新リース会計基準への対応で、多くの企業が着目していないものの影響が大きくなりかねないのが「貸手リースの影響」です。多くの企業が「借手」に注目する中、「ダークホース」として影響が大きくなる可能性があります。
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2024年の9月13日に「新リース会計基準」の確定版が発表されました。本連載では、確定した最新の基準にのっとって「何が変わるのか」の基礎から紹介した上で、「Microsoft Excel」で対応できる/できない企業の特徴や、システム検討の考え方についても解説していきます。
2024年9月に公表された新リース会計基準(以下、新リース基準)。原則全てのリース契約についてオンバランス計上が義務付けられ、リース会計処理の前提が大きく変わります。多くの企業がまだ着目していないものの、影響が大きくなりかねない「貸手リースの影響」について今回は考察していきます。
新リース会計では、借手のリース契約が原則全てオンバランス化されることが決まりました。一方で、「貸手」の処理に対する影響は多くのメディアでも「限定的」と言われていることもあり、実際に対応精査を後回しにしている企業がほとんどかと思います。
しかし、徐々に各企業での会計方針の検討が進むにつれて、貸手処理のうち「サブリース(※1)」に該当するものは「ファイナンスリース」として判定され、処理を大きく見直さなければいけない場合が増えているように思います。
※1: 自社が借りた物件を他社に貸し出す契約。
理由はサブリースの場合の「原資産認識」の変更です。例えば、「耐用年数50年のビルを5年契約で借りて、退去することにしたので4年分は他に貸す」というケースを考えてみましょう。
今までは「50年中4年だけ貸している」という判定だったので、まずフルペイアウト(※2)の要件に該当せず、収益を単純に仕訳計上すれば問題ありませんでした。一方で新リース会計では、サブリースの際の原資産は「使用権資産」となるため、この場合「5年分の4年貸している」となり、80%を超えるのでフルペイアウトと判断されてしまいます。
こうしたケースは意外と存在しており、多くの企業が「借手」に注目する中、「ダークホース」として影響が大きくなる可能性があります。
※2 リース会計の区分基準の一つ。物件にかかわるコストを借手が実質的に全て負担することを指し、年数の75%基準や金額の80%基準などがある。
では、サブリースの場合はどのような会計処理が求められるのでしょうか。影響の大きい内容を仕訳の形で解説します。
「リース投資資産」などの勘定を立てた上で、毎月資産分の取崩と、受取利息の認識を分けて実施する必要が生じます。
サブリースをファイナンスリースとして認識し、リース投資資産を計上する際には、相手勘定として借手の使用権資産を貸方に計上し、使用権資産を「消滅」させる必要があります。
また、借手の使用権資産と貸手のリース投資資産は同額とは限らないため、差額分は損益勘定として計上する必要もあります。使用権資産の消滅に従い、「借手」側でも償却を停止するなど会計処理にも影響が出ます。
「2」と一体の話になりますが、貸手契約が解約された場合は使用権資産が復活し、償却も再開することになります。借手と一体で業務フロー検討が必要なのがポイントになります。
こうした処理が求められるサブリースの会計処理ですが、影響が発生するかどうかは企業の業種や業態によって異なります。特に現在影響が出る可能性が高いのは、下記のような企業かと思います。
不動産事業者の中でも、一括借上と貸し出しをしているような事業者が該当します。アパートなどの一括借上と入居者への貸し出しをしている場合や、ショッピングモールの不動産を借り上げてテナントに貸し出しているようなデベロッパーでは、影響が特に大きくなるでしょう。
住宅建設自体ではサブリースは発生しませんが、付随する事業としてアパートの借上と貸し出しや商業施設開発を手掛けているケースが多く、影響度の高い企業として挙がりやすいと言えます。
業種を問わず、ホールディングスや本社が借りた物件を子会社、グループ会社に転貸している場合も、サブリースとして取り扱いが求められるケースがあります。特に鉄道業など、グループ内にある程度独立した不動産事業者を抱えるようなケースでは影響が大きくなりやすい傾向があります。
このように、影響が大きくなる可能性がある企業では、複雑性の高い会計処理が求められます。システム検討においても、不動産事業者を中心に借手のみならず貸手・サブリースの対応を含んだシステムを検討するケースが増えています。
当社ワークスアプリケーションズでは、こうした状況を踏まえ、新リース会計対応のシステム「HUE Asset」にて貸手・サブリース機能の追加を発表しております。不動産事業者様をはじめ、サブリースの対応にご不安のある場合はお問い合わせください。
次回はより実務的な論点に移り、「どのような業務フローによって情報を収集し、処理を進めるのが適切なのか」について、実例を交えて説明します。
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