AIスキルで賃金「62%上乗せ」 10億件の求人を分析して判明した格差【PwC調査】IT調査ピックアップ

PwCは世界10億件超の求人を分析した報告書を発表した。AIスキルを持つ人材の賃金上乗せ率が62%に達した一方、労働市場は専門性の有無で二極化が進むと指摘。今後は若年層にも判断力といった上級職の技能が求められるという。

» 2026年06月23日 07時00分 公開
[ITmedia]

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 PwCは2026年6月15日(現地時間)、AIが世界の労働市場を再編し、人間ならではの技能への評価を高めるとの分析をまとめた報告書「2026 Global AI Jobs Barometer」を発表した。

 同報告書は、六大陸で公開された10億件超の求人広告を分析したものだ。AIは単に雇用を削減するだけでなく、職種そのものの性質を変化させ、企業の成長力や賃金、労働生産性の格差を広げる要因になったと位置付けた。

AI技能求人が69%増、賃金上乗せは62%

 報告書が強調したのは、AIによる労働市場の二極化だ。PwCは、AIが専門家の力を増幅する職種を「professionalised」(専門特化型職務)な職務、AIによって非専門家でも担いやすくなる職種を「democratised」(一般化職務)な職務と分類した。前者は定型業務が自動化され、人間の判断力や創造性、リーダーシップ、専門知識の価値が高まる。

 専門特化型職務において、求人の伸びが一般化職務の2倍に達し、給与の伸びも42%高かった。AIは一部の仕事を置き換えるだけではなく、専門人材が担う仕事の生産性を引き上げ、企業が求める技能を変化させる存在として描かれた。専門特化型職務の例には放射線科医や採用担当者が挙げられた。一方、AIによって職務そのものの難度が下がる一般化職務としては、ITサービス管理者や医療秘書などが例示された。

 PwCのグローバル最高AI責任者であるジョー・アトキンソン氏は「AIによる価値創出モデルに新たな分岐が生じ始めた」と述べ、AIを自動化だけに使う企業よりも、人間の専門性を増幅し、革新を速め、新たな価値の源泉を生む企業の方が、生産性と成長で先行していると指摘した。

 企業間の差も鮮明だ。AIの影響を強く受ける業種の企業は、2018年を基準とした2025年の生産性成長率が34%に達し、AIの影響を受けにくい企業の24%を大きく上回った。AI関連度の高い企業の中でも、上位20%の企業は労働生産性を平均163%伸ばした。これはAI関連度の高い企業全体と比べても約5倍の水準だ。報告書は、この現象を「勝ち組企業」(super-star)の効果として示した。

 雇用面でも、AI関連度の高い企業が人員を減らすといった単純な見方とは異なる結果が示された。2018年を基準にした2025年の人員増加率は、AI関連度の高い企業で52%、AI関連度の低い企業で36%だった。賃金成長でも差が出た。AIの導入が進む企業での賃金伸び率は24%で、AIとの関連性が低い企業の17%を上回った。

 AI技能を求める求人の伸びも大きい。プロンプトエンジニアリングや機械学習など、特定のAI技能を求める求人は69%増となり、求人市場全体の9%増を大きく上回った。AI関連求人の数は2024年のほぼ2倍となり、2015年以降、AI関連求人の伸びは全求人の伸びを上回り続けた。AI技能を持つ人材への平均賃金上乗せ率は62%に達し、前年の57%から上昇した。業種別において、消費者市場などで118%まで上がる例があり、政府・公共部門では16%だった。

 AI関連求人のシェアは、テクノロジー・メディア・通信で11%、プロフェッショナルサービスで6%と高かった。医療分野は1%未満で低位にとどまった。報告書は、AI技能の需要が産業全体で均一に広がるのではなく、業種ごとに異なる速度で浸透すると示した。

 若手人材への影響も焦点となった。米国のエントリーレベル求人240万件を分析した結果、AIの影響を受けやすい入門職において、従来は上級職に求められた判断力やリーダーシップ、創造性、対面でのやりとりなどの技能を求める割合が、AI影響度の低い入門職の7倍に達した。こうした「seniorised」された入門職の求人は2019年以降35%増えた。他の入門職は10%減少した。

 PwCのグローバルワークフォースリーダーであるピート・ブラウン氏は、経験と専門性による従来型の関係が変わりつつあると述べた。AIは、かつて若手が見習い段階で担った定型業務の一部を取り除き、キャリアの早い段階から判断力やリーダーシップ、適応力を求める環境を生む。人材を育てる仕組みを見直さなければ、組織は新たな環境で人材を活躍させにくくなるとの見方を示した。

 報告書全体を通じ、PwCはAIを雇用削減の道具としてではなく、企業や職務、人材育成の構造を変える要因として位置付けた。AIを人間の専門性と結び付けた企業は、生産性や雇用、賃金の各面で優位に立つ。労働者側において、AI技能そのものに加え、判断力や創造性、リーダーシップなどの人間的技能が賃金と雇用機会を左右する要素になりつつある。

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