富士通とNECの最新受注状況から探る 「2024年度国内IT需要の行方」Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2024年04月30日 12時45分 公開
[松岡功ITmedia]
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NECは2024年度国内IT需要をどう見ているか

 NECが2024年4月26日に開催した決算会見では、森田隆之社長兼CEOと、藤川修Corporate EVP兼CFOが説明した。森田氏は2024年度に向けた思いとして、「国内のITサービスは2023年度に売上収益も営業利益も大きく伸長した。2024年度はその高水準からさらなる成長を遂げたい」と述べた。

左からNECの森田氏、藤川氏

 同社が発表したITサービスにおける受注状況は、国内全体が通期で前期比2%減(第4四半期で同2%増)、変動の大きいNECファシリティーズを除くと通期で同1%増となった。業種別ではパブリックが同1%減(同9%増)、エンタープライズが同5%増(同11%減)、その他が同8%減(同11%増)となった。エンタープライズの内訳では、金融が同16%増(同15%減)、製造が同3%減(同4%減)、流通・サービスが同3%増(同5%減)だった(図3)。

図3 NECの各分野における2023年度の受注状況(出典:NECの決算資料)

 この受注状況について、森田氏は業種ごとの動きと合わせて次のように説明した。

 「国内の受注状況は堅調に推移していると捉えている。パブリックは通期で1%減だったが、2021年度から2022年度にかけて大きく伸長し、2023年度も高水準を維持した格好だ。エンタープライズも通期で5%増と堅調に推移した。中でも金融が高水準だった2022年度をさらに大きく上回る伸びを示した。流通・サービスも堅調に推移した。製造は3%減だが、継続して採算性を踏まえて案件を選別しており、収益性は改善している。その他は下期から好転している」

 だが、富士通と比べると、伸びにおいては明暗が分かれたようにも感じられる。このことを指摘する質問に対し、森田氏は「国内の受注は2022年度、2023年度と好調で、高水準で推移している。いわば『発射台が結構高くなっている状態』が続いているというのが、われわれの捉え方だ。2024年度第1四半期(2024年4〜6月)に入ってもその状況は継続しており、当社のリソースにおいてご迷惑をかけないようにしたいと考えている」

 リソースについては、富士通の磯部氏も懸念事項に挙げたが、森田氏の上記の発言は本音がこぼれたようにも聞こえた。

 NECはこうした受注状況を踏まえ、2024年度の業績予想を明らかにした(図4)。ITサービスでは売上収益も営業利益も微増する計画だが、2021年度の実績から見ると着実に成長しているのが分かる。社会インフラも同様だ。堅実な経営スタイルが見て取れる。

図4 NECの2024年度業績予想(出典:NECの決算資料)

 2024年度の国内IT需要の動きについてはどう見ているか。懸念される点はないのだろうか。これに対して森田氏と藤川氏は次のように答えた。

 「注目点として挙げたいのは、基幹システムのモダナイゼーション需要が今後さらに広がっていくかどうかだ。動きが見えているが、なかなか思い切って踏み出せない企業も多いように感じている。ただ、企業にとってはそこを踏み出さないと本当のDXには進めないので、今後、そうしたステップを踏むようなIT需要が増えることを期待している」(森田氏)

 「企業規模でいうと、中堅企業のIT需要が高まっていると感じている。当社としてもフォーカスしていきたい」(藤川氏)

 中堅企業については、政府も2024年を「中堅企業元年」と位置付け、重点的に支援することを打ち出している。「中堅企業」を法律で明確に定義し、国内投資などの優遇措置を通じて活性化を促す構えだ。藤川氏の発言はそうした動きを見据えたものだといえるだろう。

 最後に筆者の見立てを示しておこう。富士通とNECにおける2024年度のIT需要に関しては、次の2つがポイントになるだろう。

  • 基幹システムのモダナイゼーションが本格的に動き出すか
  • その動きがDXによる経営改革につながっていくか

 こうした意味でも、2024年度の国内IT需要はその中身において大きな節目を迎えそうだ。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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