インテル、次世代担う新製品を発表――クラウド時代に向けて:製品トレンド
インテルが4月6日に発表した新製品、「インテルXeonプロセッサ5500番台」(Nehalem-EP)はクラウドコンピューティング、省電力の時代に対応し、仮想化のメリットを最大限に活用できるテクノロジーを搭載しているという。
戦闘機と旅客機とグライダーの機能
Nehalem-EPは、15年前にインテルがサーバ市場向けに開発したPentium Proプロセッサ以来、大幅に機能拡張した新製品。同社が独自にテストした結果では、インテルXeonプロセッサ5400番台をプラットフォームとした2wayサーバ/ワークステーションとの比較で60%〜150%増のパフォーマンスを示しているという。
「戦闘機の機動性、旅客機の輸送能力、グライダーのエネルギー効率を兼ね備えた飛行機を開発することは不可能だが、シリコンの世界ではそれが可能だ」インテルコーポレーションの上席副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長のパット・ゲルシンガー氏はNehalem-EPの性能についてそんなたとえ話で説明する。
Nehalem-EPは自律的な省電力機能を持ち、プロセッサ、チップセット、メモリで構成されるプラットフォームすべてにわたって電力管理を行う。負荷の少ない時には消費電力レベルを低減させ、同等の消費電力レベルで約2倍の性能を実現している。
また、仮想化技術を使ってリソースを最適化する際に発生する負荷の低減を実現しており、指定された仮想マシンに専用のI/Oデバイスを割り当てることでデータ転送の高速化と性能のオーバーヘッド削減を支援する機能を持っている。
Nehalem-EPを搭載した2wayサーバは最大8個の演算エンジンを持ち、最大16スレッドの並列処理が可能となる。これによって前世代プロセッサの3.5倍の帯域幅が提供され、アプリケーション性能を最大4倍にまで高めるという。また今回開発された「インテル ターボ・ブースト・テクノロジー」によって必要に応じてコアの動作周波数を引き上げることが可能だ。これは、すべてのコアを常に等分に使うのではなく、必要に応じて、熱設計電力に余裕があれば各コアを定格以上の周波数で動作させる技術。一部のコアにターボをかけることで、効率的な高速動作を可能にさせる。
「今後、サーバ市場は現状の2倍以上の規模に拡大するだろう。ますますサーバのTCOに対する要求は高まるはずだ。Nehalem-EPはそうした時代の要求に応える製品だ。現在日本で運用されているサーバの40%はシングルコア。当社の算定ではこれらをNehalem-EPを搭載したサーバに更新する費用は約8カ月で回収できる」とゲルシンガー氏は語り、クラウドコンピューティングの時代に対応していることを強調した。
インテルによると、184台のシングルコア Xeonプロセッサ搭載サーバを21台のNehalem-EP搭載サーバに更新することができ、この場合8カ月で投資回収が可能で、年間電力コストを92%削減できるとのことだ。また、性能を重視して同じ台数の184台のNehalem-EP搭載サーバに更新した場合、最大9倍のパフォーマンスを実現し、電力コストは18%削減できるという。
インテル日本法人の吉田和正社長は、ユーザーに向けたメッセージで次のように述べた。
「効率的にITインフラを構築、運用しながら、パフォーマンスを向上させビジネス上の競争力を高める課題を担っているユーザーにとって、Nehalem-EPはその課題を克服する大きな力となるはずだ。厳しい経済環境の中で、ビジネスの変革は待ったなしの状況となっているが、Nehalem-EPはその変革を大きく前進させることは、ユーザーにも十分に理解されると思う」
今回の席上では、組み込み機器向けの製品も発表されており、厳しい環境下で利用される機器でも高いパフォーマンスを実現し、通信、医療分野などで将来開発される新技術にも対応する体制についても言及された。
標準的なエンタープライズサーバから、高性能サーバ、ワークステーション、組み込み機器向けと高度化が求められているITインフラを支える主要な分野を網羅する今回の発表は、各ITベンダーからユーザーまで幅広く注目された。仮想化の取り組みにも大きく影響することは明らかで、「プライベートクラウド」と呼ばれる独自のクラウドコンピューティングの体制確立を急ぐユーザーにとっては、Nehalem-EP搭載製品をどのタイミングでどのように取り入れるかがポイントになるだろう。
関連キーワード
サーバ | Intel | Nehalem | Xeon | 次世代 | クラウドコンピューティング | 仮想化 | ワークステーション | ブレードサーバ | 電力効率 | 組み込み | インフラストラクチャ | サーバ市場 | エンタープライズサーバ | Pentium | プライベートクラウド
関連記事
- 性能と電力効率の狭間で努力するインテル
インテルは同社の取り組みを記者向けに説明するブリーフィングを開催した。2008年は45nmプロセス技術などにより電力効率の向上と性能の両立を意識する。 - デルのDNAが組み込まれた第11世代サーバ
デルが先陣を切ってNehalem EP(Xeon 5500番台)搭載サーバを発売したが、組み込まれたのはインテルの新しいプロセッサだけではない。「11G」サーバには、徹底した「標準化」というDNAがしっかりと組み込まれている。 - デル、インテル次世代Xeonプロセッサ搭載サーバ、ワークステーションを発表
デルは、厳しい経済環境下で企業の効率化を推し進める、14種類の製品群とサービスを発表した。 - 日立、ブレードサーバの新モデルを発表――保証期間を2年間延長
日立は3月10日、同社のブレードサーバ製品に新モデルの追加および機能強化をすると発表。開発コード名「Nehalem」として知られるインテルの次世代Xeonプロセッサを搭載し、保証期間も従来の5年間から7年間へと延長される。出荷は4月1日から。 - Intel、Nehalemプロセッサを段階的に投入
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.