国産ICTは極めてハイレベルだ:世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(4/4 ページ)
2010年は国内企業の海外展開が一層進むとみられる。海外進出の基盤となるのがICTだ。MM総研の中島洋代表取締役所長は、国産ICTのレベルの高さは世界でも類を見ないものであり、海外戦略においても通用すると力を込める。
システムインテグレーターは海外市場をどうとらえるべきか
システムインテグレーターの海外ビジネスはまだ成功していない。システムインテグレーション事業の成功は、地元の優秀な技術者を集めて、日本のノウハウを織り交ぜて育てていく取り組みが握っている。もしくは現地企業に参画して、その企業にとってプラスアルファになる技術やノウハウを提供し、地元企業へのサービスを充実させていく方法もある。
NTTデータは既に海外企業を買収して現地に参入している。国に関係なくシステム連携の技術を提供し、地元の企業としてサービスを展開している例だ。出資する企業を軸に海外拠点を作り、グローバルに展開した事業所の課題を発掘し、解決策をいち早く確立する。それをほかの地域に展開するといったことを考えるのも1つの手だ。
日本企業は(海外展開の)マインドセットがまだできていない。例えば大連のコールセンターで働く現地の従業員は、日本語を一生懸命勉強している。日本が経済大国だったからだ。だが中国が経済大国になれば、われわれが中国語を勉強しないといけなくなる。お金が日本から中国に動いているうちはいいが、逆になれば、中国の文化や歴史、中国人の考え方を日本が率先して学んでいかなければならない。
世界で最も使われている言語は英語で、2番目は中国語だ。世界の人口比率で見ると、英語と中国語は重要言語の双璧になる。だが日本で中国語を話せる人はまだ少ない。日本企業は米国などに進出するノウハウは蓄積できているが、アジアではまだ全然ダメ。「日本側が教える」という上から(目線で)のアジア展開は通用しない。この10年で日本とアジアの関係性は大きく変わるだろう。
情報システムも変化せよ
今後は、自社で情報システムを開発するのではなく、もっと業務に密着し、業務体系全体を設計し直すような業務が情報システム部門には求められている。業務やサービスの中身を変え、新しい産業部門を作り出すような存在になってほしい。
求められるのは、業務プロセスや経営をモデリングするといった素養だ。クラウド型のサービスは、スクラッチ開発なしで安くシステムを構築できる。自社の技術者がプログラムを書いてシステムを開発するというプロセスは少なくなっていくだろう。情報システム部門の機能は、より経営を意識したものに移行していかないと生きていけなくなる。(談)
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