DXのカギを握るIT部門 役割変化と外部依存の現状が浮き彫りに

Gartnerは日本企業のDXへの取り組みについて調査結果を発表した。7割以上の企業がDXに取り組んでおり、IT部門が主導する取り組みが目立つという。

» 2025年06月11日 07時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

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 ガートナージャパン(以下、Gartner)は2025年6月9日、日本企業におけるDXの取り組みとソーシング動向に関する調査結果を発表した。同調査はGartnerが2025年3月に国内企業でIT調達に関わる担当者を対象に実施したものだ。

IT部門の役割変化と外部依存の現状

 GartnerはDXを「デジタル技術(AI、IoT、アナリティクスなど)やデータを活用し、製品/サービス、ビジネスモデルの最適化や変革を推進・実現すること」と定義した上で、8つの目的別の取り組み状況と、その主体となる組織について尋ねた。

 調査結果によると「全ての目的においてDXの取り組みがある」と回答した企業の割合は7割を超え、DXが企業にとって一般的な活動となっていることが示された。特に既存ビジネスの効率化や強化に加え、新たなビジネス創出を目的とした取り組みが広がっている。

 Gartnerの中尾晃政氏(リサーチ&アドバイザリ部門 ディレクターアドバイザリ)は次のように述べた。

 「今回の結果で注目すべき点は、どの取り組みにおいても、IT部門が主導している企業の割合は一定数あり、中でも『既存ビジネスのコスト削減やオペレーションの効率化』や『既存/新規ビジネスを支えるデータやITインフラ等の基盤の整備』については、IT部門主導の割合が顕著に高い結果となったことです。一方、他の目的では、取り組みを進める主導組織の多様化傾向が見られますが、Gartnerへの問い合わせなども踏まえると、こうした取り組みにおいても、側方支援としてのIT部門の役割が欠かせなくなっているとみています」

 IT部門の役割にも変化が見られる。現在、IT部門が最も注力しているのは「既存ビジネスを支えるシステムの開発や運用・保守」およびその「持続的な改善、効率化」であり、全体の62%を占めた。一方で、「DXへの間接的/直接的な貢献」を現在重視している企業は29%にとどまる。しかし、今後注力したい業務については「DXへの間接的/直接的貢献」と回答している企業が29%から45%に拡大している。

 同調査では、IT業務の内製化状況について、6つの領域で調査がされた。大部分を内製化できているとした企業の回答率が最も高いのはIT戦略やシステム導入の企画立案で38%だった。その他の領域では、システム開発・運用やセキュリティ管理、ヘルプデスク業務なども含め、完全に内製で対応できている企業は少数にとどまり、外部リソースへの依存が続いている状況が分かった。

 中尾氏は日本のIT部門において、人材不足の中で拡大するDXに対してIT部門がどう対応するかが課題だと指摘する。IT部門やベンダーだけで全業務に対応するのは難しく、ITリーダーは「DX時代」に適した体制や外部委託の在り方を見直す必要があるとしている。

 さらにソーシング戦略の策定に当たっては「ビジネス目標に基づいてIT部門の役割を明確にし、社内外のステークホルダーを巻き込みながら、外部リソースの活用方針を決定することが重要」と強調した。生成AIなど新たなテクノロジーやサービスの選択肢を検討するとともに、ベンダーや人材、サービスの管理能力の強化も求められていると指摘した。

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