「東京都AI戦略」策定 AIを都政の中核技術に：AIニュースピックアップ

東京都はAI戦略を策定し、都政全体でAIを活用して行政サービスの質向上と生産性向上を目指す方針を示した。生成AIなどの先端技術を導入し、透明性や安全性に配慮しつつ、大学や企業との連携により人材育成と社会実装を推進する。

[後藤大地，有限会社オングス]

　東京都は2025年7月25日、「東京都AI戦略」を策定したと発表した。本戦略は、AIによって都民サービスの質を高め、業務の生産性を向上させるための基本的な考え方と取り組みの方向性を示すものとされている。

東京都のAI戦略、持続可能な都市への挑戦

　この戦略は、「2050東京戦略」で掲げる都市像の実現のために、AIを中核技術の一つと位置付けている。行政課題の多様化・複雑化や労働力不足といった社会構造の変化に対応するため、生成AIを含む先進的なAI技術を積極的に導入し、都市の持続的成長を図るとしている。

　戦略は以下2つの視点に基づいて構成されている。

　第一の視点は、都政におけるAI活用だ。都民サービスや内部業務などのあらゆる行政領域において、AIを政策実現の手段として位置付け、住民の利便性や生活の質を高めることを目指す。また人間中心のアプローチを基本とし、透明性や公平性、安全性、プライバシー、セキュリティなどの観点から、リスク管理にも配慮した運用を実施する。

都政におけるAI活用イメージ（出典：東京都AI戦略 概要版）

　多様な主体との連携によるAIの活用促進を第二の視点としている。大学や研究機関、民間企業との協働により、AI人材の育成やAIネイティブなエコシステムの形成を推進する。中小企業における技術活用支援や、スタートアップとの連携強化、環境配慮を含めたデータセンター整備の検討なども盛り込まれている。AIリテラシーの向上を目的とした教育現場での活用促進や、社会人へのスキル学習機会の提供も進める。これにより、幅広い層のAI人材を育成し、社会全体におけるAI活用の基盤を強化する。

　東京都は全庁的な推進体制を整備し、政策、財務、技術の各面から各局の取り組みを支援する。CIO（最高情報責任者）補佐官制度の活用や、共通ツール・生成AIプラットフォームの提供により、行政全体でのAI導入を促進させる。東京都は本戦略の実行を通じて多様化・複雑化する行政課題や労働力不足に対応し、持続可能な都市運営の実現を図る考えを示している。