東京大学、3万人が使うメールシステムを刷新 情シスの「所有」を選択:信頼性でクラウドに勝るか
東京大学情報基盤センターは、3万人が使うメールシステムを刷新した。メールサーバとWebメールの機能を統合したソリューションを使い、大学で情報システムを運用するシステムを構築した。
東京大学情報基盤センターは、3万人規模が使う電子メールシステムを刷新した。Webメールとメールサーバを統合したソフトウェアを採用し、外部にNASを接続する構成を取った。分散していた電子メールのアプライアンスサーバの台数を減らし、運用管理の向上につなげる。メールシステムを提供したディープソフトが3月24日に発表した。
東京大学が採用したのは、Webメールとメールサーバを統合したディープソフトの「MailSuite」と呼ぶソフトウェア。大規模なメールシステムの運用管理に長けた「DEEPMail」に、スパムメールを遮断する「SPAMBlock」という製品を統合したものだ。
メールシステムの構築には、Linuxに対応したNEC製の「Expressサーバ」4台、「iStorage NV7400」1台を採用。複数のLinuxサーバ上で、待機サーバを用意せずに複数のサーバでアプリケーションを実行するアクティブ−アクティブ構成で稼働させる。電子メールのデータ保存には、ネットワークに接続し、ファイル共有サービスなどを提供するNASを使う。Webメール/スパムメール対策の機能、メールサーバを1つのシステムに統合したことで、各部門の運用不可を軽減できるようにした。
従来は、海外製品のアプライアンス型メールサーバ25台を並列稼働させ、内蔵されたストレージにデータを保存していた。各メールサーバが単一で稼働していたため、障害が起こると対処しにくかった。また、ウイルスやスパムメール対策として、メールサーバやWebメールの機能を別々に運用しており、管理が煩雑になっていた。
採用の決め手は運用管理の負荷を軽減でき、カスタマイズがしやすかったこと。情報基盤センター情報メディア教育研究部門助教の丸山一貴博士は「従来のシステムでは、障害解析と報告、修復に1カ月が必要だった。新システムではその日に修復できたものもあった」と発表文内でコメントしている。教育機関での採用実績が豊富で、学内ネットワークを理解した製品開発をしており、「機能の追加といったカスタマイズも迅速に実現できた」(同)。
東京大学情報基盤センターは、超高性能計算/キャンパスネットワーク/情報メディア教育/図書館電子化に関連するサービスを、学内の利用者に提供している。同センターは1990年代の後半からメールシステムの構築に着手しており、1999年にはUNIX OSで稼働するメールサーバソフトウェアを使ったメール環境、2004年にアプライアンス型のメールサーバを並列稼働させるシステムを構築してきた。
日本大学や立教大学など、ネットワーク経由でWebメールのシステムや機能を拡充する「クラウド型のサービス」を採用する大学が増えている。ディープソフトは「東京大学は、保有する個人情報を外部に預けることやサービス障害、電子メールの遅延などの不安から、具体的なクラウドサービスを検討していなかった」と話す。ここ数カ月、Googleのクラウド型サービスで障害が発生し、ユーザーがWebメールなどの機能を使えなくなっていた。企業が情報システムに何を求めるかによって、クラウド型サービスの採用の是非が分かれそうだ。
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