Java業界で特に広がりを見せたサービス指向アーキテクチャ(SOA)。ベンダー各社がいろいろな観点でSOAを語る中、BEAはWebLogic Platformを中心に現実的な構築手法を掲げている。豊富な機能と信頼性を誇るWebLogicブランドは、基幹システムとの連携を容易にするESB(Enterprise Service Bus)を実装し、2005年大きな変革を見せるという。

 SOA(Service Oriented Architecture)を早期から掲げていた日本BEAシステムズ(以下、BEA)。サービス指向アーキテクチャのITシステム基盤としてのWebLogic Platform製品群、オープンソースとなったApache Beehive Project、コードネームQuicksilver(BEAのESB)など、2005年の展望について、代表取締役へと新たに就任されたアリイ氏に聞いた。

オープンソースプロジェクトはすそ野を広げるために

ITmedia 2004年、BEAはどのように推移したのでしょうか。

アリイ 2004年、BEAはミッションクリティカルなシステムで売上を伸ばしました。従来システムからの拡張や追加といったケースが多く、この点でのオープンソースの直接の影響はほとんどありませんでした。ローエンドでの裾野を広げるという意味でオープンソース製品の普及は歓迎しています。


代表取締役に就任されたアリイ ヒロシ氏。国籍は米国だが、育ちは日本であることからも、国内市場への探求が鋭い

 2004年、Java業界では「SOA」(サービス指向アーキテクチャ)が大きなキーワードとなりましたが、BEAでは特に、「再利用」がポイントだと考えています。このような背景でBEAが取り組んだApache Beehive Project(以下、Beehive)は、「再利用」コンポーネントをオープンソース化することにより、Javaのすそ野を広げることが目的です。無料で入手可能なことから、J2EEマーケットそのものが広がればよいと考えたプロジェクトです。また、Beehiveで扱う実体はJavaコントロールとなりますが、SOAを支えるべく再利用コンポーネントの標準化を狙っています。Beehiveは、既にTomcat上で稼動していますし、特にWebLogic Platformだけで動くといった限定もなく、開発ツールのEclipseでもプラグインを介して利用することが可能です。

ITmedia SOAの定義がベンダーごとに異なる点に、新規ユーザーはまだ戸惑があると思います。見解を聞かせてください。

アリイ 現在、SOA実現のために具体的なプロダクトを用意しているのは、BEAだけです。早い時期からBEA WebLogic Platformを提供し、EA(Enterprise Architecture)のようにビジネスモデルとしてではなく、実現可能なものとして展開してきました。また、SOAは単なるコンセプトではない、という点を強調すべきと考えています。BEAでは、SOA実現のためのコンサルティングも行っていますが、先日米国からコンサル来日の際には、5日間で14社を訪問しました。時間的制約から1社2時間程度だったのですが、各社一様に「これがほしかった」という反応であり、顧客のSOAに対する期待が大きいことが確認できました。これは、経営、ビジネス面とIT投資、理想とのギャップをどうやって埋めるかがSOAのテーマでもあることを意味しています。また、SOAを捉える上では、どのような観点で語るかも重要でしょう。各ベンダーの見解が異なっていたとしても、ビジネスの変化に合わせて迅速かつ柔軟なシステム構築をすることが目的であることでは一致しています。

 現在のITシステムは、システムが売上に直結するため、柔軟かつ迅速に必要なサービスを提供できることが必要で、そのためには、逆説的ですが、できるだけシステムを作り込まないこと、要は「再利用」がキーワードなのです。SOAの観点からは、できるだけ共有のサービスを作り、それを組み立てることによりアプリケーションを実現するということで、このことからも再利用可能なJavaコントロールが重要視されるわけです。

標準化サポートでは競争力とならない

ITmedia BEA の標準化への取り組みはどうですか?

アリイ BEAは、創業以来、標準化に深くコミットし続けています。一方で、標準化はどちらかというと地味な領域で実現までに長い時間がかかります。BPELJなどBEAは活発な取り組みもありますが、標準化の段階ではかなりの時間を要してしまうので、Beehiveのようにオープンソース化することにより事実上の標準化を目指すことも併せて行っています。

ITmedia 2005年に登場予定の製品は?

アリイ SOA基盤として、コードネームQuicksilver(ESB)がBEA WebLogicの次期バージョンに組み込まれる予定ですが、2005年中に発表ができると思います。SOAを語る場合、ESBが1つの重要な要素となりますが、J2EE(Java)も単体のアプリケーションサーバから統合プラットフォームとして選択する段階に移行しつつあります。ビジネスの変化に迅速かつ柔軟に対応するために、どのような開発インフラを持てばよいのか、ということが問われています。

 また、SOAはレガシーシステムを活かすというアプローチであるため、段階的に実現できるので、EAと比べて、SOAの方が比較的取り組みやすいといえます。

ITmedia Javaそのものの動向についてどのように見ていますか。

アリイ 弊社のプライベートカンファレンスであるeWorldや開発者のコミュニティであるdev2devの活動を見る限り、開発者は着実に増えていますね。最近は、.NETとの連携も問われていますが、Javaはミッションクリティカルシステムで採用されることが多いので、棲み分けがハッキリしているといえるでしょう。それから、「オープンであること」が競争力となることを、エンドユーザも開発者も一様に理解してきています。.NETが実現しようとしていることはJavaと同じですが、オープンな標準でないため複数のベンダーが製品を提供しているわけではなく、選択肢がないのはJavaと最も異なる点だといえます。

ITmedia JCPにおける標準化スピードが昨今のJ2EE情勢に追いついていないように感じます。Javaベンダーへの影響をどのように捉えていますか。

アリイ 標準化には制定までに2〜3年程度要するため、現在あるものをどう取り組むかがJavaベンダーの競争力となっています。もちろん共有化すべきところは広く公開していきたいと考えています。その一環としてBeehiveを立ち上げたわけです。Beehiveについて、なぜ、標準化委員会にかけなかったのか? と聞かれることがあります。この回答は正に、期間の優先度から、リリースを早めることが先決だと判断したからです。

ITmedia BEAが取り組む今後は?

アリイ 2005年はアプリサーバについて15%の成長を見込み、SOAのマーケットでWebLogicを標準プラットフォームとして確立したいと思います。これまで以上にパートナー企業と密接な連携をし、お互いのビジネスを伸ばしていきたいと思います。また、オープンな環境で唯一の大規模トランザクション処理が可能なTuxedoのプロダクトにも力を入れていきたいと考えています。

リラックスして温泉に行く予定ですが、ハワイにも2日間程度出かける予定です。それから、家族とおせち料理を食べたりしてゆっくりと過ごしたいですね。

[ITmedia]

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