Oracleは、LLMとOracle Databaseを連携させる「SQLcl MCP Server」を発表した。MCP対応によってAIがSQL実行や情報抽出を行えるようになり、開発者の作業を支援する。
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Oracleは2025年7月17日(現地時間)、大規模言語モデル(LLM)との連携を可能にする「SQLcl MCP Server」を発表した。Model Context Protocol(MCP)に対応した任意のAIアシスタントが、「Oracle Database」(以下、Oracle DB)と直接やりとりできるようになる。
MCPは2024年11月にAnthropicが公開したプロトコルであり、LLMが外部データソースやAPIと直接接続するための標準手段として注目されてきた。従来、アプリケーション側が文脈情報を補完する設計が主流であったが、MCPの登場によってこの負担が軽減される。OracleはこのMCPを自社の開発者用ツール群に統合し、「Oracle SQLcl」を通じてMCPサーバとしての機能を提供する。
Oracle SQLclは、「Visual Studio Code」(以下、VS Code)の「SQL Developer Extension」にも含まれるコマンドラインツールであり、今回の対応によって、AIアシスタントがSQLやPL/SQLスクリプトを実行できる環境を提供する。SQLcl MCP Serverは、クライアントマシンの資格情報を管理し、安全な接続を実現する。
MCPサーバを介したLLMからのデータベースアクセスには、最小権限のユーザーアカウントを用いることが推奨されている。操作ログはDBTOOLS$MCP_LOGテーブルに記録され、セッション情報はV$SESSIONビューのMODULEおよびACTIONカラムに明示される。
利用例として、開発者がAIアシスタントに対してOracle DBの情報を調査させたケースが紹介されている。AIはユーザーの許可のもと、データディクショナリーを参照してテーブル構造を確認し、実際のデータを抽出、分析できる。ドキュメントが不十分なプロジェクトにおいても、AIが支援する形で迅速にデータの抽出が可能だ。
SQLcl MCP Serverは、接続の一覧表示、SQLの実行といったMCPツールをLLMに提供しており、MCP対応アシスタントであれば、VS Codeに限らず任意の開発環境で利用できる。これによって、AIが生成したSQLをユーザーが手動で実行するのではなく、AIが直接データベースと対話し、結果を基に次のアクションを決定するような自律的なワークフローも実現できる。
SQLclにはこれまでも、データインポートとエクスポート(Data Pump)、可用性管理(Data Guard)、パフォーマンス診断(AWR)など、多くの機能が実装されており、今後もMCPサーバ経由でLLMが利用できるツールが毎月追加される予定だ。
SQLcl MCP Serverの導入は、VS CodeでのSQL Developer Extensionを通じて容易に行える。ユーザー名やパスワード、接続先のサーバ情報を入力するだけで接続定義が完了し、MCPサーバが自動的に認識される。
Oracleは無料で利用できる「Oracle Database 23ai Free」も提供しており、開発者はこれを利用してすぐにMCPを試せる。ビジネスユーザーにとっても、有用な情報を即時に取得できる手段として、SQLcl MCP Serverの活用が期待される。Oracleは今後もAIとの連携を強化しつつ、データベース技術の安全性と操作性を両立させる方針を示している。
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