▼「メカトロ税制」とは?
▼具体的にはどのような機器、設備が対象になるの?
▼対象事業ってなに?
IT関連税制を解説している「知らなきゃ損する税制講座」もこれで5回目、早いものです。いよいよ最終回となりますが、今回のネタは、「メカトロ税制」。いとも時代遅れのようにも感じる名称のこの税制について解説していきたいと思います。
「メカトロ税制」の正式名称は、「電子機器を取得した場合等の特別償却又は法人税の特別控除(中小企業新技術体化投資促進税制)」と、非常に長たらしい名前となっています。
この制度は、生産、流通、管理部門の効率化、省力化、高度化などを図るため、産業用ロボット、NC工作機械など、中小企業に対してメカトロニックス機器の導入を促進するために昭和59年に創設された税制です。
メカトロニックスなど、もうすでに死語ともいえますが、IT関連税制としてかなり古くからある税制で、現在は事実上「電子機器利用設備に対する投資を促進すること」を目的とした税制として残っています。
制度としては、青色申告書を提出する中小企業者などが、適用期間内に対象設備を指定事業で利用した場合、その資産を実際取得したのであれば、取得価額の30%の特別償却と取得価額の合計額の7%(法人税額の20%を限度とし、超過額については1年間の繰越が可)の税額控除を受けられます。
また、その資産をリースしたのであれば、リース費用総額の60%のうち、その7%を税額控除することができますよ、という制度です。
ここでの注意点は、この税制の適用が、下記に掲げる詳細に列挙された対象設備を指定事業で利用した場合に限られている点にあります。
青色申告書を提出する中小企業者など
平成14年3月31日まで
<対象設備と特例措置> | ||
対象設備 |
特例措置(取得) | 特例措置(リース) |
電子計算機電子式金銭登録機 | [要件] 1台、1基当たりの取得価額または同種の設備の取得価額の合計額が160万円以上 |
[要件] 1台、1基当たりのリース料総額または同種の設備のリース料総額の合計額が210万円以上 |
[措置] 取得価額×7%の税額控除 取得価額×30%の特別償却 |
[措置] リース料総額×60%×7%の税額控除 |
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特定の電子機器利用設備 | [要件] 1台、1基当たりの取得価額の合計額が160万円以上 |
[要件]1台、1基当たりのリース料総額の合計額が210万円以上 |
[措置] 取得価額×7%の税額控除 取得価額×30%の特別償却 |
[措置] リース料総額×60%×7%の税額控除 |
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注1
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上記設備については、証明制度を実施しているので各設備の証明団体(メーカー団体など)が発行する証明書を確定申告書に添付します | |
注2
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対象設備の詳細については、メーカー、ディーラー、リース会社などへ問い合わせてください | |
注3
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特定の電子機器利用設備については<こちら>をご参照ください |
つまり、「中小企業者が高額な160万円以上の特定の設備に対して投資をすると、通常の減価償却に加えて取得価額の30%を費用化、または取得価額の7%の税金を安くできますよ」「特定の設備に対して210万円以上のリースを組んだ場合は、取得価額の7%の税金を安くできますよ」という制度です。
しかし、こうもたくさん対象設備があると、どれがどう対象となるのかよく分からなくなってしまいます。
では、どのような設備が対象設備かというと、特定の事業に係る製品の品質の向上、製造過程の自動化もしくは連続化、事務処理の効率化などの促進に著しく資するものとして経済産業大臣が製造業、建設業、卸売業、小売業など一定の事業を所管する大臣および財務大臣と協議して指定されるものということのようです。つまり、業界の意向などを受けた各大臣が、状況に合わせて決定できるということでしょうか。
さて、ここではIT関連の税制について解説していますので、このIT関連に絞って対象設備に注目してみると、もっとも最近は、電気が通ればすべて“IT”と称するというような話も一部で耳にしますが、対象設備として、税法でいう「電子計算機」。いわゆる「コンピュータ」について、下記のような解説があります。
「計数型の電子計算機(主記憶装置にプログラムを任意に設定できる機構を有するものに限ります)のうち、処理語長が32bit以上で、かつ、設置時における記憶容量(検査ビットを除きます)が128Mbytes以上の主記憶装置および通信制御プログラム(ネットワーク上のファイル〔データおよび制御プログラム上で動作するプログラムをいいます〕の保護および整備を行うことができる機構を有するものをいいます)を有するものに限るものとし、これと同時に設置する付属の入出力装置(入力用キーボード、デジタイザ、タブレット、光学式読取装置、音声入出力装置、表示装置、プリンタまたはプロッタに限ります)、補助記憶装置、通信制御装置、伝送用装置または電源装置を含みます」
つまり、CPUが32bits以上で、メモリが128Mbytes以上、OSを利用して本体の制御を行うコンピュータおよび周辺機器ということなのですが、いまどき160万円もする機器でこの条件をクリアしていないものはありませんので、心配する必要はないでしょう。ただし、対象となっているのはあくまでも設備や機器に限られ、一般的なアプリケーションは対象となっていないことには注意が必要です。
もう少し詳しくいうと、基本ソフト、いわゆるOSだけは対象設備に含まれるのですが、後から追加する応用ソフトであるアプリケーションは含まれないということです。
では、プレインストールなどでアプリケーションがあらかじめ組み込まれてしまっている場合はどうなるかというと、もちろん本来は区別すべきなのですが、一体として販売価格の中に含まれているアプリケーションの代金を把握することは事実上不可能です。従って、その全額をコンピュータ本体および周辺機器に含めて計算することとなります。
最後に、対象設備と並んで重要な対象事業を押さえておきたいと思います。
重要といいながら、実は一般的にはまずほとんどの会社が、下記のいずれかの対象事業者となっているはずなので心配いりません。
ただし、例えば生命保険代理業のように、損害保険代理業は入っているのになぜか対象から外れている事業もあったり、パチンコ業のように電子機器利用設備の塊のような事業が外れていたりと、思わぬ事業者が外れている場合もありますので、一応チェックしてみていただきたいと思います。
製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料亭などを除く料理店業その他の飲食店業、一般旅客自動車運送業、海洋運輸及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、通信業、損害保険代理業、サービス業(物品賃貸業、映画業を除く娯楽業、特殊浴場業を除く)
(了)
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