SAP ECC 6.0保守期限を前に「現実的代替案」の検討が増加か【SAPユーザー意識調査2025】

電通総研は独自調査「SAPユーザー意識調査結果2025年度版」を公表した。2018年から毎年継続して実施されており、SAPのERPを導入する企業の動向や意識、課題の把握を目的とする。SAP ECC 6.0ユーザーの間で「現実的代替案」の検討が広がっている様子が分かる。

» 2025年12月19日 07時00分 公開
[後藤大地ITmedia]

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 電通総研は2025年12月17日、国内企業を対象とした独自調査「SAPユーザー意識調査結果2025年度版」を公表した。本調査はSAPのERPを利用している国内295社を対象に、「SAP S/4HANA」の利用状況や最新の移行トレンドを整理したものだ。

 2027年末に迫る「SAP ECC 6.0」の保守期限を見据え、企業の意識がこれまでの移行を中心とした選択から、コストや運用効率を鑑みた「現実的な代替案の比較検討」へと広がりを見せている実態が明らかになった。

国内295社を対象に実施、3年間の時系列分析で動向を可視化

 本調査は2018年から毎年継続して実施されており、SAPのERPを導入する企業の動向や意識、課題の把握を目的としている。2025年度版では2023〜2025年までの3年間を対象とした時系列分析を加え、利用状況の変化を示している。調査期間は2025年9月9日〜10月31日で、電通総研のマーケティング部門による電話調査、メール配信によるWebアンケート、郵送による回答を組み合わせて実施した。

 調査結果によると、SAP S/4HANAを利用している企業の比率は前年調査から5.7ポイント増加し、44.1%となった。2023年度は27.5%、2024年度は38.4%であり、3年間で16.6ポイント増加した。SAP ECC 6.0の利用比率は同期間で低下している。

 SAP ECC 6.0を利用している企業が想定するSAP S/4HANAへの移行方法では「ストレートコンバージョン方式」や「選択データ移行方式を含むコンバージョン方式」を挙げた回答が最多となった。また、リビルド方式を想定する企業の割合が10.5%となり、過去2年と比べて上昇した。

 第三者保守への移行については、2024年度の14.0%に対し、2025年度は20.4%と5ポイント以上増えている。また、SAP S/4HANA以外のERP導入を選択肢とする回答も増えている。2023年度は1.6%、2024年度は4.5%、2025年度は9.3%と推移しており、保守期限を意識した現実的な代替案の検討が進んでいる様子がうかがえる。

SAP ECC 6.0導入企業が想定している移行パターン(提供:電通総研)

 既にSAP S/4HANAを利用している企業の導入、移行方式を見ると、SAP ECCからのストレートコンバージョン(ブラウンフィールド方式の一種)が47.6%を占めた。新規導入は34.9%であり、ストレートコンバージョンが上回る。

 ライセンス形態に関する設問ではSAP ECC 6.0利用企業が移行後に想定する形態として、「SAP Cloud ERP Private」や「SAP Cloud ERP」(SAP S/4HANA Cloud Public Edition)といったクラウド型ERPを挙げる割合が前年より増加した。SAP S/4HANA利用企業が現在使用しているライセンス形態についても、クラウド型ERPの比率が上昇しており、2025年度は前年より16ポイント増えている。

※製品呼称の変更に伴い、「RISE with SAP」は「SAP Cloud ERP Private」とし、「GROW with SAP」は「SAP Cloud ERP」(SAP S/4HANA Cloud Public Edition)へ置き換えて集計している。

 費用面においては、SAP S/4HANAを新規導入した企業を除いた移行費用について、「5億円以上」と回答した企業が全体の半数を超えた。「10億円以上」とする回答が26.0%、「5億円以上10億円未満」が24.7%となっている。

 今後に取り組みたいテーマについては、SAP ECC 6.0利用企業、SAP S/4HANA利用企業の双方で「AI活用」が最多の回答となった。経営データの分析効率化やローコード開発ツールの活用も多く挙げられている。SAP S/4HANA利用企業では「テスト自動化」を選択した割合が31.0%に達し、運用効率化への関心が示された。

 電通総研は1995年からSAP関連ソリューションの提供を開始し、SAP製ERPの導入や更新、関連プロジェクトに多数関与してきた実績を持つ。今回の調査結果は、国内企業におけるSAP ERP利用の現状を示す資料として位置付けられている。

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