Workdayでは、人間(従業員)の労働力を「ヒューマンワークフォース」、AIエージェントの労働力を「デジタルワークフォース」と呼ぶ。ASORはその両方を一元管理しようというものだ。
ワダ氏はASORにおいて人事管理の観点から、「ライフサイクルマネジメント」「ワークフォースの最適化」「ガバナンスとコンプライアンス」の3つの取り組みが重要になると説いた(図5)。
「ライフサイクルマネジメントでは、人間と同様にエージェントのオンボーディングやオフボーディングをどのように実施するか、特定のエージェントがいつどこで必要になるかといった点がポイントになる。ワークフォースの最適化においても人間とエージェントの違いはない。労働力の重複を避け、ROI(投資対効果)を注視する必要がある。ガバナンスとコンプライアンスでは、地域それぞれの規制や法律を順守することが求められる。ASORはこれら全てに対応するソリューションとなる」(ワダ氏)(図6)
同社はさらに、ASORのエコシステムの構築に注力する構えだ。
ASORのエコシステムには、図7に示すように3層に分かれたカテゴリーがある。上層部の「エージェントエコシステム」は、同社および顧客、サートパーティが開発したAIエージェントが対象となる。中層部の「エージェントゲートウェイ」は、AIエージェント間の通信やオーケストレーションのためのインタフェースを提供する。そして下層部が、ASORの管理機能を示している。
この中で注目すべきなのは、中層部のエージェントゲートウェイだ。この部分が外部のベンダーを含めて多種多様なAIエージェントとつながり、ASORでそれらを一元管理するという構図になっている。
なお、ASORは2025年後半から利用できるようになる予定だ。
上記のようなエコシステムの広がりを目指すASORは、先に述べたようにWorkdayが最新のソリューションとして表現している「人財や財務、エージェントを管理するAIプラットフォーム」そのものだ。つまり、ASORはこれまでのWorkdayプラットフォームの進化形を示しているのである。
ワダ氏は、「ASORは人間の能力を高度化し、業務の生産性を向上させるAIプラットフォームだ」とも述べた。
ASORはまさしくWorkdayならではの取り組みといえるだろう。多種多様なAIエージェントの管理や活用には、人事管理の発想や知恵が不可欠なのではないか。企業がそれに取り組むには、IT部門と人事部門の密接な連携が必要となる。むしろ人事部門がIT部門の協力を得てこの動きをリードし、経営トップはこれをテコにして経営改革を進めるシナリオを描いてみてはどうか。Workdayの取り組みから、そう感じた。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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