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<vol.26の内容>
「インタビュー特集:AII企画株式会社 取締役 チーフ・ストラテジスト 八尋俊英氏 (2)」
ここ2年くらいの間は、CATVインターネットがブロードバンド・インフラのビジネス・モデルを提示する意味で、業界をリードするのではないか
主としてケーブルインターネットを活用したブロードバンドインターネット環境において、独自のサーバ運用技術を駆使し、大容量コンテンツをユーザーへ届ける新事業を展開するAII(エー・アイ・アイ)企画株式会社。事業会社への移行を直前に控え、ケーブルテレビ(CATV)各局、コンテンツホルダー、そしてユーザーなど、多方面からの期待が寄せられている。
そこで、同社取締役の八尋俊英氏に、来るべきブロードバンド時代において同社がどのように機能し、事業を推し進めてゆくのかを伺った。東京・品川、御殿山ヒルズ内の本社をお訪ねして、2000年11月16日にインタビューを実施した。今回はその2回目である。
━━御社はCATVインターネットだけではなく、DSL、FTTHを含め、今後ブロードバンドたる媒体はすべて対象にしてゆくということですか?
八尋:もともとそのようなコンセプトです。ただし、DSLを例にとれば、その加入者数は4500世帯余り、片や50万世帯に迫るCATVインターネット、といった現状です。コンテンツ・プロバイダさんもそのあたりはご存じですので、おのずと提供先として現在ではCATVインターネットを視野に入れています。
DSLの最大の問題は、ほとんどの事業者さんがNTTの交換局に間借りしている点にあると思います。現在のAIIの構想は、重たいコンテンツをお客様の近く、つまりヘッド・エンドに置いて、分散型のサーバを構築するといったものですが、DSLにおいては、ヘッド・エンドにあたるのは、NTTの一番下の階層の交換局です。つまりは事業者さんの設備ではないので、置きにくいのではないでしょうか。
━━現在に限っていえば、ブロードバンド・インフラとしてはCATVインターネットが一番現実的であると思いますが。
八尋:そうですね。東急さんですと、従来の多チャンネル放送での加入者は、いわゆる難視聴地域の世帯が中心となり、14〜15年費やして7万世帯でした。そこにCATVインターネットが登場し、加入者は2年で3万世帯。7万対3万、この数値が2001年夏ごろには逆転するという予測もたっています。
DSLについては、2000年3月の事業構想発表時にはもう少し伸びるかなと思っていたのですが、そんなに伸びませんでしたね。しかしお隣の韓国では爆発的に普及していますし、まだまだ先行きは分かりません。
ただ、これから2年先くらいまでは、CATVインターネットがブロードバンド・インフラとしてコンテンツ・クリエーションからアグリゲーション、配信・認証・課金プラットフォーム、バックボーン、アクセス回線、ホーム・ネットワーク、ユーザー・デバイスまでの一連のバリューチェーンで、ビジネス・モデルを提示する場として業界をリードするのではないかと考えています。
━━競合になりうるところ、ものはあるとお考えですか?
八尋:これは考え方次第ですね。例えば事業パートナーであるアスキーさんは、コンテンツを私どものプラットフォームから配信していますが、アスキーさん自身のHPからもコンテンツは配信されている。これを“競合”と考えるのは少し違いますよね。
さらに事業領域でいえば、同系のものはないと考えています。アットホームさんはISP事業が主たる事業領域でしょう。私どもは、その部分はCATV各局さんの事業領域であると考え、その上のレイヤでアプリを提供していますので。
例えばコンテンツ以外のもの、ビデオ・チャットといったようなインスタント・メッセンジャー的なもの、これはCATV各局さんで作るのではなく、AIIで構築して共通仕様とする方がよいでしょう。
ただし、エンド・ユーザーに向けては各局のサービス名称で出せばいいんです。個別で開発すると投資的に不合理が生じるものに関しては私どもが引き受ける、といったスタンスです。
━━現在は実験中ということなのですが、複数のコンテンツがスタートしていますね。
八尋:はい。初期段階では、実験色の強いものとして武田鉄矢さん、牧瀬里穂さん主演の映画『ちんちろまい』を配信していました。
劇場公開前に、映画会社さんとしてはどういった層が興味を持っているか? プロモーションをするにしても、どのような系統の雑誌を中心に広告展開すればよいのか? といったプレマーケティングのようなものとして使えないだろうか、といった観点からの配信です。アクセスログをとることも可能ですので。
今後はもう少し発展させ、アンケート・システムの導入やオンライン上での試写会を開催するようになるかもしれません。現状で行っている試写会、これは応募して来場する顔ぶれがたいして代わり映えしないので、あまりマーケティング調査にはならないと、映画会社さんもいっていました。
これがオンラインならば、例えば昼間に出かけられない主婦の方々などにも見てもらえる。新しい価値を提供できることになるでしょう。
ともかくも現状では、有力なコンテンツを引っ張ってきたというよりは、皆さんどういうものか分からない、とりあえずいま持っているコンテンツ。テレビ局さんですとニュースのアーカイブをエンコーディングして配信し、反応を見ているところですね。
━━どのようなコンテンツが人気ですか?
八尋:テレビのアーカイブもの、「3分クッキング」などは多くのアクセスがあるようです。アスキーさんが力を入れている「ラジ@」も人気を博しています。
「ラジ@」は、インターネットを通じてオリジナル番組を放送するラジオ放送局でして、番組上のタイアップ企画を主な収入源とし、提携企業との共同企画番組を制作しています。24時間放送の“インディーズ音楽チャンネル”と、トーク番組を放送する“トークチャンネル”の2チャンネルで構成され、更新日である火曜日は、通常のラジオ放送と同様、番組の放送時間を固定した形態で配信し、水曜日以降は、バックナンバーとして、番組を好きなときに聞けるオンデマンド形式で提供しています。
また、セガ・エンタープライゼスさんと提携していまして、同社のゲームセンター“GIGO”店内に“インディーズ音楽チャンネル”を常時放送する予定です。さらに今後、服飾関係販売店、韓国のPC-BAN(インターネット・カフェ)などの放送場所を拡大していきます。
━━韓国はじめ海外への展開も視野に入れているようですが、その勝算は?
(つづく)
| 八尋俊英(やひろとしひで)氏 略歴 | |
|---|---|
| 国内金融機関にて約10年、通信・IT分野のM&A、海外プロジェクト・ファイナンス、事業提携戦略のコンサルティングに従事。1995〜1996年にかけて、英国ロンドン市立大学コミュニケーション政策センターにて通信・メディア政策分野の修士号取得 | |
| 1998年 | ソニー株式会社に転職。出井社長(現会長)直属の通信サービス事業室に設立時から参加 |
| 1999年6月 | ソニー第1種電気通信事業進出において、ネットワーク企画部 統括課長として現場指揮 |
| 2000年4月 | ブロードバンド・コンテンツ・ディストリビューション事業としてAII企画取締役を兼任する一方、ソニーCSNCカンパニー通信サービス事業部戦略開発課統括課長として、ソニーの東急ケーブルテレビジョン10%出資を現場で交渉 |
| 2000年9月 | 東急ケーブルのブロードバンド事業推進室室長代理を兼任 |
| 2000年11月 | ソニーのコンシューマ向けブロードバンド配信事業を主として行う新設のソニー(株)CSNCカンパニー事業企画室室長を拝命。また近々のAII事業化においても取締役に留任の予定 |
(取材:Netinsider編集部/文:古場俊明)
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