OpenTextのマネージドサービスプロバイダー(MSP)に関する調査によると、中小企業へのAIツール導入を「支援できる」と回答した事業者は約半数にとどまったという。AI需要に対応できていない現状が明らかになっている。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
OpenTextは2025年10月2日、同社のサイバーセキュリティ部門が実施した「Global Managed Security Survey(第3回)」の結果を発表した。調査は米国や英国、カナダにおけるマネージドサービスプロバイダー(MSP)の経営幹部、マネジャー、セキュリティ専門家、顧客関係管理職(CRM)担当者を対象にしており、1019人から有効回答を得た。
調査によると、AIがMSPにとって成長の機会を提供していることが示されているが、その需要に十分対応できていないという課題が浮き彫りとなった。回答者の92%がAIの活用によって事業拡大を経験しており、96%が2025年も成長を見込んでいる。
しかし「中小規模の企業顧客にAIツール導入を支援できる」と回答したMSPは全体の半数程度にとどまった。2024年の調査では90%がAI関連セキュリティニーズに対応可能と答えていたため、1年間で準備状況が大きく後退したことになる。
AI活用実態を見ると、MSPの67%がカスタマーサポートでAIを利用しており、66%が技術サポートやチケットのトリアージに、58%が脅威の検知と対応にAIを導入している。AIに関する専門知識は、脅威防止や24時間体制のサポートに続き、中小企業にサービスを提供するMSPにとって3番目に重視される要素となっている。しかし、中小企業の顧客を対象としたAIサイバーセキュリティエージェントを導入または構築しているMSPは半数未満であり、実際の導入は限定的だ。
中小企業側の状況については、コスト削減を主要課題とする割合が2023年の28%から2025年には17%に減少している。代わりに求められているのは導入の容易さで、調査ではMSPの78%が統合の容易さを「非常に重要」と位置付けている。価格を最重要視した回答はわずか8%で、44%がセキュリティの堅牢(けんろう)性を購入決定の最大要因に挙げている。中小企業顧客の71%は、予防・検知・対応を含むバンドル型セキュリティパッケージを支持しており、エンドポイントやネットワーク、電子メールを組み合わせたパッケージを好む割合は45%であった。
サービスの拡大もMSPの関心事項となっている。95%が今後1年間でサービス提供範囲を広げる計画を持ち、そのうち57%は新サービス開発を積極的に進めている。新サービスの優先事項としては、ツール間の統合(38%)、コアサービスとの高い接続性(18%)、中小企業のさまざまな業種に対応できる適用性(16%)が挙げられている。新規顧客獲得の経路については、紹介が32%と多く、次いでオンライン検索やデジタル広告が29%、テクノロジーマーケットプレースが25%となった。
AIの成長余地が大きい一方で、導入支援や標準化といった現場の課題に対応しきれていないMSPの現状が調査によって明らかにされている。需要と準備のギャップは拡大傾向にあり、特に中小企業へのサイバーセキュリティ支援の在り方が問われていることが明確となった。
アサヒグループHD、サイバー攻撃で国内業務停止 情報漏えいは否定
「OS標準の無料アンチウイルス機能で十分」には条件がある
「脆弱性を見つけたらどうする?」 FeliCa問題が投げかけた情報開示のあるべき姿
「フリーライドにはもう耐えられない」 OSSコミュニティーが怒りの提言?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.