IDC Japanは国内プライベートクラウド市場予測を発表し、2028年には市場規模が約2倍になる見通しであることを明らかにした。いま、日本において自社でクラウド基盤を持つプライベートクラウドが注目される理由はどこにあるか。
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IDC Japanは2024年10月7日、国内のプライベートクラウドに関する市場予測を発表した。長らくハイパースケーラーをはじめとするパブリッククラウドやSaaSの利用拡大が注目されてきたが、今後はオンプレミスからのクラウドリフトにおいてもパブリッククラウドが存在感を増すようだ。
IDC Japanは2024年10月7日、国内のプライベートクラウドに関する市場予測を発表した。2023年の国内プライベートクラウド市場は前年比で27.3%増の2兆533億円(支出額ベース)に達し、2028年には市場規模が2023年比で約2倍となる4兆2126億円に達する見通しで成長することが予測されている。市場拡大の背景には幾つかの理由がある。日本企業のIT投資はなぜプライベートクラウドに向かうのだろうか。
プライベートクラウドは企業が自社専用のクラウド環境を構築し、セキュリティや運用管理の柔軟性を確保できる点で人気を集めている。2023年の国内プライベートクラウド市場では従来のITシステムをクラウド環境へ移行するクラウドマイグレーションが拡大しており、2024年以降の国内プライベートクラウド市場ではクラウドマイグレーションだけでなく、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが挙げられている。
国内市場では過去資産(ソフトウェア、ITスキル)の継承性、運用管理性、専用環境といった特徴が評価されプライベートクラウドの導入が進んでいる。特に生成AI(Generative AI)の発展に伴い機密情報を扱うシステムや低遅延が求められる場面でプライベートクラウドの利用が一層増加するとされ、生成AIの普及によりこれまで概念が先行してきたソブリンクラウドが現実的な選択肢として浮上しハイブリッドクラウドとして発展すると予測している。
またエッジコンピューティングの成長も無視できない要素として取り上げられている。生成AIの推論処理など、リアルタイムでのデータ処理が求められる分野ではワークロードや用途によってエッジコンピューティングやプライベートクラウドが利用されるシナリオが増えていくと予想している。
IDCの発表によるとこれまでプライベートクラウドはサイロ型の導入が主流でクラウドネイティブ技術やAIの活用はパブリッククラウドと比較すると遅れが見られる。一方、企業のデジタルビジネスへの注力が高まることでプライベートクラウドも先進的な技術をサポートする方向に大きくシフトしているという。
IDC Japan Software & Servicesのリサーチディレクターである松本 聡氏は次のように述べている。
ベンダーは、Generative AIといった先駆的なテクノロジーに対応すると共に、デジタル主権を実現するソブリンクラウドを整備して、プライベートクラウドの新しい価値を提示する必要がある。
今回の発表はIDCが発行したレポート「国内プライベートクラウド市場予測、2024年〜2028 年」に詳細がまとめられている。2024年以降も国内プライベートクラウド市場の成長が予想されており、市場拡大が注目される。
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