新人エンジニアは積極的に言い訳をしよう:現場を変える「地雷一掃力」(3/3 ページ)
「申し訳ありません。わたしのミスです」――。新人エンジニアのこんな言葉を聞く季節がやってきた。だが、新人はその特権を生かして堂々と言い訳をしてほしい。言い訳は、組織に埋まっている「地雷」を一掃する力になるからだ。
新人の「地雷一掃力」に期待しよう
新人を受け持つ側は、新人のミスは職場に散在するリスクを掘り起こして可視化してくれるありがたい存在だと考えてみよう。だから新人はたくさんミスをしてもいい。そのかわり、ミスをした場合はどのようにして自分が地雷を踏んだのかを、ありのまま正直に説明する義務がある。依頼の意味が分からなかったのか、単純にキーを押し間違えたのか、先輩の指示が誤っていたのをかばったのか――。これらを正直に率直に話さなければいけない。新人が地雷を踏んだパターンを確認することで、現場に埋まっている地雷を一掃できる。
例を1つ挙げよう。米国では飛行機が墜落すると国家運輸安全委員会(NTSB)が調査を実施する。この体制が素晴らしいのは、NTSBが集めた証拠は訴訟に使用できないと定められている点にある。仮に、NTSBの調査に正直に協力したことで訴えられる可能性があれば、関係者は懲罰を恐れて事実を隠すかもしれない。証言の委縮を防ぎ、事故の本質を明らかにして再発防止を徹底するために、NTSBは「言い訳をしても叱られない仕組み」を作った。
新人のエンジニアが「無知がばれると恥ずかしい」とか「評価を下げられるのでは」と考えて正直な言い訳をしないことは、せっかく見つけた地雷を埋め戻すような行為に等しい。同種のミスの再発を防止するためには、多少かっこ悪くてもミスした理由を正直に言い訳すればいい。
とはいえ、新人エンジニアを取り囲む環境は優しいところばかりではない。「言い訳をするな」とか「エンジニアに向いてない」などパワハラまがいの叱責を受けることもあるだろう。しかし新人といえどもエンジニアはエンジニアである。自分の論理に従って真の原因だと思うことを主張し、間違ったところを直すことに全身の情熱を燃やすべきだ。
エンジニアとして仕事をしていく中で、顧客や他社の技術者などのさまざまな人と意見を戦わせる機会があるだろう。エンジニアは営業担当者ではない。技術や自身の信念に沿って主張するときは退いてはならない。だから「確かにEnterキーを押したのは自分だが、悪いのは先輩の指示だ」と思うのであれば堂々と主張すべきである。これにより、先輩が過ちを自覚して改めることで来年の新人が救われるかもしれないし、自分の側の間違いに気付くかもしれない。エンジニアは言い訳を通して大きく成長できる。
何年かして自分が後輩や部下を抱える立場になった時には、このことを思い出してみてほしい。新人の言い訳に耳を傾けることで、自分が無意識に避けてきた隠れたリスクを見つけ出すことができるだろう。
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