ソフトベンダーの新たな稼ぎ方:サイボウズLiveの可能性(3/3 ページ)
サイボウズはグループウェアの機能を備えた無償のWebサービス「サイボウズLive」を2010年前半に正式提供する。従来のパッケージソフトとは異なる切り口の同サービスは、サイボウズが新たな収益源を確保できるかどうかの試金石であるのと同時に、ソフトウェアベンダーの新たなもうけ方の可能性を示すものでもある。
グループウェアの利用シーンを変えたい
丹野氏に、サイボウズLiveの狙いや戦略の詳細を聞いた。
ITmedia 情報共有の基盤として「Google Wave」が注目を集めています。サイボウズLiveとの違いは何ですか。
丹野 Google Waveは電子メールを旧世代のプロトコルと見ている点で、(サービスの)問題意識としては近い。Google Waveがリアルタイム性を追求している一方、サイボウズLiveでは“ほどよいタイミングで情報が通知される”という点を大事にしています。
例えばサイボウズLiveに予定を投稿すると、内容の冒頭のみを記した新着メールがグループのメンバーに届きます。(誤送信をしてしまった場合も)サイボウズLive上でその情報を消せば、相手には伝わりません。一方Google Waveは文字の入力や修正なども相手と共有することになってしまいます。こうした情報のやり取りは(情報の誤送信といった)取り返しのつかないことにつながる恐れもあり、これはコミュニケーションをする上でのプレッシャーになるかもしれません。
サイボウズLiveはフローの情報を扱う「掲示板」、情報をストックする「ファイル管理」、時間軸で情報を閲覧できる「スケジューラー」など、人と人とのコミュニケーションにおける必要な機能を持つのが特徴です。
ITmedia 具体的にはどのような利用シーンを想定していますか。
丹野 サイボウズLiveの1つの用途として考えられるのは、運用コストや初期コスト、システム管理担当者が確保できないといった問題を抱える企業への展開です。自社サーバを持たない企業や5人以下の規模の企業にパッケージソフトを導入してもらうのは難しい。その企業にとって(グループウェアの)選択肢の1つになればと考えています。
こうした企業は1社ではなく他社と共同でプロジェクトを回していることが多く、そこで使えるグループウェアは今のところありません。取引先など複数の企業が集まるバーチャルカンパニー(仮想的な会社)で情報を共有するといった用途も見込んでいます。
ITmedia サイボウズLiveをプラットフォームとしたビジネスモデルも考えていますか。
丹野 サイボウズLive上にサードパーティーのアプリケーションを追加したり、デジエなどのサービスを追加していくといったプラットフォーム的な機能も将来的には追求していきたいと考えています。
当面はクラウド(コンピューティング)、ソーシャル、モバイルを軸にサービスの開発を進めます。モバイルは今や単体では使うのではなく、クラウドサービスと連携して使うものになりつつあります。iPhoneとの連携を進めるのも、こうした狙いからです。
モバイルを軸にグループウェアの利用シーンを変えたいと考えています。例えば、任天堂が(家の中で遊ぶ)ファミコンから持ち運びができるニンテンドーDSを開発してゲームの利用シーンを変えたように、サイボウズLiveによってグループウェアをPCだけでなくモバイルでも使えるようにしていきたいです。
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