なぜ今「情シス応援」なのか? Japan IT Weekの新たな動きを追う

Japan IT Week 春を取材した際、特に目を引いたのが「情シス応援パビリオン」だ。参加者には多くの情シスが含まれているにもかかわらず、あえて「情シス」と銘打つ理由とは。

» 2025年05月21日 07時00分 公開

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 2025年4月23〜25日に東京ビッグサイトで開催された「Japan IT Week 春」を取材した際、特に目を引いたのが会場の一角に設けられた特別展示「情シス応援パビリオン」だ。

 情シス応援パビリオンは、29社のベンダーによるミニブースと、その隣に設置された情シス向けの「悩み相談所」、専用ラウンジ(「情シスのたまり場」)と、情シス応援のセミナー会場が一体となったスペースだ。

 Japan IT Weekは、IT製品を中心にした企業間のビジネスマッチングや情報収集の場であるため、主たるターゲットはもちろん情報システム部の担当者(情シス)だ。それにもかかわらず、あえて展示スペースに「情シス」と銘打つのはなぜだろうか。その経緯を主催者に聞いた。

情シス応援のセミナー会場(筆者撮影、以下同)

IT製品だけでは解決できない情シスの課題に寄り添う

五木田 梓氏

 IT Weekを主催するRX Japan シニアエキスパート(国内企画営業担当)の五木田 梓氏は、次のように語る。

 「当社のITイベントではこれまで、情シス向けのツールに関して『情報セキュリティEXPO』などのテーマで、20年以上展示やカンファレンスを実施してきました。次の企画として、セキュリティだけでなく情シスの業務を幅広く支援するためのテーマとして、ITアウトソーシングを考えていたのですが、その際に『情シスSlack』というコミュニティーの存在を知りました」

 情シス向け企画を検討していた2024年秋に五木田氏は、情シスSlackの主催者であり、日本ビジネステクノロジー協会代表の岡村慎太郎氏と連絡をとり、意見交換を始めた。その過程で、「ソリューションよりも情シスそのものを支援する企画がよい」という結論に至った。すぐに企画は動き出し、2025年1月のJapan IT Week(大阪開催)で「情シス応援パビリオン」を開催することが決まった。

 「2024年11月から準備をはじめ、年が明けて2025年1月は実働1週間という短期間で開催にこぎつけました。私たちがこだわったのは、やる以上はブースを設けて、人がコミュニケーションできる場を作ることでした。そのため企業の出展は無料として、情シスの方が気軽に会場を訪れて、出展社の方と語ることができる場を作ることを目指しました」

 出展社に企画の趣旨を説明してミニブースへの出展を募ったところ、短期間にもかかわらず25社ほどの参加表明が得られた。通常のブース展示と同時に情シス応援パビリオンへの展示をする企業だけでなく、単独での出展企業もあった。また、イベントに参加した情シスメンバーが意見交換をするための交流会を開催することも決めた。

 「情シス支援の企画を考えるとき、当社の情シスメンバーにも意見を聞きました。すると、幾つかのメニューの中で交流会への興味が非常に強かったのです。『他社の情シスの方も自分と同じような悩みを持っているはずだが話す機会はほとんどないので、交流会は大賛成』ということでした」

 こうして小さな企画として大阪ではじまった情シス応援パビリオンは、交流会を含めて想定以上の盛り上がりを見せて終わった。

企業の大小を問わず情シスの悩みを共有できる場を目指す

専用ラウンジへの案内

 大阪での成功を受け、今回の東京会場では、情シス応援パビリオンをさらにパワーアップした内容で開催した。

 出展社は29社に拡大した。好評だった交流会も引き続き開催した。会場の横に「情シスのたまり場」というラウンジも設置。気軽に情シス担当者同士が交流できる場を用意した。

 ミニブースに展示していた、ある企業は「SaaSを管理するためのSaaSを提供しているが、通常の展示ブースとは別にこのパビリオンにもブースを構えた。当社ではユーザーである情シス部門と伴走する支援をしており、情シスのニーズが直接拾えると思った」と話した。

情シス向けの「悩み相談所」

 さらに東京会場では、「情シスの悩み相談所」も設置した。これは特定のITソリューションについての相談ではなく、情シスの仕事に関する悩み全般を、同じ情シス部門に所属する相談員が聞いてくれるというもの。商談が中心のJapan IT Weekとしてはかなりユニークな企画だ。相談員は、情シスSlackの1万名を超えるネットワークから支援を受け、3日間の会期中、延べ10人ほどが稼働したという。

 「開催初日の朝10時、すぐに相談があったそうです。またこの相談所の受付のところには、『あなたの会社で使っているクラウドストレージは何ですか』というシールアンケートも実施して、参加型イベントとして盛り上げていました」(五木田氏)

 それ以外にも、立ち寄った情シスの人が悩みを書き込んで掲示する「情シスのぼやき(木)」もあり、「入社した社員に急いでアカウント設定をしたのに、すぐに辞めてしまいがっかり」といった書き込みがあったという。ぼやきの内容は併設して開催された「Japan IT Weekカンファレンス」の講演で活用された。

 今回、情シス応援パビリオンが大きなテーマとして掲げていたのが、「情シスの重要性を経営者が理解する」であった。上述したカンファレンスのタイトルでもあり、社内での情シスの存在を認識し、地位を向上させることが情シスの仕事を円滑に進めるための第一歩という思いからだ。こうしたイベントの開催が、情シスへの関心をさらに高めることにつながるはずだ。

 情シス応援パビリオンに参加しているのは、少人数で多くの業務に追われている中堅・中小企業の情シス担当者が多いようにも見えたが、五木田氏によると、そうとは限らないという。「大企業で情シスの組織が大きくても、各人の業務は分業化されており、課題や悩みも人それぞれです」。情シス応援パビリオンは、幅広い企業の情シスが情報交換し、悩みを共有できる場所として活用されていたようだ。

2025年秋から「情シス応援EXPO」として開催が決定

 Japan IT Weekの情シス応援パビリオンは、今回の東京開催、5月の名古屋開催の会場では出展無料で設置されている。その後10月の千葉・幕張メッセ開催「Japan IT Week 秋」から、「情シス応援EXPO」として、正規の展示会として開催が決定した。

 「情シスの業務は非常に幅広く、これまでのイベントに出展いただいていた企業も、情シス応援EXPOというものができるなら、そちらへの切り替えを検討しようという動きも見られます」(五木田氏)

 これまで縁の下の力持ちだった情シスに光を当て、その業務を支援する展示会が本格始動した。五木田氏は、「展示会の価値は、たくさんのブースが並び、参加いただくお客さま同士のつながりが増えていくことにあります。これからも参加者の声を聞き、情シス応援をテーマにした展示会を成長させていきたいと考えています」と、今後に意欲を見せた。

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