前編に引き続き、筆者が開発した「SOX法対応型バランス・スコアカード(第4世代BSC)」を紹介する。
書店にフラリと立ち寄ると、時代が今何に注目しているかよく分かります。ビジネス系の雑誌、書籍のコーナーに向かうと、そこは「eビジネス」、「IT」のオンパレード。起業、投資ともにIT関連の情報であふれ返っています。
スピンアウト組はもちろんのこと、従来は起業など考えもしないような学生や主婦ですらベンチャービジネスの起業を考え、起業がひとつのブームのようになっています。ベンチャービジネスのいくつかの成功例を目にした大手企業も、自分たちの手でビジネスを立ち上げるのはもちろんのこと、社員10名以下のベンチャー企業に対しても積極的な投資を進めています。これはご存知のとおり、マザーズ、ナスダックという従来IPO(株式公開)するよりはるかに敷居の低い市場が誕生したためです。
投資家たちは、ベンチャー企業がこのような市場で株式を公開することによって得られるキャピタルゲインを狙って、投資を積極的に進めています。しかし、キャピタルゲインを得るのは、なにも投資家だけではありません。当然、そのベンチャー企業を起業した創業者やそこで働く社員の場合もあるでしょう。そこで記念すべき第1回目のテーマは、この株式公開とキャピタルゲイン(売却益)の税制について解説したいと思います。
公開株式を売却した場合のキャピタルゲインは、通常、個人所得税の譲渡所得として、売却益の26%(住民税6%を含む)が税金として課税されます。
税額
=(売却価額−購入価額−売買にともなう経費)×26%
=売却益×26%
しかし、現在、キャピタルゲインを得られるような公開株式を売却した場合は、源泉分離課税を選択する人がほとんどであり、その税額は売買価額の1.05%となっています。
税額
=売却価額×1.05%
これを逆算すると、株式の売買手数料を除いておよそ5%程度株価が上昇していれば、源泉分離課税を選択した方が有利ということになります。ところが、株式公開以前に株式を取得した人が、公開後1年以内にその株式を売却した場合、源泉分離課税を選択することができません。
株式公開以前に株式を取得した人は、公開後1年以内にその株式売却した場合、源泉分離課税の選択不可
では、どのような課税が行われるかというと、その株式の公開前の保有期間によって異なります。実はその分岐点が3年にあり、保有期間が3年を超えるか否かで、税率が倍も違うのです。
保有期間が3年以下の場合は、前述の譲渡所得として売却益の26%が税額となります。ところが、保有期間が3年を超える場合は、「創業者利益の特例」として、キャピタルゲインに対して2分の1をした金額に対して26%、つまり、税額は通常の半分の13%で済むのです。
税額
=(売却価額−購入価額−売買にともなう経費)×1/2×26%
=売却益×13%
そしてさらに、平成12年度の税制改正では、個人投資家を優遇する「エンジェル税制」が拡充され、平成12年4月1日から平成17年3月31日までの5年間に、中小創造法で定める特定の要件を満たしたベンチャー企業に投資して、その企業が株式公開を果たし、その上場の日から1年以内に譲渡した場合、公開までの保有期間が3年を超えて所有していた株式の売却益については、そのキャピタルゲインの2分の1をした金額に対して26%の課税ということになりました。
そのため、前述の「創業者利益の特例」とのダブル適用により、場合によっては、キャピタルゲインに対して2分の1をさらに2分の1した金額に対して26%、つまり、税額は通常の4分の1の6.5%で済むこととなります。
税額
=(売却価額−購入価額−売買にともなう経費)×1/2×1/2×26%
=売却益×6.5%
ベンチャー企業の株式売却にかかる税金
株式の形態
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課税方法
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税額計算
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公開後1年以内に売却 | 源泉分離課税 | 売却価額×1.05% | |
申告分離課税 | 売却益×26% | ||
公開後1年以内に売却 |
公開までの保有期間が3年以下 |
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公開までの保有期間が3年超 | 売却益×13% | ||
未公開株式 | 売却益×26% |
(H12.4.1〜H17.3.31に投資した)ベンチャー企業の株式売却にかかる税金
株式の形態
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課税方法
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税額計算
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公開後1年以内に売却 | 源泉分離課税 | 売却価額×1.05% | ||
申告分離課税 | 売却益×26% | |||
公開後1年以内に売却 |
公開までの保有期間が3年以下 |
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公開までの保有期間が3年超 | 特定要件満たさない | 売却益×13% | ||
特定要件満たす | 売却益×6.5% | |||
未公開株式 | 売却益×26% |
源泉分離課税が平成13年の3月末日をもって廃止される予定であることを考えると、これは非常に有利な課税方法です。
最近、ベンチャー企業でも株式未公開のうちに多額の資本金を集める会社が多くなっていますが、節税の観点からみると、中小創造法で定める特定の要件を満たしているか否かはひとつの大きなポイントであるといえるでしょう。
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