PwCが生成AIに1600億円投資 OpenAIにとっても“うれしいパートナーシップ”にCIO Dive

PwCがOpenAIの「ChatGPT Enterprise」を英米の従業員に展開することになった。OpenAIにとってはPwCが大規模な顧客であるだけでなく、より大きなメリットをもたらすと考えられる。

» 2024年07月05日 10時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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CIO Dive

 4大会計事務所のPricewaterhouseCoopers(以下、PwC)は2024年5月29日(現地時間、以下同)、米国と英国の10万人以上の従業員に「ChatGPT Enterprise」を展開する準備を進めていると発表した。OpenAIにとっても法人向けツールの最大の顧客となる(注1)。

OpenAIにとってPwCとの連携は何がうれしい?

 パートナーシップ拡大の一環として、PwCはOpenAIのChatGPT Enterpriseの最初の再販業者になり、PwCクライアントに向けてツールへのアクセス権を販売する(注2)。

 PwCによると、生成AIは米国のクライアント上位1000社のうち、すでに950社のアカウントで活用されているという。

 ユーザーはChatGPT Enterpriseを通じてOpenAIの最新のマルチモーダルモデル「GPT-4o」にアクセスできる(注3)。税務申告書のレビューや提案書の作成、ソフトウェア開発者の支援などを行うカスタムGPTも開発しているという。

 2023年の「ChatGPT」への関心の高まりを受けて、OpenAIは顧客の開拓を強化している(注4)(注5)。スタートアップ企業である同社にとって、PwCを顧客として確保できたことは信頼を得るための重要なマイルストーンとなる。

 何しろ、PwCは「Fortune 500」の89%にサービスを提供しているのだ(注6)。

 PwCは2024年4月、顧客へのAI提供の強化やテック企業とのパートナーシップの強化、従業員のスキルアップのため、3年間で10億ドルを投資するロードマップを発表した(注7)。同社は社内で3000以上の生成AIのユースケースを見つけており、そのうちの40%近くがこれまでに導入された社内ツールによって対応されている。

 この技術をいち早く採用したPwCは、従業員とクライアントの生成AI導入を促進させようとしている。

 同社は2023年夏、OpenAIの技術で構築されたプライベートな生成AIツールである「ChatPwC」に従業員がアクセスできるようにした(注8)。また、ハイパースケーラーであるGoogleやMicrosoftとのパートナーシップも拡大した(注9)(注10)。

 PwC米国のジョー・アトキンソン氏(最高製品技術責任者)とPwC英国のベン・ヒギン氏(技術および投資責任者)は2024年5月29日の発表の中で、「われわれは、生成AIの能力と利点を積極的に実証する証明の段階に入った」と述べた。

 同じく4大会計事務所のErnst & Youngは2023年9月に14億ドルのAI投資により「EY.ai」と呼ばれる社内プラットフォームを構築し(注11)、Deloitte Touche Tohmatsuも2024年1月に従業員向けにAIを活用したプラットフォームを展開した(注12)。両社はまた、企業が生成AIを導入する過程を支援している。

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