基幹システムのクラウド移行を4カ月、自前で 日立建機

日立建機が自前で基幹システムをクラウドに移行した。約500の仮想サーバと100のデータベースを含む大規模なシステムにもかかわらず、4カ月で作業は完了したという。

» 2024年07月01日 13時00分 公開
[原田美穂ITmedia]

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 日立建機がAI導入を見据えて基幹システムのクラウド基盤への移行を「自前で」わずか4カ月で実現した。移行と同時に「IT環境の自前化」「アジャイル文化の醸成」などを推進する。2024年6月28日に日本オラクルが発表した。

 日立建機は「顧客に寄り添う革新的ソリューションの提供」を経営戦略の一つとして掲げてデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しており「IT環境の自前化」「アジャイル文化の醸成」「人材育成」「DX基盤の整備」に取り組んでいる。この取り組みの一環として基幹システムや建設機械の稼働データを一元化して、データ活用やAI導入に備える。

わずか4カ月、自前でクラウド移行を実現した体制

 同社基幹システムは、500の仮想サーバ、100のデータベースで構成される大規模なものだ。これら全てを「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)と、その上で動作する「Oracle Cloud VMware Solution」「Oracle Exadata Database Service」に移行した。

 今回のシステム移行では、オンプレミスのVMware仮想化環境にあった約500のアプリケーションサーバと約100のデータベースを「Oracle Cloud VMware Solution」「Oracle Exadata Cloud Service」に移行した。アプリケーションやデータベースの構成変更を最小限saに抑制し、クラウド移行を短期間で実現したとしている。

 システムの移行先選定するに当たっては、柔軟性と拡張性を考慮してクラウドを前提に複数のソリューションを比較したという。このうち、Oracle Cloudはクラウドの柔軟性を持ちながら、オンプレミスでの運用時と同等の可用性やデータ保護を実現でき、オンプレミスと同じアーキテクチャで安全な移行が可能であることが評価された。BCP対策として東京と大阪の2つのリージョンを使い、冗長性を確保してシステムを構築しているという。

 プロジェクトは日本オラクルのコンサルティングサービス部門が支援し、データベースの統合や以降は日立ソリューションズが、「Oracle Cloud VMware Solution」へのアプリケーション移行は日立と日立システムズが協力したが、移行作業そのものは日立建機が「自前で」推進した。

 自前で移行プロジェクトを進めるにあたって、日本オラクルは「Oracle Cloud Lift Services」のフィジビリティスタディとPOC支援サービスや各サービスのスキル習得を支援。PoCシナリオの検証を支援した。

 システムは2023年4月から4カ月でOCIに環境を構築。同年8月には開発環境の移行を初め、段階的に本番環境を移行した。2024年5月にデータベースのOracle Exadata Database Serviceへの移行を完了している、2024年8月には「Oracle Cloud VMware Solution」への移行を完了させ、2024年内に東西リーションでのBCP対応も完了させる計画だ。

 日立建機は、クラウドへの移行により、リソースの容易なスケーリングが可能になり、ビジネスの成長や変化に応じる柔軟性が向上し、インフラストラクチャの運用コストを約20%削減、DR対応を実現する。またオンライン処理の性能も向上し、バッチ処理では最大60%したとしている。同社は今後、OCIに移行したアプリケーションのクラウドネイティブ化やオンプレミス環境で稼働する他のデータベースの移行も計画しており、「データドリブン経営を目指し、重要なデータをOCIに集約することで、マルチクラウドやAIの活用を見据えたDX基盤の整備に取り組む方針」だとしている。

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