背景には“加速する社会の変化”への危機感がある。三澤氏は重点施策を発表しながら「過去の5〜10年の変化と、未来の5〜10年の変化にはとてつもない差がある。この変化に置いて行かれないために、企業は『何に取り組むべきか』を考えなければならない」と警鐘を鳴らした。

日本のためのクラウドを提供

 日本のためのクラウドとは何を示しているのか。三澤氏は図2の5つの要素を示した。

図2 日本のためのクラウドを構成する5つの要素(出典:日本オラクル提供資料)

 1つ目の「日本の顧客のための専用クラウドの提供」に関して三澤氏は、他社のクラウドベンダーよりも後発で市場参入したOracleだからこその強みを語った。

 「Oracleは他社よりも10年以上遅れて市場参入した。つまり、他社よりも新たな技術でクラウドを構築している。実際に他社のクラウドの多くは大規模データセンターでサービス提供基盤を自前で運用しているが、OracleであればOCIの仕組みを『Oracle Dedicated Region』『Oracl Alloy』といった形で企業に提供し、導入企業自らが運用できる」(三澤氏)

 「データを手元に置いておきたい」などの企業の要望に柔軟に対応できるサービスだと三澤氏は示した。

図3 日本の顧客の要件にあわせた多様なクラウド展開モデル(出典:日本オラクル提供資料)

 2つ目の「ガバメントクラウドへのコミットメント」では、2023会計年度から引き続き、デジタル庁およびガバメントクラウドへの体制強化や、ガバメントクラウド推進支援、パートナー企業の推進などに取り組むとした。

 3つ目の「ハイブリッドクラウドによる、ミッションクリティカルシステムのモダナイゼーション」について三澤氏は「現状として、パブリッククラウド環境とミッションクリティカルシステムの相性が必ずしも良いわけではない」と話した。「高い処理性能」「低遅延」「高可用性のクラスタ構成」などを必要とするミッションクリティカルシステムに対し、パブリッククラウド環境の性能は十分ではないことが理由だ。

 「F1に参加するような車が一般道で性能を発揮しきれないのと同じだ。そういう車には専用の“サーキット”が必要になる」(三澤氏)

 このサーキットがOCIだ。三澤氏はミッションクリティカルシステムの要件を満たす環境は現時点でOCIしかないと他社との違いを明確にした。

 4つ目の「クラウドネイティブSaaSによる、顧客のトランスフォーメーションの推進」では、OracleがSaaSとして提供する「Oracle Fusion Applications」が肝になる。三澤氏によれば、従来のERPはさまざまな業務アプリケーションを異なるインフラなどで運用するのが一般的だったが、これではコスト面で企業の負担が大きい。Oracle Fusion Applicationsであれば、追加コストなしに四半期ごとなどの自動アップデートを実行でき、最新技術の恩恵を受けながら本業に集中できる。

 5つ目の「ERPにまつわる従来のコスト構造から顧客を開放」は4つ目と同じだ。統一されたインフラと集約された個別インスタンスにより、企業はコスト最適化に取り組める。

図4 Oracle Fusion ApplicationsとERPにまつわる従来のコスト構造(出典:日本オラクル提供資料)
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