生成AIで業務プロセスをどう改善する? 「Now Platform」の最新版「Washington, D.C.」は何が変わったのか(1/2 ページ)

生成AIをどう業務で利用するかの試行錯誤が続く中で、ServiceNowは「ユーザーは生成AIを使っているという意識を持つことなく、いつの間にか使っているという状況が実現する」と言う。どういうことか、見ていこう。

» 2024年04月09日 07時00分 公開
[田中広美ITmedia]

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 米ServiceNowの日本法人であるServiceNow Japanは2024年4月3日、業務アプリケーション開発基盤「Now Platform」の最新版「Washington,D.C.」について記者会見を開催した。

 記者会見ではServiceNow独自のLLM(大規模言語モデル)「Now Assist」をはじめとする生成AIを業務に組み込む取り組みや、Washington,D.C.でアップデートされた機能の紹介の他、同社が単一プラットフォームでの提供にこだわる理由が明かされた。

生成AIで業務プロセスをどう改善する?

 ServiceNow Japanの常務執行役員 COO(最高執行責任者)の原 智宏氏は、日本企業における生成AIの利用状況について「個々の従業員が手探りで利用している段階」との認識を示した後、Now Platformを通じて生成AIを利用した機能を提供する価値について以下のように話した。

 「生成AIを製品として提供するだけでなく、日々の業務にどう組み込むかについて提案すべきだろうという考えから、ユースケースを提供する。これによってエンドユーザーが取り組む業務を変革し、生産性向上につながる。ひいては、企業全体の変化への対応力の俊敏性を高める取り組みに資することになる」

図1 ユースケースにひも付いた生成AI機能で業務改善(出典:ServiceNow Japanの提供資料) 図1 ユースケースにひも付いた生成AI機能で業務改善(出典:ServiceNow Japanの提供資料)

 今回の記者会見では特に「エンドユーザー」が強調された。この理由について同氏は「エンドユーザーは従業員数全体に占める割合が高い。当社が進める『ヒューマンセントリックアプローチ』の一つとして、複数業務をこなすエンドユーザーを中心に考えて生成AIを組み込んでいく」と説明する。

 ITリテラシーにバラつきがあるエンドユーザーが生成AIを十分に使いこなすためにも、Now Platformを利用するメリットがあるというのが同社の主張だ。「Now Platformを利用することで、エンドユーザーが業務ごとに(生成AIの)利用方法を一から考えるのではなく、正しい管理形態の下、安全に使えるようになる。生成AIが利用するデータは適切に管理される。意図しない内容を生成したり業務に直接貢献しない情報を提示したりしないといったガイドラインも整備される」(原氏)

図2 幅広い業務領域を全社横断的にカバーするプラットフォーム(出典:ServiceNow Japanの提供資料) 図2 幅広い業務領域を全社横断的にカバーするプラットフォーム(出典:ServiceNow Japanの提供資料)

 エンドユーザー以外の従業員にとっても生成AIの活用による恩恵は大きい。コールセンター業務や社内ITサービス業務を担う部門向けには、自然言語やビジネス文脈を理解した検索機能を提供し、蓄積されたナレッジの参照、利用による効率化を提供する。開発部門向けには、新しいワークフローの提案や作成、運用者向けにはログ解析と対応策の提案による運用高度化を実現するとしている。

なぜ単一プラットフォームにこだわるのか?

 生成AIを十分に活用するためにはデータ整備が欠かせない。ServiceNowがNow Platformという単一のプラットフォームにこだわる理由について原氏は、「共通サービスデータモデル(CSDM)によるデータ管理」を挙げる。

「特にESGのような業務のエンドツーエンドでガバナンスをきかせることで初めて目標を実現できる領域においては、単一のデータモデルでカバーすることが重要だ」(原氏)

図3 ServiceNow+生成AIによる継続的な業務改善(出典:ServiceNow Japanの提供資料) 図3 ServiceNow+生成AIによる継続的な業務改善(出典:ServiceNow Japanの提供資料)

 ESGの他にはIT資産のマネジメント(アセットマネジメント)、セキュリティオペレーション、セキュリティインシデントレスポンスといった機能も、単一プラットフォームで収集したデータを二次利用することで実現していると述べた。

 プラットフォームはアプリケーションの稼働基盤として位置付けるだけではない。プラットフォームに実装されているデータモデル、データベースに蓄積されたデータを利用することで、プラットフォームに搭載されたアプリケーションが複数の業務を「掛け算」で効率化、最適化していく。

 単一プラットフォームとして提供することで部門横断的に生産性向上が進むこともメリットとしている。

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