Anthropicは中堅企業へのAI導入を支援する新会社設立や、金融特化型エージェントを発表した。Microsoft 365連携に加え、SpaceXとの提携による計算資源確保も公表。インフラと業務の両面からClaudeの普及を進める。
Anthropicは2026年5月上旬、AI導入支援や金融特化型エージェント、計算資源拡充を軸とした発表をした。Blackstone、Hellman & Friedman、Goldman Sachsと新会社を立ち上げ、中堅企業へClaude導入支援を広げる計画を示した他、金融サービス業務用エージェント群や「Microsoft 365」連携も公開した。また、SpaceXとの契約締結を通じ、大規模計算資源確保と利用枠増強も示している。
今回の発表は、AIの「導入ハードル引き下げ」「実務への深度」「実行基盤の安定」を同時に進める狙いがある。
新会社は業種横断で中堅規模企業へ「Claude」導入を支援する。AnthropicのAI技術者が新会社の技術部門と協働し、導入効果が高い顧客業務を探り、各社専用システムを構築する。運用後も長期支援を続ける計画とされ、General Atlantic、Leonard Green、Apollo Global Management、GIC、Sequoia Capitalも資金面で加わる。
大企業のClaude導入案件はAccentureやDeloitte、PwCなどがを担ってきた。新会社設立により、地域医療機関や地域銀行、中堅製造企業など、社内技術人材が不足しやすい組織へ支援範囲を広げる狙いだ。
医療分野の事例も示した。複数拠点を抱える診療グループでは医師や看護師が文書作成や医療コード整理、認可申請、法令確認へ長時間を費やす状況がある。新会社は現場職員やIT部門と協働し、既存業務へ組み込みやすいツール群を整備する。医療従事者が患者対応へ割ける時間拡大を狙う。
金融分野では十種類のエージェントひな型を公開した。提案資料作成やKYC審査、月末決算処理など、負荷が大きい業務へ適用する設計となっている。「Claude Cowork」「Claude Code」用プラグインとして利用できる他、「Claude Managed Agents」用クックブック形態でも提供する。
調査や顧客対応分野では提案資料作成支援や会議準備、決算確認、財務モデル構築、市場調査支援などを担う機能を並べた。経理や運用分野では評価確認や総勘定元帳照合、月末締め処理、財務諸表監査、KYC審査支援などを含む。
Claudeは「Microsoft Excel」(以下、Excel)、「Microsoft PowerPoint」(以下、PowerPoint)、「Microsoft Word」(以下、Word)と連携可能になった。「Microsoft Outlook」連携機能も近く加わる。Excel内で財務モデル作成や数式監査、感応度分析を担い、PowerPointでは数値更新へ連動した資料作成を支援する。Wordでは社内書式へ沿った文書編集を担う。
Anthropicは、複数アプリ間で文脈情報を保持できる点も訴求した。Excelで始めた作業内容をPowerPointへ移す際、再説明を省ける。Claude Cowork内ではDispatch機能も利用可能であり、利用者が離席中でもローカルファイル処理継続を支援する。
金融データ連携も広げた。FactSet、S&P Capital IQ、MSCI、PitchBook、Morningstar、Chronograph、LSEG、Daloopaなど既存連携先へ加え、新規接続先としてDun & Bradstreet、Fiscal AI、Financial Modeling Prep、Guidepoint、IBISWorld、SS&C IntraLinks、Third Bridge、Veriskを追加した。Moody’sは独自信用格付け情報を扱うMCPアプリを公開した。
Anthropicは、Claude Opus 4.7が金融関連評価指標「Vals AI Finance Agent benchmark」で64.37%を記録した点も示した。銀行や資産運用会社、保険会社などで利用範囲拡大が進む状況も紹介した。
計算資源分野ではSpaceXとの契約締結を発表した。SpaceXのデータセンター「Colossus 1」にある計算資源全量を利用可能とし、300MW超、22万台超のNVIDIA GPUへ接続できる体制を整える。Claude Pro、Claude Max利用者の安定した利用枠の確保へ充当する。
Anthropicは、Claude Code利用枠増強も発表した。Pro、Max、Team、Enterprise各契約で5時間単位利用枠を2倍へ拡大した他、ProとMax契約では混雑時間帯の制限縮小措置を廃止した。API利用枠も引き上げ、Claude Opus系モデルでは入出力トークン上限を拡張した。
同社は既存大型契約群も列挙した。Amazonとは最大5GW規模契約を結び、2026年末までに約1GW追加供給を受ける計画だ。GoogleとBroadcomとは2027年稼働開始予定の5GW契約を締結済みであり、MicrosoftとNVIDIAとは300億ドル規模Azure供給契約も抱える。Fluidstack関連では500億ドル規模AI基盤投資も掲げる。
AI計算基盤は「AWS Trainium」「Google TPU」「NVIDIA GPU」など複数系統を採用する。SpaceXとは将来、軌道上AI計算基盤開発でも協業意欲を示した。
海外展開にも触れた。金融、医療、政府分野顧客では各地域内で処理基盤運用を求める声が増えている。Amazon連携内では欧州やアジア地域で推論基盤増設も含まれる。Anthropicは民主主義国家内で法制度や供給網安定性を確認した上で計算基盤増強をする姿勢を示した。
米国内データセンター運営で生じる電気料金上昇分負担方針もあらためて説明した。海外展開先でも同様制度導入可能性を探る他、施設受け入れ地域へ投資還元を行う考えも示した。
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