NTTら数社がGPUの計算能力をリモートで供給する実験をスタートさせる。AI創薬の分野で利用が進むGPUリソースを、高速通信を使って遠隔から供給することで、リソース調達の負担を低減させる狙いだ。
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創薬や素材開発においてAIを活用する企業が増えている。一方で、AIを利用するに当たっては知的財産の保護やAI分析の実行環境の整備や投資が重い負担となっている。この問題を、遠隔からの計算リソース提供によって解消する試みが始まった。カギを握るのは遠隔データセンター間の通信だ。
三菱商事とNTT、NTTコミュニケーションズ、モルゲンロット、アイパークインスティチュートの5社は2025年2月17日、創薬業界向けにGPUリソースをリモートで提供する実証実験をスタートさせた。実証実験は湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)およびMCデジタル・リアルティ(MCDR)と協力して行われる。AI処理向けのコンピュータリソース調達の負担を低減させられる他、高速かつセキュアなAI処理が可能になるという。
共同実証は、神奈川県藤沢市にある湘南アイパークとMCDRが運営するNRT10データセンター(千葉県印西市)を、NTTの次世代ネットワーク技術「IOWN APN」で接続し、高速かつセキュアなAI分析を実現するGPU計算力のリモート提供を目的としている。
近年、製薬・創薬業界ではAIを活用した研究開発(AI創薬)が注目を集めている。AIを活用することで新薬の研究開発プロセスの効率化が期待される一方で、大規模な計算インフラの整備や研究データのセキュリティ確保が課題となっている。また、クラウドでAI処理を実行する場合、データ転送の遅延やセキュリティリスクが問題視されることが多い。
今回の実証ではNTTのIOWN APN技術による高速・低遅延ネットワークを利用し、遠隔地のデータセンターで高性能GPUを利用できる仕組みを構築する。これにより、研究データのセキュアな管理と高速なAI分析が可能となる。
今回の実証では主に次の項目について検証する。
今回の実証に当たっては、三菱商事がMCDRのデータセンターに「NVIDIA H100 GPU」を搭載したサーバーを導入する。さらにNVIDIAのAI創薬向けソフトウェア「BioNeMo」や「NVIDIA NIM」を活用し、創薬分野でのAI分析を支援する。
5社はこの実証を通じて、AI創薬分野における高速・低遅延な計算環境の有効性を確認する。将来的に他の産業領域への適用も視野に入れているという。
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