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» 2001年03月30日 12時00分 公開

第2章  リレーションシップ・マーケティング、メソドロジーの枠組みeCRM実現のためのメソドロジー入門(2)(1/2 ページ)

[松尾順,@IT]

[1]システム・アプローチという考え方

 「リレーションシップ・マーケティングとは、『顧客との良好な関係づくり』を目的とする考え方である」

 第1章では、リレーションシップ・マーケティングとは、「顧客との良好な関係づくり」を目的とする考え方であることをお話ししました。本章では、システム・アプローチに基づく、リレーションシップ・マーケティングの方法論についての全体像をお話ししたいと思います。

 これは、第3章以降の具体的なコミュニケーション施策、IT導入施策を展開するための枠組みとなりますので、じっくりとご説明します。

システムとして見たJリーグの「サッカースタジアム」

 「システム」というと、どうしても情報システムのようなものを連想される方が多いと思いますが、前回申し上げたように、ここでいうシステムとは、「関係性」に着目した方法論、すなわちメソドロジーとしてのシステムのことです。

 今回は、説明のため、普通はシステム的に考えたりはしないJリーグの「サッカースタジアム」を取り上げてみます。

 まず、「サッカースタジアム」とは何か、ということに対し、一言で答えるとすれば、「サッカー観戦を観客に楽しませるシステム」ということになります。これは全体として見た場合のサッカースタジアムの役割であり、機能であり、目的であるともいえます。

 サッカースタジアムはいくつかの要素で構成されています。フィールド、観客席、売店、レストラン、チケット売り場、トイレなどです。これらの要素は、上記に示した、「サッカー観戦を観客に楽しませるシステム」という全体としての機能(目的)との関係でとらえると、それぞれの要素に固有の役割・働きがあります。

 フィールドは、Jリーグの選手たちが実際にゲームをやる場所ですし、観客席は、観客がサッカーを観戦するためのイスなどが設置された場所です。また、売店では、観客が飲食物や記念品などを購入することができるようになっています。

 こうしたサッカースタジアムを構成する各要素を「下位システム」と呼び、それぞれが持つ固有の役割や働きのことを「機能」と呼びます。この機能は、「サッカー観戦を観客に楽しませるシステム」という全体とのかかわりにおいて決まってきます。また、それぞれの要素間は、この機能を果たすために相互に連携しあっています。

まつおっち先生の“ココがポイント”

「関係性に着目する」というのは、ほかの要素との関係において、各要素がどのような「機能」を持っているのかを考えることである。これを「システム・アプローチ」と呼ぶ。この考え方をうまく適用すれば、全体として果たすべき機能(目的)に向けて、各要素を整合性のある形で統合することが可能になる


システムにおける「インプット」と「アウトプット」

 ところで、「システムとは何かを変換する仕組みである」とも前回申し上げました。では、「サッカー観戦を観客に楽しませるシステム」の場合は何をどんな状態に変換するのでしょうか。

 このことを考えるにあたって、一般的なシステム用語を用いて、システムに投入される対象を「インプット」、システムから出てくる変換後のものを「アウトプット」と呼ぶことにします。

 「サッカー観戦を観客に楽しませるシステム」のインプットは、「サッカー観戦を楽しむ前の観客」となります。アウトプットは「サッカー観戦を楽しんだ後の観客」です。「なんだ、当たり前じゃないか」とお思いになった方もいらっしゃるでしょう。確かにちょっと間抜けに聞こえるかもしれませんが、表現はともあれ、こうして「インプットは何か」「アウトプットは何か」を明確にしておくことが、サッカースタジアムを設計・建設する際にはとても大切なのです。

 極端な話ですが、もしこのようにインプット・アウトプットを定めていなかったら、観客席のないサッカー場が建設されてしまうかもしれません。そうすると、「サッカー観戦を楽しむ前の観客」というインプットを投入するのが困難になってきますので、「サッカー観戦を楽しんだ後の観客」というアウトプットも得にくいことがお分かりですね。

システム・アプローチで見た「サッカースタジアム」

サッカースタジアムのホッパー図 図1 サッカースタジアムのホッパー図

 これまでお話ししてきた、システム・アプローチから見たJリーグの「サッカースタジアム」を図示すると、次のようになります(図1)。

この野球のホームベースのような形を「ホッパー図」と呼びます。このホッパー図は全体としてのシステムを表現するものであり、サッカースタジアムを構成する各要素、すなわち「下位システム」はこの図の中に入ることになります(下位システムを入れ込むと図が複雑になるためここでは省略してあります)。

 

ここまではサッカースタジアムを例にして、システム・アプローチという考え方についてご説明しました。

さあ、ここから本題に入ります。

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