ユーザー企業に聞いた、生成AI導入はいくらかかるのか?【実態調査】

Box Japanが「企業における生成AIの活用に関する意識調査」を発表した。企業が生成AI導入で重視する要素や、今後の活用推進のカギ、生成AIにかかる予算などが明らかになった。

» 2024年12月16日 08時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 Box Japanは2024年12月9日、「企業における生成AIの活用に関する意識調査」の結果を発表した。同調査は、生成AI導入企業の利用者や、導入関与者または運用管理者など1000人を対象に、2024年10月4日〜7日にインターネット調査として実施された。企業が生成AI導入で重視する要素や、今後の活用推進のカギ、生成AIにかかる予算などが明らかになった。

95%の運用担当者が生成AI活用に不安

 調査結果によると、生成AI導入企業の導入関与者・運用担当者の95.0%が生成AIの活用に何らかの課題や不安に感じていることが明らかになった。具体的な課題や不安として、最も多かった回答は、「社員が使いこなせるか」「機密情報や個人情報が見えてしまうのではないか」がそれぞれ36.5%を占め、AIサービスの活用によるリスクと社内浸透の両面で課題や不安を抱えていることが分かった。

生成AIの導入・管理における課題や不安(n=200、複数回答)(提供:Box Japan)

 これから生成AIを導入をする企業においても、94.7%の導入関与者が何らかの課題や不安を抱えており、導入済み企業と同じく、「社員が使いこなせるか」が32.8%と最も多く課題となっていた。

生成AIの利用検討における課題や不安(n=400、複数回答)(提供:Box Japan)

 一方、利用者では、生成AI活用に関して課題や不安を抱えていると回答した人の割合は74.0%だった。前述の「機密情報や個人情報が見えてしまうのではないか」は19.8%にとどまり、導入関与者・運用担当者の抱える課題と大きな差が出る結果となった。また、利用者が回答した最も多い課題点は「欲しい情報や回答が得られない」が31.8%だった。

利用者から見た生成AI利用の課題や不安(n=400、複数回答)(提供:Box Japan)

導入済み企業は機能面を、導入検討企業はセキュリティを重要視

 生成AIを導入済みの企業の導入関与者・運用担当者に、現在利用している生成AIをどのような理由で選択したか尋ねたところ、「システムの導入・運用が簡単だから」(38.0%)を飛ばす理由がなければ、追加できるよりもこちらを選んだ方がよいと思います。

利用中の生成AIを選択した理由(n=200、複数回答)(提供:Box Japan)

 一方、生成AIの導入を検討している企業の導入関与者に対して、生成AIの導入を決断する際に重視する点を尋ねると、45.8%が「セキュリティ面が確保されていること」と回答しており、セキュリティへの懸念が最も多く、他の回答より10ポイント以上高くなった。「利用できる機能の多さ」(27.0%)や「現在使用しているシステムに簡単に追加できること」(23.3%)といった利便性はそれほど重視されていない。Box Japanは、このことから、今後企業が生成AIの導入を検討する際には、セキュリティ面が最も重要な要素とされていることが分かるとしている。

生成AIの導入で重視する点(n=400、複数回答)(提供:Box Japan)

活用推進の鍵はユーザーのITリテラシー

 生成AIを導入している企業の利用者と導入関与者・運用担当者に今後の生成AIの活用意向を尋ねたところ、「活用していきたい」(56.3%)、「やや活用していきたい」(37.7%)の回答が上位に挙がり、計94.0%の回答者に活用意向があることが分かった。

今後も生成AIを活用していきたいか(n=600、単一回答)(提供:Box Japan)

 また、「活用していきたい」「やや活用していきたい」と回答した人に、今後の生成AIの活用に何が必要か尋ねたところ、利用者の53.7%が「高い回答精度」と回答したのに対し、導入関与者・運用担当者では「回答精度の向上」は34.4%にとどまり、「ユーザーのITリテラシーの向上」が37.6%、次いで「生成AIで利用するファイルの整理」が36.0%と最も多い結果となった。

利用者から見た、今後の生成AI活用に必要なもの(n=378、複数回答)(提供:Box Japan)
導入関与者・運用担当者から見た、今後の生成AI活用に必要なもの(n=186、複数回答)(提供:Box Japan)

 導入関与者・運用担当者は、生成AIの能力を引き出すために、IT環境の整備や利用者のITリテラシー向上など、利用者に起因する事柄を重要視している一方で、利用者はAIの回答の精度に目を向けていることが分かる。AIを活用するためには、利用者の使いやすさや満足度などのサービス面だけでなく、利用者のリテラシーの向上が今後の鍵となることが考えられるとBox Japanは分析する。

生成AI導入の予算は

 生成AIの導入を検討している企業の導入関与者に予算を尋ねたところ、21.0%の企業が月額2000円以上3000円未満と回答した。

導入検討企業における生成AIの導入予算(n=400、単一回答)(出典:Box Japan発表リリース)

 一方で、生成AIを導入している企業の導入関与者・運用担当者に、生成AIの導入に費やした金額を尋ねたところ、月額3000円以上4000円未満が20.5%と最も多い回答結果となり、導入検討時の予算と比べ、実際に導入した際の金額が高い傾向にあることが分かった。

導入済み企業における生成AIの導入予算(n=200、単一回答)(出典:Box Japan発表リリース)

全社的な導入企業が多く、社内反応もポジティブ

 生成AIを導入している企業の導入関与者・運用担当者に対して、生成AIサービスを導入したきっかけを尋ねたところ、最も多かった回答は「システム担当者からの要望」が43.0%、次いで「経営者の指示」が30.5%、「一般社員からの要望」が16.0%となり、生成AIサービスの導入については、社内全体から要望があることが分かった。

生成AIサービスを導入したきっかけ(n=200、単一回答)(出典:Box Japan発表リリース)

 また、生成AIを導入して業務で利用している、または導入が決定し利用する準備をしている企業の利用者もしくは運用管理者に、生成AIの利用状況について尋ねたところ、「全社で利用している(準備をしている)」が57.8%と最も多く、一部の部門に限らず全社的にAIを導入している企業が多いことが明らかになった。

生成AIの利用状況(n=752、単一回答)(出典:Box Japan発表リリース)

 生成AI導入後の社内の反応については、導入関与者・運用担当者の72.5%がポジティブな反応(「とても好評だった」(24.0%)、「好評だった」(58.5%)の合計)と回答し、実際に生成AIの活用に前向きな声が多いことが分かった。

生成AI導入後の社内の反応(n=200、単一回答)(出典:Box Japan発表リリース)

 Box Japanの浅見顕祐氏(プロダクトマーケティング部 エバンジェリスト)は、今回の調査結果について、「容易に使いこなせて、正確な情報を精度高く返してくれる生成AIに大きな期待が寄せられていることが読み取れる」としつつ、「一方で多くの人が、機密情報の過剰共有(オーバーシェアリング)をはじめとするセキュリティ面でのリスクを感じており、求められている『精度』には『正しいアクセス権限に基づく』という意味も含まれていることが分かる」と分析する。

 また、「実際の利用料金が想定予算よりも上回る傾向が見られることから、生成AIサービスを選定する際には自社の要件と利用料金のバランスの見極めが課題となることが予想される。さらに、生成AI活用には『ITリテラシー』や『プロンプトスキル』が必要という回答が多いことから、人間の仕事を省力化するためのAI活用のはずが、AIを使うことで逆に覚えなければならないことが増えてしまっているケースも少なくないことが想像できる」と指摘。「生成AIの高い精度を実現するためには、正しい情報を読ませるためにAIの情報源となるコンテンツの管理や、AIを実行する前のプロンプトへの情報付加(RAG)などの対応が非常に重要だ」と説明する。

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