今、話題のAIエージェントの活用が進む時代に、人の仕事はどうなっていくのか。AIエージェントと人との関係とは。セールスフォースの新サービスから、マーケティング業務を例に考察する。
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AIエージェントはこれからさまざまな業務に携わる人を支援し、それぞれの業務を効率化して生産性を向上させていく――。今、話題のAIエージェントについてはこうした触れ込みをよく耳にする。しかし、AIエージェントによって業務自動化が進めば、人は何をやるのか。AIエージェントはいずれそれぞれの業務で、この疑問を人に突き付けるだろう。ならば、人としてやることを今からよく考えておきたい。
かねてこうした問題意識を強く抱いていたところ、興味深い発表会見があったので、今回はその内容を紹介し、考察したい。
米Salesforceの日本法人セールスフォース・ジャパンは3月25日、マーケティング業務向けAIエージェント「Agentforce for Marketing」の日本市場での提供開始を発表した。この中で、同社の三戸 篤氏(専務執行役員 製品統括本部 統括本部長)が新サービスの説明の前に述べた「企業と顧客の関係」および「マーケターとAIエージェントの関係」の話が興味深かったので紹介したい。
三戸氏はまず企業と顧客の関係について、「市場環境の変化やテクノロジーの進化に伴って、企業と顧客の関係性は常に変化し続けている。ただ、変わらないことの一つに、顧客は企業に対して一度の取り引きだけでなく、末長くつながりたいという要望を抱いていることが挙げられる。しかし、マーケターは新規顧客の獲得に注力しがちだ。新規とともに、末長くつながりたいという顧客の要望に応えることも、マーケターはもっと力を入れていく必要がある」と述べた。
そのためにどうマーケティングすべきか。同氏は次のように説明した(図1)。
「このグラフは、縦軸を顧客生涯価値、横軸を顧客との関係フェーズとして、マーケティングの段階による変化を示したものだ。赤線の動きが示すように、マーケティングとしては初期段階の認知およびコンバージョンに注力しがちで、顧客との関係フェーズが進むにつれて、エンゲージメントやロイヤルティー、支持を得るといった顧客との深い関係性を築いていくところが手薄になる。その結果、顧客も企業とのつながりが希薄になり、顧客生涯価値が下がってしまうと。マーケティングとしてこういうことがよく起こりがちだと認識している」
どうすれば、そうした事態を解消できるのか。同氏は次のように述べた(図2)。
「マーケターとしては、顧客との関係フェーズにおいて初期段階の認知やコンバージョンだけでなく、エンゲージメントやロイヤルティー、支持を得るところまでしっかりと対応することで、顧客生涯価値を高めることにも力を入れるのが非常に重要だ」
その上で、三戸氏は次のように語った。
「ただ、マーケターにとって、顧客との関係フェーズの全てに対応するというのは『言うは易し行うが難し』だ。なぜかというと、マーケティング部門のリソースが限られている中で、こなさなければならない業務はどんどん増えるし、社内のさまざまな部門との連携も広がるからだ。そうした工数が膨らむ一方、顧客の期待は一層高まっていく。関係が深まれば深まるほど、顧客はパーソナライズされたサービスをいつでも受けたいと望むようになる。このように、マーケティングのリソースと顧客の期待の間にギャップが生まれることが、結果的には企業の成長の大きな妨げになるのではないかと考えている」
同社はこうした背景から、マーケターとAIエージェントの関係について突き詰めていることが見て取れる。
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