収益成長率が60%高い企業の「3つの条件」 アクセンチュア調査で判明

アクセンチュアのグローバル調査によると、「3つの条件」を備えている企業は、それらの条件を備えない企業に比べて収益成長率が最大60%、利益は40%高いという。3つの条件とは何か。

» 2024年08月15日 07時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 アクセンチュアは、企業のデジタルコアに関する調査結果を発表した(注1)。

 デジタルコアについて、アクセンチュアは「生成AIや次の新しいテクノロジーなどの革新的なテクノロジーを使って企業が再創造を推進するためのエンジン」としている。同調査は、日本を含む世界10カ国で、19業種にわたるIT部門の経営幹部1500人を対象に実施された。

収益成長率が60%高い企業が備える「3つの条件」

 同レポートでは、企業全体の再創造を支えるテクノロジー能力の構築には、先進的なデジタルコアが重要な役割を果たすことが明らかになった(図1)。デジタルコアには、俊敏性とイノベーションを生み出すクラウドを前提としたインフラストラクチャと、それに対応する業務を適切に組み合わせることが肝要になる。

 差別化を図るためのデータとAI、成長を迅速化するアプリケーションとプラットフォーム、次世代エクスペリエンスと最適化されたオペレーション、高いセキュリティが求められるとしている。

図1 企業のデジタルコアの総合的な強さを表すデジタルコアインデックス。デジタルプラットフォーム、データ、クラウドファーストインフラストラクチャ、コンポーザブル統合、AI、セキュリティ、連続コントロールプレーンの7つのコンポーネントの各機能の平均として表す(出典:アクセンチュア 調査レポート「Reinventing with a Digital Core」)

AIが技術的負債を増大させる

 同レポートでは、技術的負債が増加する要因の一つがAIであることも判明した(図2)。技術的負債とは、ITシステムを最新の状態に保ち、ビジネスニーズに即応するために要するコストと労力のことだ。長期的なメンテナンス性よりも、導入のスピードを優先することで蓄積される。

 AIは技術的負債の管理・軽減や新しいシステム設計に活用できる。一方で、経営幹部の41%がアプリケーションやプラットフォームと並び、技術的負債が増加する要因としてAIを挙げた。

図2 AIはアプリケーションと並んでテクノロジー負債の最大の原因になっている(出典:アクセンチュア 調査レポート「Reinventing with a Digital Core」)

 アクセンチュアによると、従来の技術的負債は主にレガシーコードや古いテクノロジー、文書化の不足から生じていたが、最近ではAIの急速な浸透によって新たな技術的負債が増加している。いち早く導入されたものの、その後、複雑な問い合わせに対応できなくなったAIチャットbotなどが新たな負債に該当する。

デジタルコアを高める3つの基本理念とは

 企業全体の再創造を支えるデジタルコアの実現に向けて、アクセンチュアでは、以下に挙げる3点を基本理念として提唱している。これらの基本理念を同時に推進することによって収益成長率を60%向上、利益を40%増加させるなど(図3)、大きな成果創出が可能になるという。

 アクセンチュアによると、安定した経済成長や地政学リスクを伴わないグローバル化は期待できない。グローバル規模でのコストを抑えた調達や、低コストな地域での工場操業といった旧来のやり方に頼ることも現実的ではないとしている。

1. 業界ニーズに合致した先進的なデジタルコアの構築

 今回の調査では、企業全体の再創造のために業界トップレベルのデジタルコアを具備する必要性が示されている。1つの能力向上が、他の能力向上につながることも明らかになった。企業はまず自社のデジタルコアの現状を把握し、必要な領域に基づき「No Regret:先手必勝で取り組む領域」を優先すべきだ。これによってデジタルコア全体で継続的改善の好循環が生まれる。

2. AIオペレーションに向けたシステム再構築を含む、戦略的イノベーションへの投資強化

 IT予算をシステム運用よりもイノベーション創出に振り分け、主要業績評価指標として、その増加割合を計測すべきだ。同調査では、企業全体の再創造に向けて、少なくとも対前年比6%増が必要だとしている。必要となる追加予算は、クラウドのコスト最適化や、運用プロセスの自動化などの施策によって捻出できるだろう。

 企業は、そこで得られた資金をビジネスプロセスの再設計、新製品やサービスの投入、新市場への参入などの活動に投資することが望まれる。既に自社の製品・サービスをまたいだソリューションがあれば、この活動の出発点となり得るだろう。最終的に企業は、ビジネスプロセスで定義されたワークフローに従ったオペレーションから脱却し、人間とAIの最適な協働環境を生み出すべきだ。これには、人間の意思決定とAIによる価値創造の両輪を支えるデジタルコアが必須だ。まず取り組むべきことは、AIオペレーションに向けたシステムを再構築することだ。

3. 計画的かつ自律的な手法により、技術的負債と将来への投資のバランスを確保

 同調査では、IT予算の約15%を技術的負債の解消に割り当て、安定したIT能力を維持すべきことが判明した。これは技術的負債の削減と将来的な投資を両立するための配分だという。

 常にITを最新の状態にするためにはソフトウェアやハードウェア、サービスの更新、アップグレード、管理が不可欠だ。自動化されたバージョン管理システムを活用することで、コード変更に伴うインフラストラクチャのコンフィギュレーション設定を更新できる。この方法は、企業ITシステムをさらに自動化し、柔軟性やシステム構築力の向上につながり、将来の技術的負債の削減に貢献する。

図3 収益が10億ドルの2つの企業を比べた場合、再創造に対応したデジタルコアを備えた企業は、それを持たない企業よりも1年早く60%早く成長し(1.38億ドルまで)、収益性も40%向上する(出典:アクセンチュア 調査レポート「Reinventing with a Digital Core」)

 アクセンチュアのカーティク・ナライン氏(テクノロジー 最高責任者)は、先進的なデジタルコアの重要性について、「急速なビジネス環境の変化により、企業全体の継続的な再創造は、もはや定石の戦略だ。企業は生成AIのような技術が浸透する中で、テクノロジーが業務に与える影響を把握しようと努めている。業界先駆的なデジタルコアによってテクノロジーから価値を得ることは、企業が競争を勝ち抜き、事業を成長させるため必須だ」とコメントしている。

(注1)同調査の分析結果はレポート「Reinventing with a Digital Core」(デジタルコアによる再創造の推進)(英語版)として、アクセンチュアの公式Webサイトで公開された。同調査の結果は、2024年7月23日に発表された。

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