生成AIで働き方はこう変わる ServiceNowイベントから見えた「わりとすぐに実現しそうな」未来予想図

生成AIをはじめとするAIの活用によってわれわれの働き方はどう変わるのか。ServiceNowが描くAI活用の展望とは。同社主催の「World Folum 2024」から見えた、「わりと近い将来に実現しそうな」働き方を紹介する。

» 2024年11月20日 08時00分 公開

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 「これから人間は、AIが進める仕事を管理、監督する役割を担うことになる」――。ServiceNowは自社主催イベント「World Folum 2024」(2024年10月15〜16日、東京)の記者発表会で、同社が提供する生成AI「Now Assist」やAIが近い将来の働き方にもたらす影響について同社の原 智宏氏(常務執行役員 COO《最高執行責任者》)は、こう語った。

新人が一気に「ベテラン並み」に? 生成AIで働き方はこう変わる

 ServiceNowは、業務プロセスに潜むボトルネックを解消して、業務プロセスの整流化・自動化を図るためのプラットフォーム「Now Platform」を提供している。同社は2023年、生成AIの機能群「Now Assist」をリリースし、同社のパーパスである「人にしかできない仕事に集中する」ための環境整備を進めてきた。

 ServiceNowは生成AIをはじめとするAIの役割について、どのように定義しているのだろうか。

 同社は、業務をエンドツーエンドでデジタル化し、業務データをNow Platformで取得することで業務を可視化する「デジタルワークフロー」を実現するとしている。「このデジタルワークフローにAIが組み込まれ、人をサポートする状態が生まれて初めてAIが業務に利する、インテリジェントな存在になると考えている」(原氏)

 原氏は、AIをNow Platformに組み込むことで、次のような技術要素がビジネス変革を実現すると語った。「これらの3つの技術要素を提供することで、AIを通じたさらなる業務の高度化、効率化をお届けしたい」

Now Platformに蓄積したデータの活用

 業務データを基に、滞留している業務や、業務を多く割り振られている従業員などが可視化される。業務のボトルネックを見付けて新たな変革につなげる

特定の領域に特化したAI搭載アプリケーションの提供

 Now Platformのプラットフォームに組み込まれているSaaSを利用した、特定の領域、あるいはユースケースに特化したAIモデルの提供

業務横断で利用可能な「Now Assist Skill Kit」

 エンドユーザーに対して、生成AIが業務を横断するサポートを提供

 生成AIをはじめとするAIによるサポートで、実際の業務はどう変わるのだろうか。原氏が説明したカスタマーセンター業務の例からは、業務経験の浅い従業員でも業務をスムーズに進めるための仕組みが浮かび上がった。

  1. チーフカスタマーオフィサーがダッシュボードを確認して、「問題が発生してから解決するまでにかかる時間が以前よりも長くなっていること」を発見する。プロセスオーナーに原因を分析するよう依頼する
  2. プロセスオーナーが、問題発生から解決にかかるまでの月次平均に関するグラフを生成AIに自動生成させる。出来上がったグラフをダッシュボードに掲載する
  3. 各オペレーターが問題発生から解決までにどのぐらいの時間をかけているかを示すグラフを、プロセスオーナーが作成する
  4. 2と3で作成した2つのグラフによって、「特定の時期に何らかの異変が起きたこと」「解決までにかかっている時間にオペレーターによってバラつきがあること」が分かる。処理方法が平準化されていないことが判明する
  5. 生成AIが解決を図るための情報を「ナレッジ」として生成する
  6. 「Playbook」機能によって、ナレッジに基づいた業務指示書が自動的に作成される

 なお、5で生成されるナレッジは、理想的な解決に至った過去の複数のケースを生成AIが参照して生成するという。

 原氏は、これまでベテラン従業員は業務をスムーズに進めるための手順を確立している一方で、業務経験の浅い従業員は業務を滞留させる傾向にあったと振り返りつつ、「ベテランのオペレーターが持つノウハウを業務手順としてその他のオペレーターに展開できる。オペレーターの経験やスキルに左右されずに業務が遂行できるようになる」と述べた。

 なお、AIの業務での活用に向けたServiceNowの取り組みについては、「ServiceNowの取り組みから探る AIを業務に活用するための「ワークフロー×AI」とはでも紹介している。

AI活用の業界別ソリューションとは?

 ここからは、特定の領域に特化したAI搭載アプリケーションを見てみよう。ServiceNowは2024年9月10日(現地時間)、AIを活用した業界別ソリューションを、Now Platformの最新版「Xanadu(ザナドゥ)」と併せて発表した。

 テレコム、メディア、テクノロジー、金融サービス、公共機関、小売などの業界別ソリューションとして拡充した新ソリューションの概要を紹介する。

テレコム、メディア、テクノロジー向けNow Assist

 通信業界のカスタマーサービスは、コスト高になりがちな傾向にあり、顧客離れや風評被害、生産性の低下などの問題が発生している。

 テレコム、メディア、テクノロジー向けNow Assistでは、エージェントがサービスの問題を理解し、迅速な問題解決や、カスタマーエクスペリエンスの向上を図る新機能を搭載している。カスタマーサービスで問題が発生した場合、生成AIを使って技術的な問題と検証結果を要約し、関係各所に展開して原因究明を促進することで、問題の早期解決を図る。報告書を要約することで、顧客に情報を提供するのと同時に、類似の問題が発生した際に対応できるように支援する。

金融サービス向けNow Assist

 生成AI機能により、銀行や保険会社の生産性向上や顧客のロイヤルティー強化を支援する。銀行業向けNow Assistでは、研修(オンボーディング)やサービス、オペレーション向けに生成AIを活用したソリューションを提供する。

 ServiceNowがVisaと共同で構築したクレジット決済に関する紛争要約機能「ServiceNow Disputes Management」によって、複雑なクレジットカード紛争案件の要約をエージェントに提供する。紛争の解決やカードサービスの再開を迅速化して、顧客満足度向上を図る。

保険業界向けNow Assist

 生成AIを活用した保険金請求の解決とサービス提供により、保険加入者のカスタマーエクスペリエンスと満足度向上を支援する。保険金請求業務に生成AIを使用し、背景情報を簡潔に担当者に伝える。対応時間を短縮し、顧客への繰り返しの質問を最小限に抑え、透明性が高く一貫性のあるデータによって、チームにおけるミス軽減を図る。

公共機関用デジタルサービス向けのNow Assist

 食糧支援や住宅、交通、医療などの重要な行政サービスに関連するさまざまな事案を、サービス提供に関わるすべての関係者が迅速に理解して対処できるようにする。

 公共機関の職員は、AIが生成した要約を通じて過去の履歴にアクセスし、関連情報に基づいて意思決定できるようにする。支援を必要としている住民や組織が必要なサポートをタイムリーに受けられるようになる。

小売業向けのNow Assist

 新機能の「Retail Operations」と「Retail Service Management」により、小売業のエコシステム(店舗従業員や店長、顧客、本社従業員、現場の技術者)を統合し、全てのチャネルと店舗に一貫性のある連続的なエクスペリエンスを提供する。

 Retail Operationsは、AIと自動化によってセルフサービスを向上させることで、現場のマネージャーや店舗従業員が、故障したPOSシステムの報告や開店・閉店チェックなど、日々の店内業務をシームレスに処理できるようにする。

 店舗従業員は、一つのインタフェースによって、ヘルプのリクエストからリクエストのステータス表示、タスクの完了まで完結するため、接客に多くの時間を割けるようになる。

 Retail Operationsは、ServiceNowの「フィールドサービス管理」(FSM)機能とシームレスに統合されており、現場の技術者がサポートリクエストにスムーズに対応できる。マネジャーは業務の割り当てや、店舗の業績・トレンドに関する情報にアクセスし、リーダー層とデータを共有できる。ServiceNowはこれによって「より賢明な意思決定が可能になる」としている。

 Retail Service Managementは、ServiceNowの「カスタマーサービス管理」(CSM)機能を小売業に提供するものだ。顧客が店舗またはオンラインでリクエストを送信できるようにする。本社チームが単一システムから顧客と店舗両方に支援し、課題を解決できるようにする。

 Now Platformに構築されたRetail OperationsとRetail Service Managementは、店舗と本社間の双方向コミュニケーションならびに可視化を実現し、従業員の生産性を高め、コストを削減し、顧客体験を向上するとしている。

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