複雑なデータ分析が求められる電力会社がデータ基盤を刷新。IaaS/PaaS事業の拡大も視野にデータ活用基盤を整備する。
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テプコシステムズが、自社のエネルギーマネジメントにおけるデータ活用基盤としてヒューレットパッカードエンタープライズ(HPE)の「HPE GreenLake」を採用した。HPEが2024年10月29日に発表した。
東京電力グループ傘下のテプコシステムズは、HPEのクラウドプラットフォームを使い、AIとデータ分析の力で安定した電力供給と新ビジネスの創出を図る。併せて生成AIやデータ分析を生かしたゼロカーボンの取り組みも進める。
東京電力は首都圏の約2900万人の消費者に電力を供給する電力会社だ。近年はスマートメーターの普及や電力需給調整の高度化に加え、発送電分離によって多様な送電事業者やサービス事業者とのパートナーシップも拡大している。加えて脱炭素を目指した自然エネルギーの活用も進む。顧客情報以外にも多様な情報を扱う同社にとって、データは極めて重要だ。
東京電力のサービス基盤を担うテプコシステムズは、ハイブリッド/マルチクラウド基盤として「HPE GreenLake」製品群を、データ分析基盤「TEPCO Data Hub」においては「HPE Ezmeral Software」(以降、Ezmeral)を採用した。
HPE GreenLakeはパブリッククラウドと同等のIT環境をプライベートクラウドで実現することをコンセプトとしたHPEのハードウェア/ソフトウェア群の総称だ。従量課金型で利用できるハードウェアとクラウドネイティブを指向したソフトウェア群を提供する。
このうち、Ezmeralは「データサイエンスと分析ワークロードのためのハイブリッドクラウドプラットフォーム」と説明される。具体的には、Kubernetesベースのコンテナアプリケーション実行基盤や、永続ストレージ機能を持つデータファブリック「HPE Ezmeral Data Fabric」、IT環境全体の監視やオペレーションを支援する「OpsRamp」の他、MLOps向けのソフトウェアなどが含まれる。
データ蓄積のプラットフォームであるTEPCO Data HubをHPE Ezmeral Softwareで構築することで、テプコシステムズの事業やグループ社員および顧客により創出される膨大なデータが生成AIを含むAIおよびデータ分析で利用できるとしている。
テプコシステムズの執行役員である中嶋好文氏は次のように述べている。
TEPCO Data Hub は、東京電力グループの強い意志とテプコシステムズの技術が融合したプロジェクトです。さらなる電力の安定供給やゼロカーボンエネルギー社会の実現をめざすというときに、そこには必ずITが必要だからです。HPEのITサステナビリティに対する意識は、東京電力グループがゼロカーボンエネルギー社会の実現をめざす中で親和性が高いことを重視しており、一体感のあるプロジェクトチームを作れたことを機に、新しい未来を切り開く旅を一緒に歩んでいただきたいと思います。
日本ヒューレット・パッカードの代表執行役員社長である望月弘一氏は次のように述べている。
テプコシステムズ様が強力に東京電力グループの一翼を担い、安定した電力供給を継続しながら、デジタル変革とゼロカーボンエネルギー社会の実現に取り組まれている中、HPEを選択いただいたことは大変な光栄です。HPEは、東京電力グループが進められている、DXへの取り組みに、ハイブリッドクラウド、データ、AIの力で変革を加速させる重要な役割の一端を担うことができることを誇りに、さらに貢献できるよう、支えてまいります。
テプコシステムズは2020年にコミュニティー型クラウドサービスとしてIaaS事業「TEPcube」を開始しており、現在新たにPaaS事業「TEPCO Data Hub on TEPcube」を立ち上げ、ゼロカーボンエネルギー社会に貢献するためのデータ活用基盤を提供している。TEPCO Data Hub on TEPcubeの中核はHPE Ezmeral Softwareが担い、ハイブリッドマルチクラウド環境でデータを活用したイノベーションに取り組むことができるようサポートしている。
TEPCO Data HubにHPE GreenLakeクラウドが採用されることで、HPEのフル管理によるエンドツーエンドソリューションとして利活用でき、柔軟性や消費分析を伴うモダンなクラウド体験が可能になるとしている。
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