AIへの投資を優先する企業が増える中で、その弊害が浮き彫りになりつつある。2つの調査で明らかになった落とし穴とは。
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データ管理ソリューションを提供するSemarchyが2025年3月に発表したレポートによると、AIの導入と活用を優先する傾向が強まる中で、その弊害に悩む企業が増加しているという。
1050人の回答者を対象とした同調査で、ほぼ全てのビジネスリーダーが指摘した課題と、アナリストが指摘する「落とし穴」とは何か。
AIへの投資が優先される中でないがしろにされ、AIに関する目標の達成を妨げる要因がデータの品質とガバナンスの問題だ。
Semarchyの調査レポートによると、多くの企業がAI関連のデータ品質の課題に直面していることが判明した。企業の意思決定者はその主な原因として、データプライバシーとコンプライアンスの制約やデータの重複、非効率なデータ統合を挙げた。
回答したビジネスリーダーのうち、「2025年のAI目標は達成可能だ」と回答したのは半数以下にとどまった。多くの回答者は「データの問題がAIのアウトプットに対する信頼低下やプロジェクトの遅延、コスト増につながっていること」を認めた。
AIに課せられた期待を実現するためには、強固なデータ管理とガバナンスの枠組みが重要だ。
Semarchyのクレイグ・グラヴィーナ氏(CTO《最高技術責任者》)は「CIO Dive」への電子メールで、「多くの企業はこうした基盤となるデータの問題を解決しておらず、それがAI導入における大きなリスクとなっている。データの準備なくAIの野心を持つだけでは成功にはつながらない」と述べた。
グラヴィーナ氏によると、CIO(最高情報責任者)はこのプロセスにおいて重要な役割を担っているという。
「AI戦略を強化するために、ITリーダーは不完全、あるいは重複した情報ではなく、信頼できるクリーンで統合されたデータを優先すべきだ。また、CIOはガバナンスへの協力的アプローチを推進することも求められる」(グラヴィーナ氏)
AI導入に対する統一されたアプローチがなければ、企業は問題に直面する可能性がある。ソフトウェアベンダーのSoftServeが作成したレポートによると、リーダーの約4分の3が「データやアナリティクスの取り組みを犠牲にして生成AIへの投資を優先している」と指摘し、データ管理を巡る課題の原因として「優先順位付けやリソース配分が不十分であること」を挙げた(注1)。
企業は課題に直面しながらも技術への投資を優先的に進めており、ITリーダーには解決策を迅速に出すことが求められている。
「CIOは、AIがスケーラブルかつ安全であることを保証し、データ目標とビジネス目標が一致すると示すことで導入時のギャップを埋める立場にある」(グラヴィーナ氏)
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