調査によると、73%の企業がDXに取り組む一方で、デジタル人材の確保が大きな障壁になっている。その根底には採用プロセスの構造的な問題がありそうだ。
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人材不足でデジタル化やDX推進ができない、となげく企業は多い。デジタル人材を採用できない理由は応募者が足りないからだと思われがちだが、実は受け入れ企業側の採用プロセスに原因があるかもしれない。人事担当者を対象とした調査からは、企業側の「グダグダ」な状況が明らかになった。
エン・ジャパンは2025年8月25日、「企業のDX実態とデジタル人材不足」に関するアンケートの調査結果を公開した。164社の人事担当者を対象とした本調査では、全体の73%の企業がDXに取り組んでいると回答した一方、58%の企業がデジタル人材の不足を訴えている。
DXにおける具体的施策としては「文書の電子化・ペーパーレス化」が多く、続いて「営業活動・会議のオンライン化」「クラウドサービスの活用」が主要な項目として挙げられている。業界間には温度差があり、メーカーでは92%が積極的なのに対し、流通・小売業では60%にとどまるなど、導入状況に顕著な差が見られた。
DX推進の成果として、多くの企業が業務効率化とコスト削減を実感している。78%が業務自動化や効率化を達成したとし、66%が生産性向上を実感したと報告されている。ある小売企業は配達表をアプリに統合することで誤配防止と注文管理の精度向上を実現した。また、あるIT企業はDXの取り組みを起点に顧客DX支援サービスを開始するなど、新たな事業展開にもつながっている。
DXに取り組んでいない企業も存在し、その理由としては人材不足が挙げられている。38%の企業が「推進に必要な人材がいない」と回答し、同率で「企業文化の壁を課題」とする声もあった。また、35%の企業が社内エンジニアの不足を問題視している。株主の理解を得られず導入を中止されている事例や、ネットワーク環境の整備が遅れている事例もある。これらの課題は単純なリソース不足にとどまらず、経営層の認識やインフラ整備、意思決定構造など、複数の要因が絡み合う構造的な問題として表面化している。
デジタル人材の不足は調査結果の中でも顕著な課題として浮かび上がった。58%の企業が不足を訴えており、特にビジネスアーキテクトや業務効率化を担う人材の需要が高い。確保手段としては中途採用が49%、社内育成が41%で選ばれており、採用と教育を組み合わせる企業が多い状況だ。しかし、即戦力となる人材の採用は競争が激しい状況が指摘されている。社外コンサルタントや外部人材の活用を選択する企業も存在し、採用戦略の多様化が進んでいる。
デジタル人材の確保を阻む要因としては、採用プロセスの問題が挙げられている。同調査資料では、求人応募者のスキル評価基準が定まらず、採用活動が停滞するというある大手サービス企業の例が報告されている。また、情報システム専門部署が存在しない別のある企業では、採用後の業務分掌さえ決められない状況が見られた例もあるという。こうした企業において、経験者に複数の役割を兼務させる体制に頼らざるを得ず、結果的に負荷が集中し、長期的なDX推進の継続性が損なわれやすいという課題がある。
今回の調査は、DXへの取り組みが進む中でデジタル人材不足が依然として企業の大きな課題になっていることを示している。成果を上げる企業は既存業務の効率化にとどまらず、新しい事業やサービスを創出しているが、人材不足や体制面の問題を抱える企業との差は広がる傾向にある。競争環境の中で企業が持続的に成長するためには、採用戦略の最適化だけでなく、経営層と現場の認識共有、教育体制の整備、社外リソースとの連携など複数の視点からアプローチする必要があるだろう。
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